第32話 顎 "Through the Fire and Flames"

■■まえがき■■

 今回のBGMは"DragonForce"の"Through the Fire and Flames"でお願いします!


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「オ、オ前……。順番ヲ守ラナイダケデナク、ドレダケ非常識ナンダ……」

 呆気にとられたゴブリンジェネラルが呟く。



「おいおい。ゴブリンの喧嘩は顎でするのか? ふざけるのもいい加減にしろよ」

 ゴブリンジェネラルを見据えて、【ヒール】で回復した僕は構えをとった。


 僕はジェネラルを真似して、Ⅱの字を描くように腕を地面とまっすぐに構えると、肘から先を直角に曲げる。


「そうか……。これは……なるほど!」

 この構えの特長が分かってきた。

 脇を締めることで、ボディへのパンチを防ぐ。

 さらには、腕を縦にしているから脇腹へのガードが深くなる。


 加えて……この構えの良いところは、それだけではない。

 



 突。



「ゴブゥ!」

 右足首で床をとらえて一気に踏み込んだ、僕の全体重を載せた矢のような突き。

 ジェネラルは僕の拳を避けることができず、身体を折り曲げる。


 この構えは……。

 ハの字に構えるのと違って、肩回りと腕が重なって相手に見えるため、拳の軌道が読みにくくなるという利点があるのだ。

 今までの僕の大振りな攻撃とは違い、軌道の読みづらいコンパクトに繰り出された攻撃。

 それを、ジェネラルは見切ることができなかったのだ。



「ははっ。これは良いね!」

 僕は思わず笑みをこぼす。

 僕の攻撃がジェネラルに通じた。

 この戦いが始まってから、初めてのことだった。

 

「オ、オ前……。ヨクモヤッテクレタナ……!」

 そう零すと、ジェネラルは左手のガードはそのままに、右腕を横に倒した。

 地に沿わせるように腕を畳んで、顎を引いた状態で目線を上げる。

 L字を作るような構えといえばいいのかもしれない。


 今までとは一線を画する雰囲気に、僕はガードをする腕に力を込める。


 ジェネラルは、左足のつま先と右足のかかとで直線を結ぶスタンスをとる。

 リズムをとり始めて、歩法を流そうとし……


「一体何を……ッ?!」


 



 叩。




 突如として、僕の構える両腕に衝撃が襲った。


 次々と、ジェネラルの右手からジャブが放たれたのだ。


 はたくかのように繰り出される右拳。

 その関節を活かして柔らかに伸びる拳が、僕のガードを削ってくる。



「な、なんだと……!!!」

 僕は前傾姿勢をとり、腕と肩の筋肉で懸命にその拳を防ぐ。


 だが、僕が守勢にまわると、そこを好機ととらえたのだろう。

 距離を保ったまま、ジェネラルから矢のような拳が次々と放たれる!


 ガードを抜けてくる衝撃に、幾度となく【ヒール】をするが……。

 このままではジリ貧だ!


「く、くそ……! こうなったら!」


 ジェネラルの右拳を弾くようにして、僕は右拳をカウンター気味に繰り出した。


 だが、やつは僕の行動など読んでいた。



 閃。



 ガードだけをしている。

 そう僕が思い込んでいたジェネラルの左拳が、僕の顎先をとらえた。


 こちらのカウンターを読んで……。

 いや、カウンターを試みるようにストレスを与え続けて……。


 足を巧みに運んでから放たれた、渾身の左ストレート。



 ジェネラルは自らの左腕の角度を変え、虎視眈々とチャンスを狙っていたのだ。

 僕と駆け引きをしながら……。




 僕は顎先を撃ち抜かれて、そのことを思い知ったのだった。






■■あとがき■■

2021.06.06


新規案件2件到着いたしまして……。

「先週届いた2件すら納期オーバー(未着手)なのに、この2件……一体どうすれば……?」という状況なので、更新頻度落ちると思います。

あらかじめ、お詫び申し上げます。


あ、あと、カブトムシの雌2匹目が羽化しました。

それに伴い、毎日交尾させて遊んでますwwwww

一年のうちの一番の楽しみは、カブトムシの交尾を観ることwwwwww

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