頭痛が痛い

早坂みきと

第一章 違和感を感じる

プロローグ

 午前三時ごろ、ふと、目が覚めた。


 珍しい。いつもなら目覚ましが鳴り響くまでは熟睡している。母親に叩き起こされなきゃ起きることが出来ないはずだ。自分でも不思議に思う。


 いつぶりだろうか、こんな夜中に目が覚めるのは。小学校以来であろうか。よく夜中にトイレに行き、深夜アニメを親に内緒で見るというのが日課になっていた。中学校では多少は勉強するようになって、睡眠が一番の勉強だということを知り、遅くても一一時までには寝るようになった。今ではレム睡眠という存在を知り、最低、七時間は寝るように努力をした。結果、今に至る。


 さて、どうしたものか。もう一度寝ようにも、寝られるような気配がない。寝る前にはカフェインを採らないように気を付けているのだが、目がシャキっとしている。


 ゲームでもしようか。去年配信されたバトルロワイヤルにハマっている。よくある三人称視点よりも、一人称視点のほうがやりやすいと俺は思う。

 モニターのヘルツを上げればフレームレートが上がるが、六〇ヘルツから一四四ヘルツ以上に慣れるまでは少し時間がかかる。ヌルヌルしていて逆にやりにくいさえ思う。


 コンピュータの前に座る。

よくよく考えたら、今の時刻は三時、俺の入っているサーバはアメリカだから、あっちの時刻は一三時ぐらい、強い人しかいなさそうだ。やる気が失せた。

 負け戦はしない。だって、負けたくないから。


 何をしようか。

 そんなことを考えると並行に、時間が刻々と過ぎていく。


 カーテンの隙間から外を眺める。

 外はまだ真っ暗だ。今はまだ冬だし、日の出はまだまだ先だ。窓ガラスには霜が付いている。懐かしい。園児の時、雨時のバスの窓ガラスにできた霜で、よく絵を描いていた。当時の絵はとても下手くそだった。今でも変わらないや。


 一度ベッドで横になろう。そうすれば眠たくなってくるはずだ。

 寝つきが悪い人向けの必勝法がある。四七八呼吸法という方法だ。至ってシンプルで、初めに四秒かけて鼻から息を吸い、七秒間呼吸を止め、八秒間かけて口から息を吐く、これだけである。ネット上では、これですぐに寝つけたなどの声が挙がっている。俺はこんなことで寝つけなかったけどな☆ 


 大人しく寝るか。明日も、いや、今日も朝練があるし、身体を休めておかないと身が持たない。総合格闘技部なんて入らなければよかった。自分のそのへなちょこ根性を叩き直すために入ったのに、筋トレだけでゲロ吐きそうになるし、先輩からのタックルですぐ伸びるし、やってられない。畜生。俺ができるのは精々護身術ぐらいで、殴る蹴る程度なら受け流したりできる。が、タックルなんて論外だ。さすが総合格闘技部。辞めたい。


 枕元にスマホが無い。いつもは目覚ましを設定しているから、枕元に置いて充電しているはずなのだが。足を生やして逃げたのか? ……まあいいや、そんなことしてないで寝よう。目覚ましが鳴ったら見つかるだろう。


 そういえば俺、今日までの提出物したっけ。どうでもいいや。なんとかなるだろう。

 提出物って面倒くさいと思わないか? 特にノートが一番面倒くさい。なぜノートを取らなければいけないのだ。俺はあくまで、内申点を上げるための道具にしか見えない。教師に聞いてみれば、家で復習ができるから、だそうだ。確かに復習はできるが、俺は字が汚すぎる。そして授業の内容なんて、すべて教科書に載っているではないか。

 というか、教師なんて教科書というマニュアルを持って前に立っているだけじゃないか。今の世の中、インターネットが誰でも使うことができるのだから、ネットに上がっている授業動画で十分、そして、それのほうが解りやすいと思う。俺は学校での授業よりも、それのほうが受けている時間が長い気がする。

 日教組なんて、くそくらえ。あんなもの早く潰れちまえ。


 寝られない。目がシャキっとしているだけじゃなくて、いろいろと考えてしまう。

 朝はまだなのか? カーテンの隙間からはまだ日の光が射していない。まだ日の出ではないのか。太陽クンはシャイだからまだ出られないのかな? いい加減出て来いよ。カスが。


 果たして、時間はちゃんと流れているのだろうか。体感では一時間以上は過ぎているのに。

 今日はなんだかいつもと違う。こう、なんと言えばいいのか分からないのだが、この部屋の空間だけ違う時空にいるような感じがする。SFじゃあるまいし、ただの気のせいに過ぎない。


 寝よう。

 とりあえず、そのことだけを考えよう。


 ――やっと眠りにつくことが出来た。なんだろう、こんな夢初めてだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る