第62話 笑顔 "The Death Zone"
■■まえがき■■
今回のBGMは"Frazer Edwards"の"The Death Zone"でお願いします!
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「さぁ、始めようか」
アップライトの姿勢から放たれる殺気に、思わず息を飲んでしまう。
高い位置に構えられたせいで、腕に阻まれて視線を読むことができない。
加えて、いままでに対峙したことのない構えだけに、どんな手札をもっているのか想像がつかない。
自然と汗が噴き出してくるが、ここで気圧されていてはだめだ。
分からないなら分からないなりに、どうにかするしかない。
「くそっ。こうなったら出たとこ勝負だ」
僕は前がかった姿勢からダッシュをして一気に距離を詰めようと踏み込ん……
殺。
とてつもない殺気に襲われた僕は、とっさにバックステップをした。
シュッ。
僕がバックステップをした直後。
さっきまで僕の顔があったあたりを何かが通った。
「なっ……蹴り技ッ……?!」
頭部を打ち砕かんと振りぬかれた右脚。
ハイキックした後、その威力に任せて空気を切り裂いた右脚は地面へと着地した。
そのまま流れるようにスムーズに体勢を立て直すと、再びドューラスはリズムを刻みながら右脚を上下させる。
一体何が起こったのだろうか。
僕はいまだ理解が追い付かない。
ただ分かったのは、たったいま僕は死にかけたということだけだ。
「これを避けるとは。流石だな」
傲岸不遜。
神とは……なんと残酷なまでに圧倒的強者なのだろうか。
そのあまりの余裕に、彼我の差の大きさを感じてしまう。
人の身で神に戦いを挑むなど……無謀だったのかもしれない。
けれど、ここでひるんではダメだ。
師匠もかつて画面越しにこう言っていた「がんばれがんばれがんばれ! ツライときこそ笑顔!」と。
……そうだ!
師匠の言うとおりだ。
こんなときこそ笑顔だ!
きついトレーニングこそ、最高のご褒美だと思うんだ!
僕は内心の弱気を全力の作り笑顔で上書きする。
すると、不思議と力が湧いてきたように感じた。
「ほぅ……。さらに成長するのか。面白いものだ」
腕とは比較にならないリーチの長さ。
以前の僕だったら、その範囲を見極めようとして必要以上に距離をとってしまい、かえって攻め手を無くしていたことだろう。
だが、師匠の教えを思い出して原点に戻った今なら分かる。
そんな風にテクニックに逃げているようでは、こいつに勝てるわけがないのだと。
"筋肉"を駆使して活路を見出す。
苦戦しまくったあげく、やっとこさ正解選択肢にたどり着いた。
僕は全力で叫んだ。
「さぁ、反撃させてもらうぞ!」
■■あとがき■■
2021.10.31
「オムツを買うか、カツラを買うか。それが問題だ」
キメ顔をしながら、デスクで悩む筆者。
碇ゲンド●ポーズでキメようとしても、髪が薄いとイマイチだ。
もうダメかもしれん。
最近はだいぶ頻尿が落ち着いてきたので、30分に1回トイレに行く程度で済んでいる。
このまま緩やかに改善すれば無問題だ。
もともと会社では1時間に1回の頻度でトイレに逃亡を図っていたから、周囲に違和感はないだろう。
そう考えると……やはり、トイレ対策よりも
腕毛などは多毛症といっても良いぐらいに元気なのだが……。
肝心の頭髪の方はせいぜい産毛レベルだ。
しかも、当初の生え際からだいぶ後退したあたりにチョロチョロと生えてる程度。
いや~これさぁ。全然ダメじゃん。
発毛剤飲んでるけど、普通に禿げてるじゃん。
この状況になってからカツラかぶっても「いや……それはちょっと……」って周囲の人が思っちゃうじゃん。
お金をつかって個人輸入までして心臓に負荷をかけて、禿げないといけないの?
俺はただ単に禿げたくないだけなのに……。
それに……産毛って……せっかく生えてくれてるところに恐縮だけれど、頭髪にカウントされなくない?
だって、遠くから見たら普通に肌色だよ? 地肌モロ見えじゃん。
勝手に産毛に転生されても困るわ~。
そんなこんなで焦りのあまり1回に飲む薬の量を増やしてみたら、再び初期脱毛が激しさを増したりするし。
この局面で更に勢いを増す脱毛……。
いったい、何をどうすればいいんだってばよ……。
(つづく。)
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