第33話 決着 "Fire & Forgive"

■■まえがき■■

 今回のBGMは"Powerwolf"の"Fire & Forgive"でお願いします!


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 僕の顎先が強烈に撃ち抜かれた。



 まるで首の根元を支点とする振り子のように。

 僕の顔面が首先から強烈に振られた。


 視界がグルリと回転するような錯覚に、僕は陥った。


 視界が揺れたせいだろうか。

 急激なめまいに襲われ、僕は片膝をつく。


「な、なんで……?」


「顎先ヲ叩ケバ脳ガユレル」

 膝をついた僕を見下ろすようにして、ゴブリンジェネラルが言う。

「脳震盪ダ。イイ勉強ニナッタダロ?」

 僕を見下ろすようにして、ジェネラルが笑いながら言った。



「サァ、コレデオ別レダ」


 ゴブリンジェネラルの右拳が、ギロチンのように僕の後頭部に打ち下ろされた。






 だが。



 掴。




 その右手首は、僕の右手によって受け止められた。




「ナ、ナンデ……!」

 異常な握力によって尺骨を折られそうになりながら、ジェネラルはあえぐ。


 掴んだ掌に、さらに力を込めて僕は捩じ上げる。



「おいおい」

 僕は学習をしないやつは嫌いだ。

「さっき言っただろ」




「僕の脳味噌は……いや、脳筋は」




「筋肉でできていると言ったはずだ! この程度で脳震盪をするようなヤワな筋トレはしていない!」




「ナ、ナンダト……!!!」

 驚愕しながらも、ジェネラルは続ける。

「デ、デハ……ナゼ膝ヲツイタ?!」




「それはな……」





「視界が揺れて、ちょっと気持ち悪くなっただけだ!!」

「バ、馬鹿ナ……!」


 ゴブリンジェネラルが動揺することなど気にせず、僕は握力をこれでもかと強める。



 ミシィミシィ……



 ジェネラルの表情に苦悶が浮かぶ。

「ヤ、止メロ……!!」




 バキッ!


「ギイイィアアアアーーーー!!!」

 僕の握力によって、ジェネラルの尺骨は呆気なく圧し折られた。



 前のめりになるジェネラルとは対照的に、僕は立ち上がって再び構える。


 だが、今度はさっきジェネラルがとっていたL字の構えだ。

 左肘の先に右手を置くように。

 さらに、僕は左腕を縦にして脇をしめる一方で、右腕を下に下げてみる。

 


「こ、これは……!」

 左手で顎先をガードしながら、ボディへの守りを固めることができる。

 加えて、右手を下げることで敵の拳を捌けるようになるけでなく……、パンチを放つ上での自由度が大きく増した。


「試しに打ってみるか……!」

 さらに、僕はジェネラルを真似て、左足先と右足先で線を作る。


 これは……。

 なんて、体重移動をしやすいスタンスなんだ!

 これならいける!




 踏。

 遮。

 



 僕は、一気に左足を踏み込んで、腰と肩を回転させながら右拳を放った。

 ジェネラルはよろめきながら両腕を前に出し、僕の拳を防ごうとする。



「くらえ! アームカール!」

 僕の全身の筋肉をつかったパンチが、初めて放たれた。



  

 突。



 僕が放ったアッパー気味の右ボディを、ジェネラルは到底防ぐことはできなかった。

 僕の右拳が、ジェネラルの腹部に突き刺さった。


「ゲフッ!」

 ジェネラルの身体が浮き上がる。

 僕は踏み込んだ左足に更に全体重を乗せ、右足首で床を蹴って拳に威力を載せる。


 ジェネラルの体重などものともせず、そのまま僕の拳は天を衝くかのようにうなり、ジェネラルを上空にはね上げる。


「ゴブゥ……」

 天井まで突き上げられたジェネラルは、天井にぶつかった後、床に叩きつけられるとうつ伏せになったままになる。

 あまりのダメージに身動きが取れなくなったのだろう。



「ツ、強イ……」

 ジェネラルが呻いた。


「さぁ、これで今度こそお別れだな」

 とどめをさそうとして、僕は歩み寄る。


 そんな僕の歩みを止めようと、ジェネラルは身体を起こしながら言葉を発した。


「ス、スマナイ……! ゴブ達ガ悪カッタ! ドウカ殺サナイデクレ!」


 命乞い。

 まさか、ここまで戦っておきながら、命乞いだと?!


「どこまでも人を舐めたやつだ……。散々、殺戮や凌辱をしておきながら……!」

 生き汚い。

 そのあまりの醜さに、僕は殺意を掻き立てられる。

 

 コイツが将来、クロエに害をなさないとも限らない。

 絶対に許さない。死ね。


 殺意を露わにする僕に対して、ゴブリンジェネラルは"何か"を投げてきた。

 咄嗟のことだったので、身を守るようにして反射的に手をだしてしまう。


 僕は、その"何か"を掌で受け止めていた。


「これは……?」

「ゴブ達ノ強者ヲ決メル証ダ。コレヲ渡シタカラニハ、ドンナ命令デアッテモ従オウ」

 

 これは……コイン?

 いや、メダルか。


 ちょうど掌に収まるサイズのメダル。

 そこには、装飾とともに"GBC47"と刻印がされていた。


 思わずメダルを裏面に返してみると、そこには"RANKING 7"の文字が……。


「これは一体?」

「ドンナ命令デモ従オウ。序列ガ上ノモノニハ従ウノガシキタリダカラナ」

 さきほどまでの戦意など微塵も見せずに、ジェネラルは両手をあげる。

 それどころか、媚びへつらうような感すらある。




 やはり殺すか……。

 そう思い、拳を振り上げ……




 いや、ちょっと待て。

 "どんな命令でも従う"だと?!


「どんな命令でも従うとは本当か?」

 僕は真意を問う。

 ここで欺かれてはたまったものではない。


「勿論ダ。オ前ノ方ガ強クテ序列ガ上ダカラナ。従ワナケレバ、殺サレルダケダ」


 なるほど……。

 そういうものなのか。

 ゴブリンの世界にも、彼らなりのルールや矜持が存在するのかもしれない。



 だから……



 僕は思いついた命令をした。

 エロゲーのクソ設定に準拠するクソ世界も、少しはマシになるはずだから。



「ソウカ……。ヤムヲエナイ。序列ガ上ノ者カラノ命トナレバ従ワザルヲエナイ。何事モ順番ダカラナ」

 困惑しながらもジェネラルは頷いた。


 

 

■■あとがき■■

2021.06.10


Gobrin Boxing Council = GBC

ちなみに、登場してきたジェネラルは序列7位であることからもお察しのとおり、神セブンの内の一人です。




すまん……。すまん。

エアマスタ●の深道ランキ●グみたいに、「ランキング」って言葉を出してみたかっただけなんや!




あっ、カブトムシですが、無事オス3匹・メス3匹が出そろいました。

オス2匹・メス1匹はどこぞに引き取ってもらって、あとは……。


繁殖セットでも組んで、前回に引き続き幼虫50匹ぐらいに増やして遊ぼうかとwwwwwww

またも、奥さんからは「こんなのゴキブリと一緒じゃない! 信じられない! 何考えてるの!」と罵詈雑言を浴びせられる一年になりそうですwwww

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