第7話 想定外
「え」
ついつい固まってしまった。
って。なんで俺の横座るんだよ。
ちょっと緊張するじゃないか!ちょっとな!
「あの子。先週面白かったね~」
どこかしらかクスクス笑う声が聞こえてくる。
先週なにかあったのか?そう思いちらりと横を見てみると顔を赤くして俯く姿が目に入った。
成程。この子が何かしたのか。
「はい!静かにな~今日は全員出席か!優秀だな~」
この人がゼミの先生か。
軽い感じだな。
「はーい」
ゼミのメンバーの方は陽キャが多そうだ。
それにしても二回目の先生にその態度はないんじゃないか?
「自己紹介してもらおうか悩んだけれどしてもらおうかな」
マジかよ。迷ったならしなくても全然大丈夫なんですけど。
見回す限り仲良くしたい人間はそんなにいないし。
まだこの子俯いているのか。
「はい。最田 三条です。嫌いな物は無いですが……鬱陶しいのは人から下に見られたくないから誰かを下に見て笑う奴です」
「ちょっと!何それ私の事?」
さっきこの子を笑った女が顔を怖くして言い返してきた。
自覚症状でもあるのか?
「いや。誰も貴方なんて言ってないですよ」
釣り損ねた魚は大きいというが釣れる魚は小さいようだ。
これで俺のこのクラスでの人間関係は終わったな。
「なっ……」
「こらこら喧嘩させるために自己紹介してもらったんじゃないんだから」
まるでちびっこをなだめるような台詞だ。
この場面にはぴったりだけど。
「なんなのあいつ!」
何はともあれすっきりした。
捨て台詞か?
こんなしょうもないのが同い年とは、そういいたいけれど俺も大して変わらないかな。
全くため池が出る。間違えた溜息が出る。
「えっと。今日は前期の中間レポートのグループ分けをしてもらいます!」
数分後。
俺と笑われていた子と清楚という言葉が似合う気の強そうな目の子がぽつんと余った。
この三人はもしかして自己紹介でしでかした三人?それにしても俺だけ男のグループか。
あの女!にやにやしながら見てきやがって。
いや苛立ってなんかいない!決して。
実際苛立ってはいない。この子と同じグループに……
ちがーう!!そうじゃないだろう三条。
それにしてもこの子はなんで省かれてるんだろうか。
「それじゃ!お題を言うね~今の日本の悪習!」
「矢野先生。世界の安全保障を絡めてですよね?」
一人の男子生徒が訊ねた。
「いや絡めなくてもいいよ!まずは軽いお題をしてもらおうってだけだから!これを七回目の授業で各班発表してもらいま~す!」
「あの。すいません。名前聞いてもいいですか?」
緊張が。これは一種のハニートラップか?
緊張させて相手の思考回路を麻痺させる。
「あっ!はっはい!かっ上代 りっ凛です!先程はありがとうございます!」
成程。人と話すと極度に緊張するのか。吃音症なのか?どっちだ?
「いや、助けたわけじゃないですよ」
そう助けたわけじゃない。単純に気に入らなかっただけだ。
憂鬱な記憶が蘇ってくるから……
「私は神田 栞。よろしく」
落ち着いてるな~
別になにかしたようには見えないけど。
「上代さんと神田さんですね!よろしくお願いします!」
「あっあの呼び捨て、タメ口でかっ構いませんよ……」
声が小さい。でも悪い子では無さそうだ。
「そうですね。これからグループなんですから」
「それじゃお構いなく……」
3人の間に沈黙が流れる。
一体何を話せばいいんだ!
今日はいい天気ですね?今日昼御飯何食べた?
なんでやねん俺!自分に突っ込みを入れてしまった。末期だ……
こんな調子で大丈夫だろうか?
今朝起きた時には想像しなかった事態に俺の心がついてきていなかった。
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