第13記:大西洋

 扉が閉まり、電車が動き出した。同時に読書を始めた。車内では、原則として、携帯ラジオの電源は切っている。俺が使っている片耳イヤホンはあまり上等とは云えない品だ。音漏れで周囲の乗客たちに迷惑をかけたくない。電源を切ってしまえば、その心配は完全に消える。

 音漏れをやっている人は、不思議にアホ面が多いが、あれは自分では気づき難いものなのだ。その無神経さが顔に表れてしまうのだろう。まあ、最近は随分減りましたがね。


 職場到着。売店に足を進め、朝食を買った。空いている椅子に腰をおろし、エクレア風の菓子パンを食べながら、コーヒー(半分)を飲んだ。食後、残り半分を飲みながら、ラジオの情報番組を聴いていた。話題は「ブラジルのトランプ」であった。音量には気を遣っているつもりである。もっとも、この時間帯は休憩広場の利用者は少なく、俺の周りにも誰もいない。


 午前の仕事が終わった。職員食堂に行き、券売機でBランチを買った。今日のBは「焼鯖定食」である。少量でもいい。サバの傍に大根おろしでも添えてあると、味わいが広がり、見た目にも綺麗だが、我らが大食堂にそのような演出を期待してはいけない。

 指南書から得た知識だが、日本人が食べているサバの大半が「タイセイヨウサバ」と呼ばれる外国産のサバらしい。だから、俺が今まさに食べようとしているこれも「タイセイヨウサバの塩焼き」に違いないのだ。いり焼きやガーリックソテーを食わせてくれとは云わぬ。だが、せめて、味噌煮を出すぐらいの甲斐性はないものか。ないんだろうなあ、やっぱり。 〔30日〕


[シンカワメグムさんのコメント]

(・ω・)ブラジルのトランプって何だろう…←あほ。継続中。

流石は日本を領土とする古代魚の化身。外国魚には厳しいですな!

自分も海がすぐ近くの人間なので、鮮度の落ちた外国産は許せませぬ。

せめて煮魚にしましょう~(-ω-)/


[Quinもわさんのコメント]

いわゆる外道ものは本命のやつより落ちますけど、それでも食べることはできます。あの時のサバは生きながらに腐ってましたわ……


稚魚でしたから、鍋でなく刺し身にしました。しっかりした白身で旨味たっぷり、鍋にすると美味い理由がよーくわかりましたね。外道で釣れるのは本当に珍しいみたいです。

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