第5話 出会い
一週間後、俺はまた同じ席に着いた。
あれしきの事で俺の決めたベストプレイスを変えるなんてバカバカしい。
あの程度で少し期待をするなんて青春を過ごしたいと感じて何もなかった奴の思うことだ。
だが熟練者には通用しない。
一人でいる事は、最初は辛いものだ。
しかしその域に達すると
「あれ?一人の方が楽じゃね?」
と考えてしまうようになるのである。
一人でいる事はある種の強さなのだ。
「ん??なんでまた居るんだよ!!」
心の声が頭に響く。
後ろを振り返ると居るのだ。
だが、今週は大丈夫。
教科書の世界に入り浸る。
一人の時間が多い俺にとっては読書は苦にならない。
それどころか、娯楽とも言える。
「それでは、講義を始めます」
教授の一声により幕が開けた。
この講義のページ数を開く。
改めて考えるとしっかりと読み込むなんていつぶりだろう。
教科書を真面目に開いて読む。
一年の春学期ぶり?
あの頃は真面目だったな〜
そんな事を思っていると後ろから寝息が聞こえてきた。
なんて綺麗な寝息なのだろう。
男と女でここまで違うとわ……
男の寝息なんて公害だ。
修学旅行での夜がどれだけ悲惨だったか。
隣で鳴り響く地ならしの様な音。
帰りのバス。寝不足のせいで車酔いという酷い目にあった。
「違う!!」
「はい、そこ黙ってね〜次!出てってもらうから!」
「は、はい!すいません……」
恥ずかしいーーー
自分で勝手に回想に入って集中できてない自分にツッコミいれて怒られる。
酷すぎる……
周りからちらほらと笑い声や
「何あれ〜」
の様な蔑みの言葉が耳に届いてくる。
そうだよね!自分でもそう思うもん。
先生にお母さんと言った時の恥ずかしさに似ている。
出ていきたい。
それにしても聞いてたらこっちも眠たくなってくるな。
催眠効果でもあるのか?
後ろをチラッと見るとコクリコクリと綺麗な髪と首を揺らしながら寝ている。
危うく見とれてしまうところだった。
いや正直に言うと少し見とれていた。
まぁ男なら仕方あるまい。
そんな言い訳が頭に浮かんだ。
それと同時にもう駄目だとも感じた。
来週からは席を変えて存在を感じられないところに行こう。
そう俺は授業を諦めた。情けないが。
それにしてもこれだけの女の子なら友達も沢山いるだろうに。
なんで見る度一人なのだろう。
美人過ぎて、周りが嫉妬しているのか?
女なら有り得そうだが……
それでも一人ぐらい誰かと歩いている所を見かけても良いものではないのか。
まぁ所詮他人事だ。
自分はその人ではない。
理解している!なんてのは自惚れだ。
考えるだけ無駄だ。
「はい!では今日の講義を終わります!」
諦めたら驚く程早く終わった。
どれだけ面白くないんだよ授業って。
「さてと……先週休んだゼミに行くか〜」
もうグループできてるんだろうな。
怖い怖い。
出会ってすぐの人間とグループになれるなんて皆は本当に凄い。
自己紹介何言おうかな。
ここがゼミの教室か。
担当の先生もういるじゃん。
周りに人が集まり居心地が悪くなってきた頃チャイムが鳴った。
鳴り終わり一拍の間が訪れる。
その時一人の生徒が勢いよく扉を開けた。
その姿に無意識に俺の口から一文字だけ漏れる。
「え」
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