第53話 悪の孵化 "The Birth Of Evil"
■■まえがき■■
今回のBGMは"Ancient Bards"の"The Birth Of Evil"でお願いします!
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「さて……行くぞ! 裏ダンジョン攻略!」
目の前のゲートを、アームカールを繰り出して殴り飛ばす。
破壊音とともに、ゲートの戸板が残骸となってはじけ飛ぶ。
枠だけになったゲートをくぐって、僕は、ゲートの向こうの薄暗い空間に足を踏み入れる。
僕がこれから訪れるのは、悪神ドゥーラスが封印されし地だ。
封印された悪神が力を取り戻すためにその瘴気を利用しようとして……古戦場跡地の中心は……いつのころからか、現世から外れた場所へとつながるようになっていたのだった。
原作では、この地は通称"裏ダンジョン"と呼ばれている。
クリア後に訪れることが可能になるダンジョンで、ひたすらキャラクターを強化して数字をインフレさせるためのコンテンツだ。
インフレが気持ちよすぎるので、コアなファンならば猿のようにプレイし続けること請け合いだ。
「しかし、古戦場跡地に続いて、見通しが効かないフィールドだな……」
僕は、独り言ちる。
真っ暗な空間。
そして、上空を見上げるとかすかに星がまたたいているような。
宇宙を連想させる、そんな感じのだだっ広いフィールドだ。
そのフィールドに、設置されたクリスタルを想起させる透明の床。
透明の床の上をひたすら歩き続けて階段を降りると、次のフロアでも似たような風景が続くという没個性のダンジョンだ。
決して、手抜きでは……手抜きではないと思いたい。
開発チームに……クリア後コンテンツに対してマンパワーを割くだけの余裕がなかったとか、そんなことはありえないだろう……多分。
裏ダンジョン内に出現するモンスターは、クリアまでのストーリーで出てきたモンスターの色違いばかりだ。
デザインは変わっていないが……カラフルになるわけだから別種のモンスターと位置づけられる。
一色一色工夫することで数を増やすことができる。
色に工夫を凝らした結果、デザインまで手が回らなかったのだろう。きっと。
そんなことを思いながら、僕はゲート付近で周囲を警戒する。
いまのレベルは263だが……裏ダンジョンの敵と戦うにはレベルが足りてないように思う。
タイマンで戦闘する都度、ゲートを抜けて古戦場跡地で自然回復をする。
そんな感じの安全策をとらないと、一気にゲームオーバーだ。
一回一回の戦闘が命がけ。
それぐらいの無理をしてでもレベリングしないと……。
そこまでしないと、クロエをNTRから守れない。
混沌のごとく這い寄ってくるNTR。
それに対抗するには、レベリングをしまくって人外の域に達するしかない。
『お前がNTRを覗いているとき、NTRもまたお前を覗いているのだ』
そんな邪念が頭をよぎる。
?!
ふと、視線を感じたので前を向くと、鼠が一匹かなり遠くにいるのが分かった。目測だと、百メートルほどだろうか。
草原鼠と同じぐらいのサイズだが……黒毛ではなく肌をさらしている。
タナカの知識では、このダンジョン内の最弱モンスターだ。
とはいえ、クリア後コンテンツだけあって、魔王の近衛兵よりもはるかに強いステータスの持ち主である。
さすがに魔王には及ばないけど、魔王城でエンカウントしたらパーティー全滅の事態になりかねない強敵だ。
僕が警戒をしながら、間合いを詰めようと足を前に出したときだった。
ヒュッ。
風が横を通り抜けた。
「えっ」
僕は違和感を覚えて、風が通り抜けたあたり――右腕――を見やった。
すると、右腕はすでに無く、血が噴水のように噴出していた。
脳髄に走る激痛にこらえながら、僕は叫んだ。
「くそっ、よくもやってくれたな!」
【ヒール】を重ね掛けして、出血を抑えてすぐに右腕を再生する。
鼠は食べるのに夢中になっている。
しょせんは動物だな。くたばれ!
