第31話 真なる脳筋


 ジェネラルの手によって、僕の頭蓋骨が破壊された。

 乾いた板の割れるような音が聞こえた。


 音と同時に、僕の側頭部に痛みが走る。


 


「所詮ハ素人ダッタナ」

 僕の頭骨を砕いたジェネラルは、続ける。

「サァ、コレデトドメダ」

 もはや構えすら解き、ジェネラルはゆったりとした動作から、大振りの右ストレートを放った。





 だが。




 阻。





 僕は、その舐め切ったヌルい拳を左掌で止める。



「ナ、ナゼ、死ンデイナイ……?」

 ゴブリンジェネラルが、依然として立ったままでいる僕に対して、まるで幽霊でも見るかのように問いかけてきた。





「頭蓋骨を砕いたぐらいで、僕をどうにかできると思うな!」

 僕は怒鳴りつける。




「なぜなら……」




「僕の脳ミソは……筋肉で出来ているからな!!!!」





「ナッ、ナンダトッ!」

 ジェネラルが驚愕する。



 そう。

 "センター山まっする君"師匠と"訓練所"での熱い日々を一年も過ごした結果……、僕の全身の皮下組織は筋肉に生まれ替わってしまったのだッ!

 

 残念ながら……骨格は流石にどうにもならなかったがッ……!


 "訓練所"で繰り広げた、圧倒的なまでの筋トレの日々。


 日に30時間の鍛錬という矛盾のみを条件に……骨以外の皮下組織は全て……"筋トレで鍛え上げられた筋肉"に生まれ変わっているのだッ!!!!


 頭蓋骨ごときを破られたところで、その程度のヤワな衝撃なんて……筋肉が優しく受け止めてくれるので何の問題もないッ!



「バ、馬鹿ナッ! ソンナ馬鹿ゲタ話ガアッテタマルカ!」

「申し訳ないが、これが現実だ」


 僕はダメ押しとばかりに【ヒール】をして、砕かれた頭骨が癒される様を見せつける。



「オ、オ前……。順番ヲ守ラナイダケデナク、ドレダケ非常識ナンダ……」


 ゴブリンジェネラルのつぶやきが、建物の中に響いた。




 

 


■■あとがき■■

2021.06.04

やっとタイトルの「脳筋白魔導士」を回収。

長かった……。


今回、短くてすみません。

あと、順番は大事です!

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