3


 昼休みになると雨は本格的に降り出していた。

 教室の窓から見えるどんよりと重い雲から雨は落ちてくる。

 俺は弁当をかき込むと、席を立った。

 廊下を歩いて、階段を降り、右に折れてまた廊下を進む。

 廊下の行き止まりの手前にある扉をノックすると、どうぞ、と声が返ってきた。

「失礼しまーす」

「はいいらっしゃい」

 保健医の先生──ここは男子高なのでもちろん男の先生だった──が、戸棚から何か取り出しながらにこりと笑う。そして俺を見ると、首を傾けて、視線をベッドの方に向けた。

「そこね」

「ども」

 天井から下がる白いカーテンをそっと引く。

 ベッドの中にはクラスメイトが眠っていた。

 こちらに背中を向けている。薄く影になった顔を覗き込むと、目を固く閉じて、眠っていた。深くゆっくりとした呼吸。

 柔らかそうな髪が白い枕に散らばっている。

 触りたい。

 でも。

「……」

 なんとか堪えて、俺はまたそっとカーテンを閉めた。

「昨日また眠れなかったって」

 先生は振り返った俺にそう言うと、よいしょ、と椅子から立ち上がった。んん、と大きく伸びをする。

「ちょっとここ頼める? 職員室行ってくるから」

「はい」

 頷くと、先生はひらりと手を振って保健室を出て行った。

 俺は先生が座っていた椅子に座った。

 手を伸ばして窓を開ける。雨はまだやみそうになかった。

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