第42話 終戦 "BATTLE STATIONS"

■■まえがき■■

 今回のBGMは"POWER QUEST"の"BATTLE STATIONS"でお願いします!


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「ギィイィィヤアアアアーーーー!!!」

 僕の渾身のチェストプレスが極まった。


 ベアハッグのように完全にホールドしているため、ゴブリンキングは逃れることができない。

 僕は、クリンチ状態から両腕でキングの胴回りを抱き込むと、筋肉に力をこめて絞り込むように締めあげる!


 さらに、腰に力を入れて、僕はキングの身体を浮かした。

 キングを持ち上げてその体重までも載せて、ダメージを加えていくためだ。


 両手を破壊されたキングは、羽化された足を振り乱して逃れようとする。

 猛獣が暴れ狂っている。

 そんな反動が僕を襲った。


 だが、その程度で僕のホールドから逃れるわけがない。

 足を踏ん張ることができなくなったキングは、ダメージを分散させることもできず苦悶の表情を浮かべる。



 圧。

 僕は、全力で圧力をかけ続けた。





 ミシィ。


 ミシミシィ……ボキボキボキッ!!!

 

 とうとう、ゴブリンキングの背骨が圧し折れた。


「ギイァ……アアアアッ……!」

 ゴブリンキングは悲鳴を上げることすらできなくなり、抵抗する力も失ったのだろう。

 急に両腕が力なく垂れ下がって、微細に震えている。


 だが、僕はここでも手加減をしない。



 跳。

 廻。

  

 


「くたばれええええええええええええええええええ!」

 キングの背後に回ると、その片脇に頭を潜り込ませて、キングの腰を両腕で抱えた。

 さらに背筋を躍動させて跳躍し、一気にキングを持ち上げて背後に倒れこむようにして反り投げる。

 キングの後頭部が、ホールドしている僕の腕を中心にして綺麗な円を描いた。




 岩石落とし。



 僕は、抱えていたゴブリンキングの頭部を背後の地面に全力で突き刺したのだ。

 再び大地を揺るがす衝撃が響く。

 渾身のバックドロップが決まった。



 僕はしばらくバックドロップをした体勢のままで、ゴブリンキングの様子を窺った。

 いままでも予測のつかない反撃を幾度となくしてきたから。


 だが、両腕を破壊されて受け身をとることもできなかったキングは、全力で叩きつけられてそのまま微細に震えるだけだった。


 死んではいないのだろうが……もはや立ち上がることはできないだろう。



 今度こそ終わったのだ。



 ホールドを解いて立ちあがると、仰向けのゴブリンキングを視界から外すことないように注意をしながら見下ろす。

 失血と疲労のあまり気を失いそうになるが、まだ倒れるわけにはいかない。


 ゴブリンキングはうつろな目で僕を見返してきた。

 まだ気を失っていないとは……大したものだ。


「強かったぞ……」

「……」

 僕の賞賛に対して、無言のまま、キングは自らの懐を探ろうとする。

 破壊された上に震えている手ではうまくつかめなかったのだろう。


 キングは、"GBC47""RANKING 1"と刻印されたメダルが転がってきた。

 僕はそれを拾うと、キングに語りかける。


「もし僕の命令に従うというのなら、お前を見逃してやってもいい」

「……従ウ。強者コソガ正義ダ……」

「それならば……!」


 僕は、いままでに下してきたメダル持ちのゴブリン達に出した命令と同じ内容を提示する。


「イヤ……ソレハ流石ニ……ダガ、ヤムヲエナイカ……」

 難色を示しながらも、ゴブリンキングは最後に理解を示した。


 序列を優先することに重きを置くのがゴブリンだ。

 どのような納得のできない命令であったとしても、上位者から下された以上、従わざるをえないのだ。

 モンスターといえど、組織人の悲哀を背負っている。

 なんて悲しい定めなんだろうか。


 僕はゴブリンキングが同意したのを確認すると、その負傷を全て【ヒール】で回復する。

 かなりのMPを消費した後、ゴブリンキングは完全回復を果たした。


 何事もなかったかのように五体満足で立ち上がると、僕の前で跪き首を垂れる。

「コレカラハゴ命令ニ従イマス」

「よろしく頼む」

 僕がそういうと、ゴブリンキングは立ち上がり、いずこかへと姿を消した。

 

 きっと、僕の命令をかなえるために動きだしたのだろう。


 そんなことを思いながら、僕はレッドドラゴンで作ったバランスボールに腰かけながら、彼が姿を消した方向を眺めたのだった。


 


 





■■あとがき■■

2021.07.15


「テリードリームさん、最近ずっとニコニコしていますね」

 出社早々、筆者は同僚に声をかけられた。


「ええ。最近は、そのなんというか。リアルで魔界村をやっているような状況でしてね。一撃を喰らうと一瞬にして鎧まで剝ぎ取られるというか……。おかげさまで、日々とてもスリリングな時間を過ごさせていただいています」

 どこかうつろな目をしながら返事をする筆者に対して、同僚は哀れむような表情をしたあと頭を下げて無言で去っていった。


 さて、今日はどんな出来事が待っていることやら……。

 筆者は自販機で買ったばかりの缶コーヒーで頭を冷やしながら、PCを立ち上げてメールをチェックする。


 うわっ。

 部付部長からメールが来ている……。

 正直勘弁してほしいです。もうらめえ。


 そんなことを思いながら、筆者は、今日一日分の勇気を振り絞ってメールを開く。


『テリードリームさんの先日の対話記録をうけて、仕事のできない名ばかり管理職さんに指導を行いました。指導記録は次のとおりです』


 うわっ……。

 この指導記録、文字数多すぎ……。

 一万文字超えてるだろ……。


 こんな長文のエピソード……筆者はカクヨムで書いたことないです。

 この人、筆者より絶対暇やわ……。アンタが立て直してくれたら、こんなに筆者が頑張る必要ないんですよ?

 ああ、また髪の毛が複数本……抜毛アンインストールしてしまう……。


 そんなこんなで始まった、その日。

 筆者は派遣BBA二号・派遣BBA三号・長老・仕事のできない名ばかり管理職さんと対話を済ませると、レイアウト変更と担務見直しの案を固めて、部付部長に伺おうと準備を進めていたが……


「テリードリームさん、ぶ厚い茶封筒が三つも……!」

「な、なんだと!!」


 新規案件が三つも来てしまい、筆者は更なる抜毛アンインストールに見舞われてしまうのだった。




 つづく。

 (※ AmazonMusicで「脳筋白魔導士(公開用)」プレイリストを公開してみました。いままでBGMにした楽曲をまとめていますので、もし興味があればご確認ください)

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