第17記:遊園地と古書狩り
後楽園下車。外に出ると、視界に東京ドームが現われた。歩数計の付属時計が「昼の1時」を示していた。約束の時間まで、まだ余裕がある。同シティ内、アトラクションズの「ラクーアゾーン」に足を進めた。園内はカップルやらグループ客やら家族連れやらで、大層賑わっていた。俺みたいな「撮影目的の者」はほとんどいなかった。
本日の被写体(獲物)は『ワンダードロップ』である。ボート形の乗り物に乗って、滝風の坂(高さ13メートル)を滑り落ちざまに水面に突っ込むアトラクションだ。激突の瞬間、盛大な水飛沫が発生する。それを捉えようというわけ。うまくゆくかどうか。ともあれ、撮(や)ってみるしかない。
撮影後、ドームシティを離れ、神保町方面に向かって歩き始めた。先月26日から、今月4日まで、同町では「古本まつり」が催されている。先週、知友のI氏に「いっしょに行きませんか」というメールをもらった。思案の必要はなかった。即座に「行きましょう」という返信を送った。
合流場所は岩波ホールである。水道橋を渡り、白山通り沿いに伸びる歩道を歩いた。腹が減っていたが、飯を食べるつもりはなかった。述べるまでもないが、約束優先である。古書狩りの後にゆっくり食べればいい。
岩波ホールに近づけば近づくほど、雑踏の密度が高まるのだった。歩きながら、古本まつりの開催中に神保町を訪れるのは、今日が初めてであることに、俺は気づいた。ホール近辺にイベントの本丸が築かれていた。
合流後、俺たちは「獲物」を求めて、動き始めた。露店風の古本屋さんが軒を連ねている光景は、狩猟意欲を大いに刺激してくれる。それは良いのだが、歩行者の数が、歩道の許容を超えていた。あまりの混雑に足を止めなくてはならぬ場面が何回かあった。
店頭に近づくのも難しいぐらいの賑わいであった。デジタル全盛のこの時代に「古本」という商品がこれほどに客を集めるとは、意外であり、不思議でもあった。愛すべき古書狂たちに、俺は共感と親近感を覚えた。
計8冊を買った。本日最大の収穫は、ずっと前から「欲しい欲しい」と念じていた『池波正太郎のフィルム人生』(新潮文庫)である。見つけざまに「うおっ」と叫び、値札(200円!)を確かめざまに再度叫んだ。この気持ちは、古書ハンターにしかわかるまい。
I氏も何冊か購入されていたが、物色中の眼差しはなかなか鋭く、俺もああいう眼をしているのかなと思った。もっとも、上品な氏が俺みたいに奇声を発せられることは決してない。
気がつくと「午後5時」を過ぎていた。2時から開始した俺たちの「まつり巡り」はたっぷり3時間を消費して、ようやくゴールに辿り着いたのである。その後、水道橋方面まで歩き、界隈にある居酒屋に潜り込んだ。
I氏と酒席に臨むのは久し振りである。結婚後、ますます忙しくなられたようだ。今日は奥さんと息子さんが実家に(遊びに)帰られていて、珍しく時間ができた。今回、俺にお呼びがかかったのはそういうわけである。
理由はなんでもいいと云っては語弊があるが、俺にとって、過程はあまり関係ない。I氏と呑む機会が得られるのなら、それで良いのだった。映画を酒肴(さかな)にして呑む酒の味は格別で、時を忘れて話し込んでしまった。店を出て、駅まで歩き、来年の合流の約束を交わしてから、改札の前で氏と別れた。心地好い酔いにひたりつつ、俺は球場方面へ歩き始めた。〔4日〕
[シンカワメグムさんのコメント]
自分も本好きの友人とは、同じ世界の共有をしていますね。
普段離れていても、会えば挨拶もそこそこに、最近気になる本の
話題が延々続きます(笑)周りがドン引きしていても全然気にしません。
古本祭り。田舎じゃ無理だなあ~(;´Д`)い~~なあ~~~再び。
祭りは無いけど、時々友人と本は狩っています。○ック〇フで。(笑)
なんで本好きは、あんなに単独行動なんですかね。
「自分はこっち見てるから~」「じゃあ自分はこっち~」が基本ですね。
それで本人達は凄い楽しいという不思議な本好きの習性です(・´з`・)
[Quinもわさんのコメント]
古本かつ初版本しか読まない人なんかもいますね。
電子辞書のが便利で欲しいとは思いつつも、作品書く時は本の辞書を使うから結局いらねーなとなってしまう私。
残りページ何ページ、と具体的数字出るのもいいけど、やはり厚みであとこれくらいかとかもうここまで読んだのだなぁと感じられるのが紙本のいいとこ。
[柳乃奈緒さんのコメント]
良いですね~♪時間を忘れて散策してしまいそうです。(^-^)
電子も便利で良いのですが、やはり紙のほうが私は好きです♪
昔、子供たちが小さかったころは図書館へ行くか古本屋巡りするかでしたw
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