第24記:追憶と失策

 シャットダウン確認後、卓上を片づけた。焼酎とミネラル水とシュウマイ弁当を居室に持ち込み、ささやか過ぎる夕食を始めた。シュウマイを酒肴(さかな)代わりにして、水割りを呑む。

 呑みながら、ラジオのニュースを聴いていた。当家のラジオは、テレビ音声も受信できる優れものだが、最近はあまり聴かなくなった。ラジオのプログラムで満足しているので、テレビに手を伸ばす必要がないのだ。


 砂利の時分は、あれほどテレビが好きだったのに、えらい変わり様である。しかし、好きだったという気持ちには変化はない。その証拠に、おっさんになった今でも、あの頃観ていた特撮もんを無性に観たくなる瞬間がある。ウルトラマンよりも怪獣が、仮面ライダーよりも怪人が好きな妙な餓鬼だった。ヒーローに退治される彼らに哀愁を感じていた。


 食後、洗面所に行き、歯を磨いた。磨いてから、口をすすぎ、続いて、薬液を溶かし込んだ水で入念にうがいを行う。無論、風邪予防のためだ。薬水が喉に届いた途端に「かはっ」と自爆する場合があるので、注意しなくてはならない。なぜああいう現象が起きるのか、よくわからない。


 居室に戻り、円盤(DVD)再生機の中に『シャーロック・ホームズの冒険』の10枚目を滑り込ませた。同盤収録の「もう一つの顔」と「六つのナポレオン」を観る。鑑賞後、機械の電源を切り、布団に潜り込んだ。

 潜りざまに、睡魔が出現し、俺の足首を掴んだ。眠りの滝壺に引き摺り込まれ、意識を失った。久々(でもないけど)に熟睡を堪能した。〔10日〕


 シャットダウン確認後、夕飯の支度を始めた。飯と云っても、空腹を満たすためだけの虚しいものだ。卓上の時計は「夜の7時」を示している。この時間帯なら、弁当屋もやっているし、スーパーもやっている。今、家を出れば、充分間に合う。しかし、昨夜の俺はその気力さえなかった。


 食後、円盤(DVD)再生機の中に『居酒屋ふじ』の4枚目を滑り込ませた。同盤には第10話と第11話、そして、最終話が収録されていた。己のドジに気づいたのは、全話の鑑賞を終えてからであった。

 貸し円盤屋に行った際、俺はいったい何を考えていたのだろうか?3枚目を飛ばして、4枚目を借りてきてしまったのである。そして、3枚目を観る前に、4枚目を観てしまったのである。バカとしか云い様がない。


 この種の愚行は、今回が初めてではない。あれは昨年の秋であったか、テレビ版の『関ヶ原』(全三篇)の取り寄せ手続きを行った時、前篇ではなく、いきなり後篇を頼んでしまったことがある。

 現物を借りる場になって、ようやく「それ」に気づくというお粗末振りであった。えっ。なんで?などと、驚きの声音を発し、店員のおねえさんを困惑させた。自分でやっておいて、えっ。なんで?もないものである。見ているようで見ていない。読んでいるようで読んでいない。ミス以前の話であり、俺の頭には、肝心なものが欠け落ちているとしか思えない。〔11日〕


[Quinもわさんのコメント]

レンタルしたら中身が違ってたって事はありました(すぐ店舗に電話して返す時に無料券貰いました)。

なので、問題ないのです。借りようと思ったら中々続きがなくて、痺れ切らして先を借りたと思えばいいのです。


[闇塚の返信]

そう云えば、ある映画のオリジナル版のケースの中にリメイク版が入っていたことがありましたよ(苦笑)。その時は気づきましたが。

今回は観終わるまで、まったく気づきませんでしたからね。どうにもならんです。えっ。もう最終回なの?なんて(再苦笑)。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る