第49話 古戦場跡地

 ハムス古戦場跡地。


 開けた平野だけあって、大軍を率いて決戦をするにはちょうど良かったのだろう。

 幾度となく、王国軍と魔王軍は戦争を行った。

 そして、その都度、戦争により王国軍と魔王軍は多数の死者を出した。


 あまりにも多くの命を失い、その骸が放置され続けた結果……死者の怨嗟はいつしか淀みとなって渦巻き、ダンジョンへと変質していった。



「なんて禍々しいんだ……」


 かつての平野の面影など、どこにもない。

 月明りが邪気に妨げられてしまい、視界を確保することすら困難。

 今となっては、人族やモンスターがアンデッドと化して跳梁跋扈する魔窟だ。

 


 僕がこれから挑むこのマップだが……実は原作ではあまりストーリーには関係ない。

 原作スタート時点では、ここから押し寄せてきたアンデッドが隣接するトリングス砦を落城させているぐらいで……。

 ただひたすらに、あたり一帯をアンデッドがうろつき回っている。


 このマップに来た目的のうち一つは……ずばりレベリングだ。


 溢れまくっているアンデッドを葬って、経験値を入手する。

 雑魚とはいえ、数万という規模のアンデッド狩りになるはずなので、膨大な経験が手に入る。


 この狩場には他に競合するような冒険者もいないので独占できる。

 それに、幸い、【白魔導士】とアンデッドのかみ合わせはかなり良い。

 いまの僕なら、白魔法を駆使して戦って適宜MPを自然回復させれば問題ないだろう。



 白魔法【ホーリーライト】で視界を確保しながら、幽気に充ちた呪われし地を僕は歩く。


「アッ……」

 僕の生気にあてられて寄ってきた一匹の悪霊スピリットが、立ち消えた。

「アッアッ……」

 悪霊スピリットが群がってくるが、雑魚すぎて【ホーリーライト】との距離が近くなると、次々と声をあげて消えていく。


 実体をもたない悪霊スピリットは、聖なる力を当てられるとすぐに消滅する。

 邪悪な本能に従って虚ろにうごきまわるだけで、特段の知恵もないから【ホーリーライト】を避けることすらしない。

 僕の身体から溢れる生気に、ただ寄ってくるだけの存在だ。


 どうも経験値ごちそうさまです。

 そんなことを思いながら歩いていると。


 

「イィィィー!」

「おっ、きたきた」

 闇をまとった【スクリーム】が、レイスから僕に向かって放たれた。

 【ホーリーライト】の光が届くギリギリの位置からの遠距離攻撃。


 一定確率でバッドステータスの【恐慌】に陥ることもあるスキルだが……"きんのネックレス"で【全状態異常無効】になっている僕には何ら影響ない。

 

 僕はレイスの方に悠然と歩いて距離を詰める。


 そうすると、【ホーリーライト】にあてられたレイスは、まるで塩をかけられたナメクジのように急激に小さくなり、地に伏した。

 不浄な存在にとって、それほどに聖気は耐えがたいものなのだ。


「オッ……オオッ」

 謎のうめき声をあげるレイス。

「成仏しろ」

 僕は、聖気をまとわせた靴底でレイスを踏んで葬り去る。



「よし……! どんどん行こう」

 誘蛾灯のごとくアンデッドを引き寄せて即座に滅する。


 そんな効率狩りに、僕は勤しんだのだった。








■■あとがき■■

2021.08.13

「"インドを出国して空輸中"からステータスが動かない……」


 既にインドを出国してから一週間以上経過している。

 筆者が個人輸入を試みたミノキシジルとフィナステリドは、一体どこの国の上空を飛んでいるのだろうか。


 現実世界にありながらにして、真の異世界がどういうものか教えてくれる。

 そんなインドの大きさに心が折れてしまいそうだ。


 筆者がスマホを操作しながらしきりにリロードをしていると、S君が背後から声をかけてきた。

「テリードリームさん、さっき新規案件が三件来てましたよ」


 さ、三件だと……。


 現状を例えるならば、中国最大のダムである三峡ダムが決壊したに等しい。

 もはやアンコントローラブル。

 押し寄せてくる濁流は、下流の全てを飲み込むだけだ。


 当然のことながら担当者である筆者は高台の上に避難をして、その惨事を眺めることしかできない。

 所詮は、一介の名ばかり管理職。


「は、はははっ……」

 とはいえ、乾いた笑いが自然と漏れる。


 どうしようもない。

 どうしようもないのだよ。

 そんなことを思いながら、カクヨムを読みながら自らを慰めていると……


「随分とお困りのようだね」

「あ、あんたは……ヅラ市長!」



(つづく。むっちゃ寝落ちしてしまったのと、コロナワクチン2回目で体調崩してしまったので更新遅れました。すみません)

 

 

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