粉雪

マドカ

粉雪

あたしは昔から「普通」ではないらしい。



精神病院にも何度も連れていかれたけど、特に意味がないって思う。

だって性格とかって治らないでしょ?

意味ないよ。



あたしは人が苦しんでたり泣いてたり悲しんでいるのを見るのが



大好きだ。



喜びは一瞬だけど、悲しさや苦しさは暫く続く。



それに、そういう人の顔を見たりすると、

なんていうのかな、

「生きてる!!!」って感じがする。



25年間そういう生き方だからもう仕方ないじゃん?



彼氏が出来て、最初は良い子ぶる。

彼が依存してきたなっていうタイミングで振る。



だいたいは怒るか泣くかかな。



もうそれが堪らない。

この瞬間の為だけにあたしは恋愛ごっこしてる、、、!



殴ってくるやつも居たけど表情がいい。

怒ってるから。



とても快感を感じる。



友達関係も適当にはこなしてる。

友達が彼氏と別れて泣いてるのとかサイコー。

ゾクゾクする。



優しい言葉を毛布みたいにかける。

そしたらもっと泣く。

だから友達大事。



今の仕事は看護師。

天職だと思う。



病気で苦しんでる人を可哀想とか思わない。

もっと苦しんでくれないかなって思う。



あ、でも誤解はしてほしくないな。

犯罪行為はしないから。

それに仕事もちゃんとしてるつもり。



そうやってそれなりに自分に満足してたらある1人の男と出会った。



ルックスもいいし、仕事もしっかりしてる。

あたしに一目惚れらしい。



試しに付き合ってみた。



こいつがマジでイライラする。

愚痴とか弱音とか悪口とか言わない。



貰ったプレゼントをわざと無くしても

怒らない。

大丈夫?と心配してくる始末だ。



クソ、、、

ネガティブなところを見たいのに、!



ある日聞いてみた。



「りょう君ってさ、怒ったり泣いたりすることある? 何をそんないつもニコニコしてるの?」



「いや昔は逆だったんだよ、怒ってたしケンカもしてたし。 でもなんかある日からバカバカしくなっちゃって。」



おい、こいつサラッとあたしを全否定だぞ、ムカつく、、、。



「へぇー、なんかあったの?」



「孤独だなーって思ったんだよ、そういうことするの。 実際、友達にも怖がられてたし。 んじゃそういうの無くそうかなと思って今があるって感じ」



「??? 孤独でよくない? 友達とか所詮他人じゃん。あたしもだよ」



うわ、口滑らした、、本音言った、、



「だからこそだよ。 その人の心を理解することは出来ないけど、自分と居たら楽しいって思ってほしいじゃん。 ゆうちゃんはどう思う??」



「ごめん、お腹痛いから帰る、、また連絡するね!」



大丈夫?と彼氏が言ってきたけど

あたしはタクシーで家に帰った。



なんだろこの気持ちは。

全否定されたけど確かにと腑に落ちちゃってる。

ヤバいなぁ。



仕事に行って患者さんの苦しむ顔を見る。

この人にも人生あるのかー。まぁそりゃそうか。



おかしい、快感がない。

絶対あの男のせいじゃん。



帰り際、車に撥ねられた。



ええええええ!?!?!?!?



こんなに痛くて辛いんすか、、?!?!



救急車、意識が遠のく。




病院。

鏡を見ると

顔面の左半分は擦過傷で歯は折れてるし、

包帯でぐるぐる巻きだ。



醜いなぁ、、んで痛っったい、、、



あいつがお見舞いに来た。



「大丈夫??!! 俺に出来ることあったらなんでも、、、」



「じゃあ死んでよ」



「え???」



「もうさー、隠すの疲れたから言うけどあたしってさ、、」



自分の性格を全て話した。

怪我で弱ってるのか家族以外にこの話をしたのは初めて。



「なるほどね、、」



別れようがどうせ飛んでくるな、どうでもいいな。



「じゃあ結婚しよっか!」



はぁあああ??????

頭悪いのかこいつは。



「は?? なんで? 脈絡なさすぎじゃない?」



「俺は人の喜ぶのが好きじゃん、んでゆうちゃんは悲しむのが好きってことじゃん? 2人居ればけっこう最強じゃない? 太陽と月みたいで」



えーーーと、、意味がわかりません、、

そしてプロポーズとはこんなにもロマンの無いものなのね。



「どういう理論www」



「おぉー、笑ってくれてる! どう? 俺けっこうスペック高いけど!」



「こんな怪我だらけの女に、、、 いーよ、ただあたしにいつ刺されてもいい覚悟はしといてね」





、、、、、、、、、、、、



「これがお母さんとお父さんが結婚した馴れ初めよ」




「お母さんヤバい人だったんだね、、あたし全然気づかなかった、、」



「そうねぇ、あの人があなたが産まれた日に死んじゃって、、とりあえずあの人みたいに生きてみようかなと思ったのよ。 そしたらまぁまぁ人生楽しかったわ」



娘が明日、嫁に行く。

だから全てを話した。



我ながらよくやったと思う。

大学も卒業させて、仕事も就職ちゃんとして、いい娘だ。



若かりし頃あたしは今思えばおかしかった。

あの人に会わなければ犯罪者になってたかもしれない。



雪がチラチラと降っている。



寒いねぇ、あっちでもあんた笑ってる???



涼子、嫁に行くからね。



あたしがあっち行く時が来たら



人の喜ぶことが好きとか言ったくせに



あたしを死ぬ程泣かせたこと、



絶対に説教してやるから



震えて待ってろよ!

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粉雪 マドカ @madoka_vo

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