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ふと目が覚めると、ざわざわと人の声がしていた。走る足音、通り過ぎていく人の声。
それは放課後の気配に似ていた。
今…何時だろう?
薬品の匂いのする保健室のベッドから起き上がり、仕切りの白いカーテンを引いた。
「…せんせー?」
部屋には誰もいない。
今の今まで誰かがここにいた気がする。
先生の机の上には、湯気を上げているマグカップが置かれたままだ。
ガラッと引き戸が開いた。
「あ──起きた?」
先生だった。保健医の
「んー、今起きた…」
ふあ、と欠伸をして伸びをすると、先生は笑った。
「よく寝てたな、もう放課後だぞ?」
「げ」
やっぱり起きた時の感覚は当たっていた。壁の時計を見れば、もう15時半を過ぎていた。
うわ、これはまずい。おれは慌てて椅子の背にかけてあった制服の上着とネクタイを掴んだ。
「やば、おれ担任に言ってないし」
「
「ほんと?ありがと、のんちゃん」
能田先生のあだ名はのんちゃんだった。おっとりしてて、いつも優しくしてくれる。
「おれ荷物置きっぱだから帰るね、いつもありがと、またねっ」
はーい、とのんびりとした声。
「クラスの子によろしくな」
「は?」
引き戸に手を掛けて、おれは振り向いた。
クラスの子?
「心配してまた様子を見に来てたけど、あれ、友達だろ?」
「──」
友達。
また?
荷物を取りに教室に戻る。
階段を駆け上がる。
廊下の窓の外を、雨がまだ降っている。
教室に着くと、もう皆帰ってしまっていた。窓際のおれの席に、誰かが座っているのが見えた。
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