第66話 旅立ち "walking with you"

■■まえがき■■

 今回のBGMは"Novelbright"の"walking with you"でお願いします!

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 神呪"リザレクション"。

 世界の摂理に逆らう反魂の理には大きな対価が伴う。

 その対価の大きさゆえに、運命神ムカクでさえも使用を躊躇したほどだ。



 これを使ってしまえば僕は……。

 


「いや。そろそろ、次のことを考えないといけない」

 かぶりをふって意識をもどす。


 これまで、僕はただひたすらに日夜修業に明け暮れていた。

 そのせいで、旅立ちの準備が手つかずだ。

 いい加減準備を始めないと旅立つことすらできないかもしれない。

 せっかくここまで頑張ったのに旅立てないとか笑えないよね。


 幸い、服装については、ブーメランパンツ、タンクトップ、ショートパンツなどなど……。そこまでかさばらないものばかりだ。

 その他の必要な道具を揃えるだけで大丈夫。

 よし! 早々に【マッスル・ワープ】で帰宅して準備を始めないと!

 


「そうとなったら、すぐに旅立ちの準備だ!」

 そうして僕は裏ダンジョンを後にしたのだった。

 


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 今日、僕とクロエは二人だけで村を旅立った。


 これからはモンスターと戦いながら旅を続けることになる。

 命の危険と背中合わせの毎日。


 そして、街にたどり着いたら犯罪者まがいの悪漢たちやチャラいイケメンやダンディーなイケオジたちが、モブのくせにここぞとばかりにNTRを狙ってくる。

 新規加入するパーティーメンバーにNTRされたり、冒険者ギルドで目を離したすきにNTRされたり、貴族にNTRされたりと……。


 ううっ、考えるだけで殺意がわいてくる!


 ひとえに、そんな事態を招いたのは原因といえば。

 パートナーの【白魔導士】が弱かったからに他ならない。


 だからこそ、僕は対抗できるだけの力を身に着けた。


 神すら殺せる僕の【筋肉】があれば、どんな旅路であれ、きっとクロエを守り切れるはずだ。

 原作とは違うのだよ、原作とはッ!


 そんなことを思いながら、キャンプ道具やアイテムが積まれた背負子を担いだ僕は街道を歩く。



 僕の目の前を軽快にスキップするクロエ。

 これからの旅が楽しみでしょうがない、そんな思いを全身で表現しているかのようだ。


 クロエは本当に美しくなった。

 そんな彼女は陽光を一身に受けながら、黒髪と耳元のダイヤモンドピアスを揺らしている。


 その可憐な後姿を見ながら、僕は改めて決意をする。


 大好きなクロエを、他の男になんて渡すものか。

 クロエと結ばれるために何としても彼女を守り切るのだ、と。



 なぜなら僕はようやくのぼりはじめたばかりだからな。

 このはてしなく遠いNTR坂をな……!






 

 だが、このときの僕はまだ想像もしていなかった。


 僕が冒険者"タナカ"として行った様々な行動により、すでに原作とは違う世界線になってしまっており原作知識が役に立たなくなってきていることを。

 そして、NTRの本当の恐ろしさを身をもって知ることになるということを。


 僕は想像もしていなかったのだ……。










。 

 


 




■■あとがき■■

2021.11.20


「やはり……この黒ゴマみたいなのは……」

 頭皮のサイドに見えてきた小さい点々。


 左サイドからの生え際への攻め込みっぷりたるや、日本代表の長友●都を彷彿とさせる。スペース空きすぎな気がするのが玉に瑕といったところか。

 一方、堅守の右サイドはいまだ沈黙を守っている。さすがの酒井宏●といえばよいのだろうか。鉄壁すぎるのが問題だな。

 このまま試合が進めば、筆者のヘアースタイルはどうなってしまうんだろう?

 そんな一抹の不安を覚える展開である。



 いつものように細部まで眺めていると……


「テリードリームさん、部長がお呼びですよ」

「あ、はい。分かりました」

 筆者はそう返事をすると、すぐに立ち上がって部長〔注:部付部長とは別の人です〕の待つ会議室に向かう。

 


(なんだろう……。こんな中途半端な時期に呼び出しとは……。なにか仕事上のミスでもしていたのだろうか。先日、うっかり数字間違って社外に出した書面は……バレないように内々で回収したはずだが……)

 そんなことを思いながら、会議室で勧められるがままに着席する。


「突然すまないね」

「いえ、どういたしまして」

「最近は仕事の調子はどうだい」

「ええ、おかげさまで。万事つつがなく進んでおります」

 

 ずっとカクヨム読むか頭皮を眺める毎日です。

 仕事? 仕事は相変わらずウン●ですよ、ははは。


 正しくはそう答えるべきなのだろう。

 だが、そんなことは流石に筆者の口から部長には言えない。

 良心の呵責に苛まれながらもウソをつかざるをえなかったのであった。


「じつは君に話があってね……」

「は、はい」


 そういうと、部長は机上に体制図を広げた。


「これは……?!」

 筆者はいぶかしげに口を開く。


 わざわざ新体制になるところを赤字にしている。

 こんな月半ばにまさか担務変更……? いや、それにしては赤字になっている範囲がかなり広い……。

 ラインが一列赤くなっている……、これは?


 困惑する筆者に対して、部長は告げた。


「来週から君には名ばかり管理職を卒業して、管理職になってもらうことになった。引き続きよろしく頼む」

「な、なんですって?!!!!!」






(第一部完)

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