第44記:休肝日と寒気
食後、煮売屋を出て、駅方面へ向かった。歩きながら、帰ってから書くつもりの『闇塚日記』の文案を練る。スクランブル交差点を左に折れて、少し歩いたところに印章屋がある。扉を開け、店内に入った。
持参した住所印を取り出し、店長さんに渡した。不要になった部分と新たに作って欲しいことについて、説明を行った。最初に注文した時、こういう展開になるのではないかという話をしていた記憶があるが、実際にそうなってしまったのだった。嫌な予感は当たるものらしい。
仕上がりまで、約一週間を要する。代金を先払いで払った。店を出て、近傍のコンビニへ向かった。今日の夜食と明日の朝食を買うためである。
帰宅後、露台の吊るしもの(ジーンズ類は除く)を部屋の中に取り込んだ。台所に行き、電気ケトルにミネラル水を注いだ。沸き立ての湯で即席コーヒーを淹れ、居室に運んだ。愛機を起動させて、ぴよぶっくを呼び出し、日記の編集を始めた。題名は「籤引渡世、英雄像が出た」に決めた。
ログアウト後、メクるを呼び出し、ブログを1枚書いた。シャットダウン確認後、即席スープを啜りながら、コンビニおにぎりを齧った。食欲が回復していない俺には、この程度で充分なのだった。本来ならば、お粥か雑炊をこしらえるべきなのだが、我が家には、調理器具の類いがひとつもない。又、米もなければ、材料もない。まったく情けない状態だが、現実である。この夜の俺は、数ヵ月ぶりに「酒無し」で過ごした。〔9日〕
最後のカギをかけてから、自室を離れた。屋根付き通路を進み、剥き出し階段を下った。寒い。冬らしい寒い朝だ。寒いと云っても、実際に寒いのは頭と顔だけである。顎から下は相応の装備を着用しているので、冷気に悩まされることはない。ラジオを聴きながら、一番近い駅を目指した。
扉が開いた。電車に乗り込み、座る場所を確保した。発車と同時に『サイボーグ・ブルース』の続きを読み始めた。第三章「ダーク・パワー」である。半分ほど読んだところで、本を閉じた。続いて、眼も閉じた。
職場到着。休憩広場に行き、買物カードを機械に食わせようとしたのだが、1号機にも2号機にも「調整中」の紙が貼りつけられていた。これではどうにもならない。補充を諦め、売店に入った。朝食を買うと、残金が十数円になった。空いている卓席に腰をおろし、菓子パンを齧りながら、コーヒーを飲んだ。食後、第三章の続きを読んだ。
昼食後、休憩ルームで、第三章を読了した。その後、約十分仮眠。目覚めると、昼寝屋が2人増えていた。皆、疲れ切っているのだ。〔10日〕
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