そんなことを思いながら、下を向いて僕の腕を食べている鼠を狙って手刀を振り下ろす。
空。
飛。
そんな鼠に打ち下ろした僕の拳は、空を切った。
いや、正確には、打ち下ろした手刀は……手首から先が齧り飛ばされていた。
いくら【ヒール】で治せるにしても、ここまで力量差があるとは……。
「くそっ! 強いな! 切り札をきるしかない……!」
僕は、今日はこの鼠を倒すだけで狩りを終えることに決めた。
そうして、結局、僕は【マッスル・パンプアップ】をつかうことで、ステータスを三倍にすることでなんとか鼠を一匹駆除したのだった。
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旅立ちの日まで、あと1週間。
「なんとか間に合った……」
二年ほどの期間をかけて、僕は裏ダンジョンの最奥にたどり着いた。
僕が足を踏み入れた、最奥の部屋。
そこの中心に設けられた台座の上には、巨大な卵が据え付けられている。
透明感のある青黒い卵の殻の下にめぐった血管が脈打つ。
「このなかに、悪神ドゥーラスが封印されているのか……禍々しいにもほどがあるな」
悪神といえど神。
卵から放たれる邪悪な神威に屈してしまいそうになるが、なんとか心を奮い立たせる。
ここに至るまでの修業でレベルが893になったという事実が、僕の自信を支えてくれた。
レベリングをここまでやったのだから、なんとしても悪神を討伐して、裏ダンジョンのクリア報酬を得なければいけない。
僕は台座のすぐ下までたどり着くと、卵を見上げて言った。
「いまから討伐させてもらうよ」
僕が言葉を投げかけると、透明感のある青黒い卵の殻のむこうに潜むものが反応したのが分かった。
■■あとがき■■
2021.09.06
「し、心臓が痛い……。それに勃たない……。そのくせ、なんでムダ毛が元気になるんだ……」
薬を飲み始めてすぐに、筆者は副作用に悩まされることになった。
調べてみたところ、次のような状況にあることが判明した。
ミノキシジルは心臓の動脈を拡張する作用があり、血流がゆきとどかなくなった皮膚の末端に栄養分を届けることを可能にする。
筆者が仕入れたインド産ミノクソールは5ミリだが、循環器の専門医は「ミノタブ(タブレットタイプの飲むやつ)は1日に1ミリが上限。内服は作用が強すぎるので、塗りミノ(リアッ●みたいに塗るやつ)をお勧めする」と説いていた。
つまり、筆者は心臓に負荷をかけすぎて、そのうち心不全になりかねないというわけだ。
一方、フィナステリドは男性ホルモンの原因に対して作用をするのだが……、その副作用は性欲減退でありEDなどが列挙されていた。過剰な男性ホルモンがAGAの原因なのだから、そりゃそこに効果的な薬を使用するのが定石なのだろうが……。
「だが、このぐらいは……異世界勇者にはどうということはない! 勇者の冒険譚には痛みが伴うものなのだ!」
そう。
筆者は、投薬開始により異世界勇者になったのだ。
すなわち、侵攻してくる魔王AGAに立ち向かうため、生命力を糧にして攻撃力を生み出す聖剣ミノクソールを手に取り、生涯を共にすることを誓った幼馴染のセイヨクを犠牲にして聖鎧フィナクスを身にまとったのである!
……。
すみません。このネタやりたかっただけです。
前回のあとがきは地味に、このネタの前振りでした。
聖剣とか聖鎧とか突然言い出したりしてすみませんでした。
とはいえ、一錠ずつ飲むだけで心臓に負荷がかかるとは恐ろしいですよね。企業戦士は、仕事に命をかけたうえに、ハゲないためにも命をかけないといけない時代になったんですかね。
しかし、参りました。
副作用ではないのですが。
さらに衝撃的な事態に陥っています。
実は、心臓痛いとかEDとかそんなの比較にならないぐらい……はるかにヤバいことが起こっているんです。
なんせ、むっちゃ
朝起きたときの枕についてる
仕事してるときとかに、眼鏡に毛がフッて落ちてきたり。
恐怖を感じるぐらいヤバい。
あとがきのジャンルが現代ホラーだということを身をもって体験している感じです。
なんでも……AGA治療のための投薬を始めたら、「初期脱毛」という現象が起こるそうです。
2週間~2か月ぐらいですが、とにかく抜ける。抜けまくる。
で、抜けた後に、正しいヘアサイクルに戻った新しい毛が生えてくるという……。
なんという破壊と再生の物語でしょうか。
もはや筆者の頭皮は、天地創造の一大叙事詩なのかもしれません(意味不明)。
いろいろ隠すために頑張ってくれていた長い毛が抜けて……かなりの間を置いてから産毛が生えてくる……周囲の人には「こいつ、
ハゲるのを防ぐためにAGA治療を始めたのに、ハゲていた。
何を言ってるのかよくわからないかもしれませんが、実際に自分の身に起こったことの意味が筆者にはよくわからないです。
読んだだけで恐怖を感じる
今となっては、「投薬の前にフリカケを買っておけば良かった!」と思うだけです。
ここまで減ってしまったら、いきなりフリカケをすると「ああ……ヅラ市長の仲間入りだな」と思われるし、ツラい。
かなりツラいので、もうAGA治療を止めたいぐらいなのですが……ここで投薬を止めてしまうと
これが本当に初期脱毛なのか、猛烈に禿げてるだけなのかは……結果がでないと分からないんです。
そのうちトレンディエンジェ●の斎藤●になりそうな勢いで抜けるとか……。
どうすればいいんですかね。
「テリードリームさんだぞ!」
とか、ジャケット広げながら会社でネタ披露するんでどうか許してください。
(つづく。皆様の応援の数だけ、筆者の髪の毛が増えるなるかもしれません。お手数ですが、♥と★をよろしくお願いしますwwwwwww)
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