第22話 朝刊
「朝刊でーす」
僕が庭先で寝転がっていると、新聞配達員が郵便受けに朝刊を入れていった。
その遠ざかる足音が、僕の脳を少しづつ覚ましてくる。
「うっ……そうか朝か。昨日は限界まで戦って、辛くも勝てたけど……。まさかデスホーネットクイーンに進化してるなんて」
土の上で寝てたせいで固まってしまった身体をほぐしながら、僕は身を起こす。
「節々が痛むけど、回復すれば問題なさそうだな」
自然回復していたMPを使って【ヒール】で回復をすると、僕は郵便受けから朝刊を取り出す。
寝ぼけた頭でなにげなく最終ページの小説欄に目をやり、思わず、僕は刮目してしまった。
―― ひげを生やす。そして男子高生を拾う。 ――
「そんなものを拾って一体何がしたいっていうんだ!」
屋外にも関わらず、連載小説のタイトルに対して僕は全力でツッコミを入れてしまった。
「うるさい!」
「ごめんよー! 母さん!」
母さんに叱られた僕は少し冷静になり、再び紙面に目を戻す。
「いったい、どんな小説なんだ……?」
どうやら、コールドジムに通うマッチョで生え際が危なくなった三十代のおじさんが、深夜にジムから帰ろうとしたら、電柱の灯りの下でうずくまる男子高校生を見つけてしまい……懸想をしてお持ち帰りしてしまうという物語のようだ。
「げ、下劣すぎる……!」
僕は朝刊を地面に投げ捨てようと……
だが、なぜか手から離れなかった。
ゴクリ。
僕の生唾を飲みこむ音が響いた。
「何を読んでるの?」
「う、うわあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
背後から突如として現れたクロエの目に留まらないように、瞬時にして小説欄だけを破り捨てる。
そんな僕に対して、クロエはキョトンとした表情を浮かべる。
良かった……。
どんな記事を読んでいたのかバレてなさそうだ……!
危うく道を踏み外すところだったが、クロエのおかげで回避することができた……!
「ありがとう! ありがとう!」
タグの全変更を未然に防いでくれたクロエに、僕は全力で感謝する。
「??? よくわからないけど……。それより村の入口で、焼き菓子を配っていたからさ。一緒に食べよう」
そういうと、彼女は僕にクッキーのようなものを渡してくる。
村の入口で配っていた焼き菓子なのだろう。
僕は、すぐにそれを口に頬張る。
「なんでも、ワンジョー平原の開拓が成功したから、村に振る舞ってるんだってさ」
「そういえば、この村からも何十人も協力していたね」
「そうそう。ほら、そこの記事にも書いてるよね」
クロエが朝刊の一面を指さす。
―― ワンジョー平原の開拓により、穀物生産高が大幅増 ――
―― ソウボ山のモンスターが急減。新たな交易ルートの開発に着手 ――
―― 身元判明死体の重要参考人、捜索打ち切り。憲兵団からセバスティアン家に捜索情報を引き継ぎか ――
「穀物生産高が大幅増って、何気にすごくない?」
「この村の近くだから、これからも色々とお菓子が振舞われるかもしれないんだって。楽しみだよね」
そういうと、彼女はこの上ない笑顔を僕に向けてくれた。
食べることを心底楽しみにしている屈託のない笑顔。
そっか。
この笑顔を守るために、僕は頑張らないといけないんだ。
自分が守ろうとするものの価値を再認識した僕は、彼女との会話を楽しみながら、頭のなかで次の攻略に向けての検討を始めた。
『靴王だな』
装備するだけで、一戦闘において死亡を一度だけ阻止することのできるスキル【ガッツ】を可能とする靴。
僕は、次に入手すべきチートアイテムへの狙いを定めたのだった。
■■あとがき■■
2021.05.08
すいません。
思いついた小ネタを披露せずにはいられませんでした。
短編で公開したくてしょうがないんですけど、公開したらやっぱヤバいっすかね?
垢BANだけは避けたいwwwwww
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