第25話 ボルカーノ学園長と会話

「ボルカーノ学園長、何の御用でしょう?、学園を追放された私が学園長と会話するのは問題になるのでは?」


「ですから学園ではなく、そこからかなり離れた喫茶店で会話しているではないですか。学園追放にはなりましたが、学園関係者にまで会話を禁止されたら国王陛下とも連絡ができないのでは?」


「確かにそうなのだが」


 正論かもしれないが、学園を追放されたのに学園長自身と親密になるとはいったい……。


「そこまで気になるなら学園に復帰してはいかがです?」


「はい?」


「今回の功績なら学園での罪と交換できるでしょう」


「ボルカーノ学園長?」


 罪と功績の交換など、そんなことをしていたら功績をあげた人間なら犯罪をやり放題になるんじゃないのか。


「……いくら以前の学園に通っている時の私が乱暴者だったとはいえ、さらに犯罪を増加させるような取引には応じられませんよ」


「……そ、それは……し、しかし、あなたのような有用な者を追放した学園は無能、人を見る目がない、と風評被害にあっていますので」


 うん、風評被害は事実だろう。実際には学園に落ち度はない。学園追放は妥当な判決だし。あの時、私の記憶が戻らなければ、おそらくだけど先の防衛戦で失敗をしていた可能性だって高い。学園が被害者なのは間違いないが……

 とはいえ


「……ボルカーノ学園長……今後の卒業者や追放された者全員に何らかの功績を上げたら学園に戻って来いと言うおつもりですか?」


「……それは」


 少なくとも今後は全員に同じことをしなければ不平等だろう。


「反対に失敗した人物は学園とは無関係と言うおつもりで?」


「……うっ」


 もちろん、追放された人物と卒業した人物では扱いが違う。しかし


「少なくとも今後は犯罪者になっても学園を追放されても、何らかの功績をあげれば戻って来れるという希望を与えてしまいますよ。つまり学園追放という罰則は有名無実になります」


 昔の法律が長い年月をかけて無意味になる。それはそれなりがあることだ。しかし、わずか半年前に出された判決がいきなり私1人の功績で無意味になるのはおかしい。しかも意図的に。結局それ以上は言葉もなかったのかボルカーノ学園長は諦めて帰って行った。


「うーん、頼りない学園長だ。まぁもう少ししっかりしていたら私の乱暴も在学中に止めていたか。それができなかったから現状こうなっているのだから」


 そう言えば話の中に以前と同じ振る舞いをするなとは一言も言わなかったな。まさか、以前と同じ態度を取るとしても目を瞑ってでも戻したいのか?……さすがにそれはないと思うが。


 どちらにせよ。ルークスが学園に戻るのは無理な話である。ルークスは既に地方軍とはいえ総司令でありまた領主でもある。それが防衛戦の要として機能している以上もはやルークスの仕事である。領主と司令官の仕事をしながら学園に通う時間などあるわけがない。それにルークスはもはやローラント地方においては最重要人物でもある。万が一にも失うわけにはいかない。戦争状態なので死の危険は当然ある。だが、学園内でスパイに暗殺されたり、事故にあったりしては困るのだ。


「さすがに学園内で常に10人以上の護衛をつけとくわけにもいかんしな」


 結局ルークスはボルカーノ学園長の話を断っただけで何の進展もないまま帰路に着いた。

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