第2話



 ……どこだここは……?



 気が付くと、私はドームの様な物に包まれていた。

 周囲には何も無く、上手く身動きが取れない。


『ふぁ〜〜む……』


 思わず欠伸が出る。とても眠くて仕方がない。

 しかし、それも致し方の無い事だろう。この一週間はほぼほぼ眠る事も出来なかったのだから。


『グァ……』


 今まで感じた事のない、心地良い浮遊感がある。


 ……眠いな……。


 しかし残念ながら寝る訳には行かない。早く引き継ぎの準備を終わらせねば──


『──グワッガッ!?』


 そこで意識が急速に目覚める。

 そうだ、私は会社で引き継ぎの準備をしていた筈だ!

 なのに何故こんな訳の分からないドームに閉じ込められているんだ!?


『グワッッッ!!』


 意味が分からず声を上げる。パニックの為か上手く声が出せない様だが、それに構っている余裕は無い。


『グワッッッッ!!グワッガッ!!』


 私は必死になって叫ぶが、誰も来てくれない。


 暫くそうして喚いていたが、徐々に冷静さを取り戻す事が出来た。


 仮に自分が誘拐犯だったとして、助けを呼べる様な場所に対象を閉じ込める訳が無い。


 残念ながら自力で脱出する以外に手は無いかもしれない。


『……』


 そう考えた私は、このドームを破壊出来ないかゆっくりと眺めてみた。


『グワム……』


 足元から真上まで見るに、このドームは楕円形の卵の様な形をしている。


 光源らしき物は見当たらないのだが、何故か視界は確保出来ている。恐らく、このドームの外から光を当てているのだろう。


 そんな事を考えながら、先ずはこのドームを触って見ようと手を伸ばす。


 触れてみて、壊せそうなら試してみようと思ったのだ。


 しかし──


『グワッガッ!?グワッッッ!!』


 私は驚愕の余り声を上げてしまう。


 見えてきた自分の手。それが、人間の物からかけ離れていたのだ。


 先ず目に入ったのは指先から伸びる鋭い鉤爪。


 綺麗に削っていた私の爪は見る影も無い。


 肌も人間の物とは違い、隙間無く鱗で埋め尽くされていた。


『グワッ!?』


 パニックになる私。そのまま全身へと視線を動かすが、そこに見慣れた人間の姿は無い。


『グワ……』


 ──鋭い鉤爪。


 ──全身を包む鱗。


 ──そして、


 ここに来てようやく私は事態を理解する。


 私が閉じ込められているこの場所は、卵の様なドームでは無く、


 ……どうやら私はトカゲになってしまったらしい。

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