第28話 炎を越えて "Beyond the Fire"
■■まえがき■■
今回のBGMは"Dark Moor"の"Beyond The Fire"でお願いします!
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山地を渡り歩きながら、ゴブリンの集落を次から次に殲滅し、苗床になっていた女性たちを可能な限り救出する。
数か月ほど、そんな日々を送った。
まだノーマルゴブリンばかりなので経験値はそこまで高くない。
ただ、律義に整列して順番待ちしているところを後ろから襲撃しているので、抵抗されることがほとんど無い。
楽にキルスコアが伸びるので、経験値効率は悪くない。
錆びた剣などの手入れが行き届いていない装備品が手に入るし、回復薬や食料といった魔王軍の補給物資を鹵獲できる。金銭効率も悪くなさそうだ。
そのうち、王都ギルドに一山いくらで納品しよう。
ゴブリンなんてのはこの世界から徹底的に駆逐すべき存在なので、慈悲はミジンコほどもかけない。
徹底的に滅して、収奪するだけだ。
奴らが人間に対してやっているのと同じように。
まだ、有用な職業をもたない女性が捕まっているだけだから、この程度で済んでいるのだろうが……。
もし、遺伝的に優れた個体が輩出されるようになり、有用な職業をもつ女性が容易く攫われるようになってしまうと……、一気にゴブリンの勢力図が広がってしまうだろう。
それだけは絶対に阻止しなければならない。
そんなことを思いながら、今日もルーチンワークのごとく樹上に登り、ゴブリンの集落の様子を窺った。
息をひそめながら夜目を効かせて、今回の着地点を見定めようとしたときだった。
トスッ。
僕の肩に矢が刺さった。
肩に走る痛みとともに。
とうとうきたか。
そんな考えが頭をよぎった。
ノーマルではなく、遺伝的に強化されたゴブリンが出てきたのだ。
僕は樹上から直下に飛び降りると、ゴブリンの集落付近からと思われる射線を樹でさえぎる。
そして、矢を抜いて【ヒール】をしながら藪のなかを移動した。
そんな僕の行動を尻目に、ゴブリンの集落には金属音が鳴り響き、集落全体が騒然とした雰囲気に包まれた。
バレてしまったか……。
だが。
「ここでは退けないね」
この集落には高品質な苗床が捕まっている可能性が高い。
そうなると……この集落からゴブリンや苗床を逃がせば……、遺伝的に優れたゴブリンが広範囲に広がってしまうこともありうる……。
この程度ならば想定内だ。
続けよう。
僕は移動をしながら、徐々にゴブリンアーチャーとの距離を詰める。
矢継ぎ早に同じ場所から矢が飛んでくる。
僕は一息つくこともできない。
だが……分かってきたのは、どうやら移動して弓をひくという知恵がないということだった。
「よかった。頭が悪くて助かったよ」
顔を両腕で守りながら、ゴブリンアーチャーまでの最短距離を走る。
矢が次々と腕や足に当たるが、気にしない。筋肉に力を込めることで、この程度の威力なら弾き返せるのだから。
それに【リジェネ】をしているので、致命傷を受けなければ【ヒール】をする必要すらないといったところか。
僕は一気に距離を詰めて、敵の近くで跳躍をした。
「フロントレッグランジ」
僕の右脚がゴブリンアーチャーの顔面を粉砕し、脳漿が飛び散った。
着地して身構えると、集落からゴブリンが押し寄せてきているのが分かった。
「他にも来るのか……」
集落から複数のゴブリンが出張ってきている。
「いたしかたない」
周囲に他に手頃なものがなかったから、僕はゴブリンアーチャーの死骸を盾のように構える。
他にもゴブリンアーチャーがいた場合に、この死骸で矢を防げば、一気に組みしやすくなる。
そんな考えだった。
だが。
突如として盾にしていた死骸が燃え上がった。
「中級魔法が使えるゴブリンメイジがいるのか?!」
黒魔法【フレイム】。
初級の【ファイア】を強化しただけあって、単体相手にかなりの威力を誇る黒魔法だ。
当然、消費MPも大きい。
その消費MPに耐えれるだけのゴブリンメイジがいるということに戦慄した。
僕が思っていたよりも、このゴブリンの集落は危険な存在なのかもしれない。
一瞬にして、ゴブリンアーチャーの死骸は灰となり崩れた。
それを見やりながら、僕は決意した。
この集落だけは……絶対に根絶やしにしなければならない、と。
■■あとがき■■
2021.05.29
更新頻度が上がるといったが、あれは嘘だ!
新規案件が2件来てしまい……。すみません。
最近の良かったことは、カブトムシの雄が1匹羽化したことぐらい。
あと5匹ほど羽化してくる予定! たのしみ~♪
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