第52話 ノッキング "When Death Comes Knocking"
■■まえがき■■
今回のBGMは"Astralion"の"When Death Comes Knocking"でお願いします!
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「くらえっ! レッグランジ!」
聖気をまとわせた右脚をドラゴンゾンビに対して繰り出す。
僕の脚がドラゴンゾンビの眉間に突き刺さった。
その衝撃で、ドラゴンゾンビの巨体が大きく揺れる。
そして、衝撃とともに聖気が伝わると、腐蝕していた肉は灰となって崩れ、汚染されていた鱗は塵となり吹き飛んでいった。
小高い山一つといってもよい巨体が一瞬で跡形も無くなる。
古龍がアンデッド化したような化け物まで一撃で屠れるようになったのだから、僕もだいぶ強くなったものだと思う。
ドラゴンゾンビの崩壊とともに、膨大な経験値が流れ込んできて、全身が熱を帯びる。
深域での戦いを数か月も続けた結果、僕のレベルは163まで上がった。
いままでとは比較にならないような速度でレベルが上がるのだから、深域でのレベリング効率は本当にすさまじい。
ドラゴンゾンビを倒した余韻に浸って一息ついていると、視界の片隅に大きなモンスターが動くのが見えた。
「おっ、あっちに
凄まじい勢いで僕から逃亡しようとする
経験値の塊みたいなものだから、絶対に逃がしはしない。
「「「「「アアアアアアアア……」」」」」
数万という規模の悪霊が浄化され、空気に溶けるようにして消えていく。
悪霊たちの消滅にあわせて、経験値が流れ込んでくる。
さすが数万という悪霊の群体だけあって、こちらもドラゴンゾンビに負けず劣らず膨大な経験値だ。
あっ、レベル1上がった。
これで164だな。
「さて……。そろそろ次に行くか」
深域でも十分にレベル上げができるが、僕が十五歳を迎えるまでに二年ほどしかない。
残り期間を考えると、さらにレベリングを加速する必要がある。
さらにレベリングを加速するためには……この深域の中心にあるゲートの先の"とあるダンジョン"に行く必要がある。
目につくアンデッドを浄化しながら、目的のゲートまで歩くのだった。
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「い、息ができない……ッ!」
あまりの瘴気の濃さに、浄化が追い付かない。
力を篭めた【ホーリーライト】だけでは1メートル先すらも照らせない。
僕は【サンクチュアリ】を重ね掛けすることで、何とか拮抗しているような状況だ。
冥府にでも片足を突っ込んだのだろうか。
そんな錯覚に陥りそうなぐらい、穢れに充ちている。
「こ、これほどとは……」
タナカの原作知識では"歩くと一定ダメージを喰らう毒マップ"ぐらいのものだったが……。
そんな可愛らしいものではないな。
もし、この穢れに触れてしまえば、即座に正気を失い、僕も一人前のアンデッドになって魔境を彷徨い続けることになるだろう……。
身震いをしながら、僕は呼吸を整えながら地面に腰を下ろした。
瘴気を祓いながら、MPを効率的に自然回復しないと……そのうちMP切れに陥ることは確実だ。
そうして、僕は、古戦場跡地の瘴気の中心に腰を据えたのだった。
いつしか、僕の周りに台風のような瘴気が渦巻くようになった。
この不浄の地が、僕をその穢れに取り込もうとしているのかもしれない。
悍ましい悪意に、抗するために僕は必死で【サンクチュアリ】を連打する。
猛威をふるう台風に対して、人間が抗うのに等しい。
荒れ狂う暴力の前には、人間は身を隠してただ祈ることしかできない。
そんなことを思いながら浄化をし続けていると、あることに気が付いた。
なんと、経験値が入ってきているのだ!
どうやら、この台風のように襲い掛かってきている大気は……アンデッドの集合体なのだろう。
道理で、僕を狙ってきていたわけだ。
そういえば、原作では、そんなアンデッドの最上級モンスターがいたような……。
画面で数字で表現されていた出来事が……まさか、自然災害に匹敵するほどの脅威だとは!
「くそっ! 」
僕は堪えるように姿勢を低くとり、嵐へと抵抗する。
それによって浄化された大量の悪霊たちから経験値がひたすら入ってくるが、油断などできるはずもない。
周囲を取り巻く"死"からの救済を求めるかのように、聖句を唱える。
僕はうずくまるようにして、ただ祈り続けた。
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ふと嵐が止んでいることに気が付いた。
いつしか嵐は止んでいた。
周囲の瘴気は薄っすらと残る程度だ。
僕は祈りに没頭するあまり、浄化し尽くしたことにすら気が付かなかったのだ。
僕の眼前では、ゲートが月明りに照らされていた。
立ち上がって歩み寄ると、僕は、ゲートをアームカールで抉じ開けて叫んだ。
「さて……行くぞ! 裏ダンジョン攻略!」
■■あとがき■■
2021.08.30
「届いた……! とうとう届いたぞ!」
個人輸入代行サイトで発注していた、インド産のミノキシジルとフィナステリドの錠剤が到着したのだ!
ちなみに、2週間ぐらい「インドを出国して空輸中」の期間があったのだが、気にしてはダメなのだと結論づけたのはここだけの話だ。
外装を見るにつけ、そこはかとなく覚える違和感。
「しかし……なぜ送り状ラベルにある住所や名前が中国っぽいフォントで書かれているのだろう?」
こんなところでも中国が覇権を握っているということに恐怖を感じながら……、筆者は茶色の厚い包装紙を剝く。
茶色の包みの下からは、プラスチックケースが出てきた。
日本に送るにあたり、内容物が損壊することのないようにちゃんと配慮してくれているのだろう。
さすがインド……!
出てきたプラスチックケースの中には、目的のブツがちゃんと収められていた。
清潔感のあるしっかりした紙パッケージなので、少し安心する。
サイトでは「箱が崩れていた」などの口コミも耳にしていたが、そんな事態にまずならないぐらい過剰包装だ。
現地の日本人が監修したという、そのパッケージには「ミノクソール」「フィナクス」という名称が記載されている。
とうとう……、筆者は聖剣「ミノクソール」と聖鎧「フィナクス」を手に入れた!
嬉しい!
フォオオオオオ!って雄叫びをあげたくなるぐらい。
これで、筆者もAGAスキンケアクリニックと(ほぼ)同等の戦いができるようになったのだ!
ただ……誤算だったのは、半年分だと360錠(1日1錠×180日×2種類)になるわけだが……一箱に十錠が入っている仕様なので……細かい箱が36箱も届いたということだろうか。
箱がありすぎて……到着した数量の検品がどうでもよくなってくるレベルだ。
うん。どうでもいい。
たぶん……きっと!
インド人が数えて送ってくれているはずだ!
目の前に十分ある!
2~3箱足りてなかったところで大した問題ではない!
これで……。
これでいける!
そう思った筆者は、意気揚々と、ミノキシジルとフィナステリドをそれぞれ1錠ずつ飲んでみることにしたのだった。
このときの筆者は、まだ「副作用」という言葉の真の重みを知らなかった……。
(つづく。夏期休暇を取得して一週間家族旅行してました。更新遅れてすみません。休暇中にどれぐらい業務滞留起こしているのか、考えただけで鬱病発症しそう)
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