第7記:昨日

 電車の扉が開いた。当駅始発なので、余程のことがない限り、腰をおろすことができる。最近は姿を見なくなったが、ある時期まで、他人を押しのけるようにして車内に乗り込むおばさんがいた。

 宝*風(?)の格好をした人で、あまりの強引さに周囲の顰蹙を買っていた。一触即発の雰囲気になったこともある。が、彼女は去った。つまらないトラブルを回避する意味も含め、俺たちの視界から消えてくれて本当に良かったと思う。さようなら、割り込みおばさん。永遠にさようなら。


 扉が閉まり、電車が動き始めた。発車と同時に読書を始めた。阿刀田高の『恐怖コレクション』(新潮文庫)である。表紙と挿画を和田誠画伯が担当している。なかなか豪華な本と云える。内容が面白いのは、まあ、当然として、阿刀田先生の抜群の記憶力に驚かされる。


 午前業務終了。職員食堂に行き、券売機でAランチを買った。今日のAは煮込みハンバーグであった。窓際の席に陣取り、昼食を始めた。

 食事中、このハンバーグは「獣肉」であろうか?それとも「魚肉」であろうか?などという浮かばなくてもいい疑問が脳裏に浮かんだ。飯の上で温泉卵を潰しながら、もし後者ならば、A(肉料理)ではなく、B(魚料理)に分類すべきではないか?と、考えなくてもいいことを考えていた。


 食後、休憩室に移動した。先客一名が備え付けのソファに腰かけ、束の間の眠りに落ちていた。余計なことだが、寝顔がいささか苦しげである。仮眠程度では処理し切れぬほどに疲労が蓄積しているのではあるまいか。俺は一度もないな。そこまで働いたことは。自慢のできることではないけどさ。でも、だからこそ、今こうして生きているとも云えるわけである。 〔25日〕


[Quinもわさんのコメント]

少なくとも、段ボールで水増ししたり土を作る脊椎動物を使ったハンバーグでないのは確かですね。


[闇塚の返信]

段ボールは勘弁して欲しいな。○ミ○もイヤだ(苦笑)。

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