第29話 心を燃やす "Burning Heart"

■■まえがき■■

 今回のBGMは"Iron Savior"の"Burning Heart"でお願いします!


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 この集落だけは……絶対に根絶やしにしなければならない。



 そう心に誓った僕が見やると、ノーマルゴブリン十数体を率いるゴブリンメイジの姿があった。

 集落から、こちらに足早に向かってきている。



 僕は、そのゴブリンメイジに狙いを定めた。

 周囲をノーマルゴブリンが囲って守っているが、そんなもの知ったことか。



 僕は、斜め右前方にダッシュをした。

 正面に捉えるゴブリン隊の横を抜けるようとしている、そう印象づけながら。


 すると、ノーマルゴブリン達が慌てて僕の進路に体向を変えようとした。

 隊列が崩れるのを、僕は横目に捉えて。



 跳。



 突如、直角を描くようにして進路を変えて、勢いをつけて低くジャンプをした。


「フロントレッグランジ」

 ノーマルゴブリンたちが隊列を立て直す前に、僕の右脚が繰り出された。


「ギィギィイ」

 数体のゴブリンが、肉塊と成り果てて蹴り飛ばされた。

 

 そして、僕は狙いどおりゴブリンメイジの前に着地する。

 瞬時にしてガードを抜かれたゴブリンメイジが、驚愕を顔に浮かべる。


「こんばんは。そして、死ね」

 着地とほぼ同時にアームカールを繰り出し、僕はゴブリンメイジの頭骨を砕く。

 パキュッという音とともに、板を折ったような手ごたえを感じた。


 ほぼ即死のはずだが、念には念を入れて詠唱されることのないよう手刀を差しこんで喉元を潰す。



「さて、次はお前たちだ」

 僕は周囲のノーマルゴブリンに向き直る。


 僕の悪鬼のような形相に怖気づいたのだろうか。

「ギィィー!!」

 いずれのゴブリンも悲鳴をあげながら背を向けて逃げだそうとする。

 隊を率いるゴブリンメイジが倒れたのだから、それも当然かもしれない。



 だが。

 僕はダッシュで距離を詰めて、次々と背後から殴り殺していく。


 ゴブリンだけは絶対に逃がしてはならない。

 視界に入ったゴブリンは全て殺す。

 それが僕のポリシーだ。

 


 周囲に散らばっていた死骸を収納し終えると、僕はゴブリンの集落を見据えた。

「申し訳ないけど、滅んでもらうからね」

 そう言って、僕は集落に向かって歩き出したのだった。



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 ゴブリンの集落に向かう途中、ゴブリンメイジ3体と、それらを守るようにして隊を為すノーマルゴブリン数十体と会敵した。



 これほどなのか。

 これほどの戦力を抱える集落だったのか。

 投入してくる戦力の規模に戦慄を覚えてしまう。


 もし、このゴブリン集団が人里を襲っていたら……。

 とてつもない不幸なことへと進展していたことだろう。


 

 ゴブリンを蹴散らして、時には【フレイム】に身を焼かれながら。

 僕は、全てのゴブリンを撲殺した。



 ゴブリンアーチャーがいたら、ゴブリンたちの戦術にバリエーションがうまれて、ここまでスムーズに狩れなかっただろうけど……。

 そう言った意味では、まだ発展途上だったので助かった。

 

 あとは、職業【白魔導士】と職業【筋肉】のかみ合わせの良さを実感した。

 圧倒的なATKもそうだが、ゴブリンメイジやノーマルゴブリンの攻撃を物ともしないMDEFとHPには恐れ入った。


 やはり【筋肉】は正義なのかもしれない。


 これなら職業持ちのゴブリンが相手でも、恐れるに足らずといったところだろう。

 僕は、ゴブリンの集落に向かって歩みを進めた。


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 僕が足を踏み入れると、ゴブリンの集落は静まりかえっていた。


 村の入口あたりに位置する広場に立って、周囲を見回しながら聞き耳を立てるが物音がしない。

 普段だったら、ゴブリンの集落には叫声や嬌声が響いているというのに。



「狩り尽くしたということか……?」


 三十棟ほどの小屋が、狭い範囲に無秩序に乱立していた。


 これほどの規模の小屋が存在しているとは……。

 巣分けする直前ぐらいの規模だ。

 今日狩ることができて、本当に良かった。

 

 とりあえず、手近にあった小屋を覗き見ると、ロープに縛られた女性がいた。

 既にゴブリンに犯され尽くして、正気を失ってただ呻くだけの存在に成り果てていた。

 

「むごいな……。だが掬わないと……」

 僕は白魔法で治療をして、彼女を抱えて広場に横たえる。


 小屋のなかにいるよりは、広場みたいな開けたところに置いていた方がいい。

 だいたいの雑魚ゴブリンは討伐したし、状況を把握できるところにいてくれた方がマシだ。


 そんなことを思いながら、次々ともぬけの殻になった小屋から女性たちを救い出した。

 いずれの女性も前後不覚に陥っていたが、僕が白魔法で癒した後には穏やかな表情を浮かべて寝息を立て始めた。


 なかには、犯され尽くして事切れてしまっている女性もいた。

 そんな場合には……僕は手を合わせて、【サンクチュアリ】で邪気を祓って弔うことしかできなかった。


 自分の無力さを実感する。


 冥福を祈ることぐらいしかできないのが【白魔導士】だとしたら、そんな職業が存在する必要はあるのだろうか。

 上位互換みたいな職業ばかりだし……。


 思わず自問してしまうが、タナカの原作知識を信じて前を向くしかない。

 とてつもない修業の果てに、僕は必ず……。



「救えたのは二十五人か……」


 女性たちを集落入口の広場に彼女たちを休ませて、僕は村の一番奥にある大きな建物に向かった。


 どう見ても……。


 そこにボスがいる。

 僕の直感がそう告げていた。



 僕は、静寂に包まれた集落のなかを歩いた後に、建物に踏み入った。

 広間の奥には、一人の女性を見下ろしながら一匹のモンスターが立っていた。


 『ゴブリンジェネラル』

 その姿をみて、タナカの原作知識が僕にそう告げた。

 ゴブリン族のなかでも、中盤後期に現れるような強キャラだ!



 僕は、まさかこんなところでジェネラルに出くわすとも思わず、言葉も出なかった。

 ただ、立っていることしかできなかった。


 そんな僕に対して。





「順番待チダ……」

 そうジェネラルは言ったのだった。






■■あとがき■■

2021.06.01

カブトムシですが、さらに雄が2匹羽化しました~。

残りの蛹3個は、時期が遅いから雌っぽいですね。

楽しみ~♪

 


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