第9話 劇場のイドラ βー7
メガネ「しかし、完全に正確な情報を入手するのは、やはり大変そうだし効率が悪いし時間を食います。世の中の正しいとされている教科書や大学の先生の様な権威ある人の本を読むだけではダメなんでしょうか?」
カエデ「とりあえずかっこ( )に入れて仮定して勉強するのは時間短縮のために有効です。しかし、絶対に鵜呑みにしてはいけません。メガネさんは、ガレノスの解剖図をご存知ですか?」
メガネ「知りません。」
カエデ「ガレノスさんは、今から約2000年前のローマ帝国で活躍した偉いお医者さんです。人間の解剖図を残した事で有名です。その解剖図は1500年の間、医学の教科書として正確な情報として取り扱われました。」
メガネ「1500年!?もしかして間違っていたんですか?」
カエデ「その通りです。不正確な図でした。ルネサンス時代、現地現物現実を確認し、ありのまま観察するという3現主義の時代になってようやくより正確な解剖図になりました。正確な解剖図が無ければ医学の進歩は停滞していたでしょう。」
メガネ「教科書に書いてあったり偉い人が言ってたから全て正しいとは限らないんですね。」
カエデ「その通りです。ベーコンさんは、今の様な例を劇場のイドラとして分類していますが元をたどれば確証バイアスと呼ばれている人間の習性、つまり種族のイドラに由来します。」
メガネ「確証バイアス?」
カエデ「確証バイアスとは、一旦正しいと認めたことは、それに合致しそれに支持を与える様な情報のみ聞く耳を持つ傾向で、認知バイアスでわかったつもりになった人間は、確証バイアスによって満足感を補強する情報だけに飛び付く様になり、それ以外の情報を無視する様になります。」
メガネ「これも何だか洗脳されているみたいですね。しかも勝手に自ら洗脳するんですね。」
カエデ「その通りです。ところでメガネさんは、今のガレノスさんのエピソードを聞いて不正確な間違った解剖図を書いた人とインプットされたと思いますが、どれくらい不正確だったと思いますか?」
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