第65話 救済


――神殺しを達成しました――


 アナウンスが聞こえてきた。





 そっか。

 やっと終わったんだ……。


 勝利したという実感はいまだにわいてこないが……。

 討伐に無事成功したということなのだろう。


 肩の荷がおりた僕は、腹部に突き刺さっていた脚を引き抜いてその辺にポイ捨てすると【ヒール】を幾度となく唱える。

 

 喪った眼球や肝臓などを再生しきる頃には、MPが底を尽いていた。

 全身をMP欠乏症状が襲い、筋肉にはかつてないほどの乳酸が溜まっている。

 加えて、さっきから体内に流れてくる膨大な経験値のせいで気分は最悪だ。


 うずくまって、それらの不快感に耐える。

 震える身体を抱えるようにしてうずくまっていると、そのうち体調が戻ってきたので少しだけ冷静に考えることができるようになった。


「そうだ……ステータスを確認しないと」


 かつてない長時間の経験値流入。

 それによって、いったいどれほどのレベルになったのかは気になるところだ。


 僕は気にしながらステータスを確認する。



 そして、思わず苦笑してしまった。



 


 レベル931。


 そこには驚異的な数字が示されていた。

 たった一度の戦いで、一気にここまでレベルが上がるとは。


「ははっ……。それにしても救済って」


 悪神ドューラスだが、実は悪いやつではなかったのかもしれない。

 お互いに命を賭けて殴り合ったが、奴は終始フェアな戦いを試みていた。

 いまとなっては、その格闘家としての姿勢に尊敬の念すら抱いている。



 

 僕は疲れた身体をひきずりながら、悪神の骸を越えて裏ダンジョンの最終地点まで歩を進める。



 ついに、この修業の日々が終わりを告げる。

 そんな思いを、一歩一歩で噛みしめる。


 

 裏ダンジョンには単独制覇時に限り与えられるクリア報酬が存在する。

 クリア時の職業によって異なるが、【白魔導士】の場合は……。


 

 

「あっ、宝箱があった!」


 僕は駆け寄ると、躊躇することなく宝箱を開ける。

 この宝箱には罠がないことは原作知識で知っているのだ。







 

 宝箱の底には、一つの書物が横たわっていた。

 ボロボロの羊皮紙が束ねられただけのものだったが、周囲に放つ存在感には圧倒される。


 これほどのオーラを放つものを自分が手にしていいのだろうか。

 そんな思いすら抱いてしまいそうになる。


 けれど、僕は手を伸ばしてつかみ取った。

 いままでの苦労を振り返ると、思わず涙が出そうになってしまう。



「これを手に入れるために僕は頑張ってきたんだ……」


 とうとう手に入れることができた。

 クロエとの旅立ちで役立つであろう最後のチートアイテム。






 







 神呪"リザレクション"。


 

 

 その日、僕の長きにわたる修業の日々は終わった。

















■■あとがき■■

2021.11.13

「これはまさか……発毛リザレクション?!!」




(つづく。近々、新作を見切り発車予定。カクコン向けに没作品が大量に裏の世界で生産されましたが、なんとか良さげなのが出てきました。相変わらず一話目書いてる段階で何も無いけどwwwww)

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