13 再会

 俺、ベルベティーンはメンバーとともに王都へやってきていた。

 所属することになったギルド、ウルフハウル。

 そこのギルドの建物は木造で、いかにも冒険者ギルドという雰囲気を醸し出していた。


 中にいたのは野蛮そうなやつら。

 若いやつらからおっさんまでいたが、どいつもこいつも強そうだった。

 ギルドのやつらがどんな野郎であっても、なめられるわけにはいかねぇな。


 そこで翌日から俺たちは早速クエストを受けることにした。

 それはなぜか。

 クエストクリア数がギルド評価の1つとなっているためだ。


 と言っても、いきなり高難易度Sのクエストに挑むのは止めておく。

 王都や近郊の森の様子を確認しておきたいしな。


 そうして、俺たちは手ならしに、難易度Bのブルースターフォックスの討伐クエストを受けることにした。


 ブルースターフォックス。

 コイツは体長8mある黒の毛を持つ魔物で、近くにいる人間を襲っていたらしい。

 人があまり行くことのない森にいるはずだが、最近では王都近郊で出現しており、多くの人々を困らせていたとか。


 人を困らせていたとかはどうでもいい。

 ともかく俺は倒して、クエストクリアして、上に上がってやるんだ。

 力も地位も手に入れば何でもできる。


 ナターシャの弱い体を治してやることも、彼女を手に入れることもできるはずだ。

 例え、彼女がスレイズのことを思っていても。


 まぁ、今のナターシャが何もできないスレイズに思いを寄せるはずがない。

 断然俺の方がいいだろ? スレイズに思いを寄せていたってすぐに変わるはずだ。


 そうして、俺たちは近郊の森へ行くと、数分して目的の魔物ターゲットに遭遇。

 この魔物の討伐は初めてだが、それなりに情報は持っている。問題はないだろう。

 そして、早速戦闘を始めたのだが…………。


 「なんでこんなに苦戦するんだ?」


 いくら攻撃を仕掛けても、ブルースターフォックスは倒れる気配がない。むしろ俺たちが受ける攻撃の方がいつもよりも多かった。

 Sクラスの魔物でもないくせに、こんなに攻撃を食らうとか。


 初めて戦うからか? 

 でも、俺たちはコイツが嫌いな光属性の魔法を使っている。

 なぜ、倒せないんだ?


 「ベルベティーン…………」


 敵に攻撃を仕掛けていると、いつの間にか近くにやってきていたエリィサが話しかけてきた。


 「どうしたんだよ? そんな深刻な顔して」

 「どうしよう。私のステータスがかなり落ちている…………」


 今にも泣きそうな声。

 エリィサは絶望の顔を浮かべていた。


 ステータス?

 そういや、最近確認していなかったな。

 レベルも50を超えた俺たちはレベルアップした時以外で、ステータス確認はしていなかった。

 最近は高難易度のクエストに挑むこともしていなかったしな。確認する必要がなかった。


 でも、レベルと一緒に上がったステータスが落ちるはずわけないだろ。


 敵から離れ、自分のステータスを見る。

 すると、そこには以前とは全く違う数字が並んでいた。


 …………は?

 レベルは落ちていないのに、ステータスの値のみが減少している。


 スレイズが抜けてから、なぜか苦戦する戦いが多くなっていた。それは敵が強くなったためと思っていた。

 あれは全部ステータスが落ちたせいだったのか?


 「このままじゃあ、まずいわよ!」


 切羽詰まったパトリシアの声が聞こえてくる。

 ステータスが落ちたなんてどうでもいい。

 これでこのまま帰ったら、バカにされるのがオチ。全てを手に入れることなんてできない…………。


 「倒さないとクエストクリアにはならないぞ!」

 「でも、今の私たちじゃあ、無理よ! 私たちが先にやられちゃう!」

 「死にたくない! 死にたくない!」


 エリィサは思考停止状態、他の奴らも怖気づいている。

 パトリシアだけが何とか敵と戦っていた。しかし、徐々に後方へと下がっている。


 「ベルベティーン、何とかしてよ!」


 パトリシアの叫び声。

 何とかしてって言われてもな。

 こっちもこっちでピンチなんだよ。

 でも、やるしかない…………やるしかないんだ。クリアするためには。


 「ア゛アァァァァァ――――――――――――!!」


 大剣を握り、俺は敵に向かって真っすぐ走っていく。

 そして、俺は敵の近くでジャンプ。剣に光属性の魔法を付与した。

 

 この一撃で倒せるだろっ!!


 すると、ブルースターフォックスがくるりと体を回転。針山のようなしっぽを勢いよく振り、俺に向かってくる。


 ヤバい!


 俺の体は地面に叩きのめされる。全身に激痛が走った。

 クソっ…………立ち上がれない。


 「ベルベティーン!」


 パトリシアが叫ぶが時すでに遅し。

 目の前には鋭い牙を見せる巨大な魔物。やつの目はこちらに狙いを定めていた。

 痛い、痛い…………でも、逃げないと。

 逃げないと。


 ―――――――――――――――――――――――――俺は死んじまう。


 「ブルースターフォックスか」


 その瞬間、風が吹く。

 砂ぼこりが起こるほどの大風。視界が悪く、前が見えなくなっていた。


 「うーん。剣で攻撃するより、魔法の方がよさそうだな」


 聞こえたそんな男の声。

 すると、あたりが白く輝きだし――――――――――――爆発。

 さらに爆風が起き、俺は目を腕で覆う。


 何が起きたんだ…………?


 風が落ち着くと、見えてきたのは1人の男。

 その男の前には、倒れたブルースターフォックス。


 …………誰かがやってくれたのか?


 男が手にする剣。その剣には見覚えがあった。


 「お前ら、大丈夫か?」


 男の灰色髪がさらっとなびく。そいつは俺たちの方を振り向き、地面にへばりつく俺に目を向けてきた。


 「スレイズ…………お前…………」


 そのくすんだ水色の瞳は自信で溢れているようだった。

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