第27話 ゴブリン狩り
王都ギルドに連行されたり、ヴェガ商会で買い物したりと、色々あって狩りに集中できていなかった。
けれど、それらも区切りがついたので、そろそろ狩りを再開しようと思う。
クロエと僕が十五歳になるのはだいぶ先だ。
つい先日、十歳になったばかりだしね。
だが、時間が無限にあるわけでもないわけで……。
レベル上げができるうちに上げておく必要があるわけです……。
ソウボ山の山頂から見渡すと、山間部にポツポツと開けた場所が見える。
遠目ながらも、焚火で周りが明るくなっていると視認できた。
筋トレのおかげで夜目と遠目が利くようになった僕は、集落のボロい柵や、ボロい小屋もバッチリ捉えることができる。
これは……。
「どう見ても、ゴブリンの集落だね」
王国内にもっとも広く生息し、人類に仇なすモンスターであるゴブリン。
僕はソウボ山攻略の次に、ゴブリンを駆逐することにした。
山間部に見えた一つの集落に狙いを定めた僕は、全力で山を駆け下りる。
さて……。
ゴブリン退治の始まりだ。
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ゴブリンごときが、人類を脅かすような存在なのだろうか。
もしそう問われたら、僕は確実に「はい」と言うだろう。
色々と厄介なところのあるやつらだが……まずは"知恵"をもっていることだろう。
独自の言語体系で連絡をとりあうだけでなく、装備品を使いこなすことができる。
戦略を練って集団で人間を襲ってくるだけでなく、人間を殺して装備品を奪って使用してくるのだから性質が悪い。
次は、その異常なまでの"繁殖力"だろうか。
人間にとどまらず、獣人やエルフまで……。
ほぼありとあらゆる種族を苗床にすることができる。
しかも、一度に複数の個体を出産させるだけでなく、一週間ほどで成体になってしまうというから驚きだ。
ひとたび繁殖モードに入ってしまえば、ねずみ算式に増えてしまう……。
子供ほどの体格なのが救いだが……、遺伝的な背景により強化された個体が産まれる可能性があることも馬鹿にできない。
たとえば、人間の【魔術師】と交配した場合には一定確率でゴブリンメイジが産まれる……!
更には、こいつら実は……。
原作では、魔王軍の先兵にして補給部隊であることが明らかになっている。
人間の勢力を徐々に失わせるだけでなく、オーガやオークといった武力特化のモンスターが進軍しやすいように兵站を整えるという任務も背負っているのだ。
救えないな。
クロエをこいつらから守るためにも。
こんなやつらを蔓延らせてはダメだ。
集落にそれなりの数で生活しているから、一匹一匹の経験値は少なくてもレベリングには向いているし。
徹底的に狩りつくそう。
そんなことを考えていたら、ゴブリンの集落の付近に到着した。
ゴブリン村の木柵から少し離れた樹上。
そこから全身の筋肉を使って跳躍すると、集落のなかに着地する。
もちろん無音だ。
なんせ、足先から太ももまでの筋肉を駆使して衝撃を和らげているからね。
難なくゴブリンの集落に侵入した僕は、ボロい小屋の陰にかくれながら周囲を窺う。
雑に作られた小屋が十棟ほどだろうか。
そのいずれからも嬌声が響いている。
終わってるね。
何の遠慮もなく殺せそうだ。
しかし、この数の小屋で絶賛繁殖中か……。
規模としては決して馬鹿にできない。
これ以上村の規模が大きくなって、巣別れを繰り返していけば、きっと将来的にとてつもない災禍へと発展するだろう。
いずれの小屋の中からも、人間の女性があげているであろう嬌声が響いてくる。
きっと、ずっと……犯され続けておかしくなってしまったのだろう。
ゴブリンの精液は、交配相手に麻薬に等しい快楽を与えるだけでなく催淫性も高い。
原作の設定では、異なる種族の雌と交配するためにそういう進化をしたとか……。
やっぱり終わってるね。
この世界って、ホンマにクソ。
ゴブリンの精液を大量に浴びせられて、声の主は正気を保てなくなっているのかもしれない。
そう伺わせる嬌声を耳にしながら手近な小屋の入口から中を覗くと……、十匹ほどのゴブリンが列をなして、順繰りに人間の女性を犯していた。
それを目にした瞬間に、僕は怒りのあまり我を失いそうになってしまった。
その姿が、"タナカ"の記憶にあるCGギャラリーのクロエに重なってしまったから……。
ただ、ここで逆上するのは得策ではない。
僕は感情を何とかして抑えると、静かに最後尾のゴブリンの背後をとった。
そして、ピンチグリップで最後尾のゴブリンの気管を瞬時に潰すと、気取られる前に次々と殺す。
こいつらだけは絶対に生かしてはならない。
僕の決意に気おされたのだろうか。
たまに振り返ったゴブリンもいたが、ろくに悲鳴をあげることもできずに、僕に息の根を止められていく。
野に咲く花を手折るかのごとく、僕は次々とゴブリンの首を潰した。
最後に、女性にのしかかって行為に夢中になっていたゴブリンを殺すと、即座に女性の口を手で塞いだ。
突如として止んだ快楽。
しばらくして異変を察知して目を開けた女性は僕を見て、目を見開いた。
「静かに。助けに来たんだ」
そう僕は言うと、白魔法【ヒール】【キュア】【リフレッシュ】【プレグナンシー・インヒビション】を立て続けに女性に使う。
白魔法特有の癒しの光に包まれた女性は、冷静になって落ち着きを取り戻した。
だが、僕は口をふさぐ手をそのままにして続ける。
「これからこの集落のゴブリンを全て殲滅する。その間、静かにしていてほしい。他の女性も救えるものなら救いたい」
僕がそういうと、女性は顔を青くしながら頷いてくれた。
僕の言っていることを、なんとか理解してもらえた。
女性の眼差しに理性がともっていることを確認すると、僕は手を外して、彼女を元気づける。
「もう大丈夫だから。少しだけ待っていてほしい」
そう言って、僕は一つ目の小屋を後にしたのだった。
その後、全ての小屋でゴブリンを殺した。
僕は、ゴブリンを96体討伐し、8人の女性の救出に成功したのだった。
■■あとがき■■
2021.05.25
なんとか事故も無く、業務繁忙の山を越えました。
しばらく、新規案件が来なければいいなぁ。
やっと在宅ワークを入れる余裕もでてきたので、更新頻度を上げていきたいと思います。
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