第13話 グロテスク

――レベルが2に上がりました――



 レベルが上がった。

「ステータスオープン」

 僕は即座にステータスを確認する。



名 前:ワイト

職 業:【白魔導士】lv99、【筋肉】lv99

レベル: 2

H P : 2(+40)

M P :20(+ 2)

 力 : 2(+40)

知 力:20(+ 2)

操 作:16(+20)

 運 :10(+ 2)



 つよっ!


 職業が【白魔導士】だけだったらレベルが2になっても、HPはたったの2なのに!

 それが【筋肉】という職業が加わったために、ありえないぐらい強くなっている。

 HPなんて、【白魔導士】のレベル42相当。

 

 これは……。

 防具(装飾品を除く)にタンクトップとショートパンツしか装備できない"制約"や、いまのところ装備できる武器が存在しない"制約"を考慮しても……。


 

 いけるんじゃないか?

 これって、いけちゃうんじゃないですか??!!


 

 そう調子に乗った矢先。




「ぐふっ!」

 

 僕の腹に一角兎のツノが突き刺さった!


 またか!

 油断するとすぐに攻撃してくるのね!



 腹部に走る激痛によろめきながらも、一角兎を捕まえようと手を伸ばす。


 だが。


 一角兎はスルリと僕の掌から逃れると、後方に跳躍した。

 着地し終えると、再び僕にツノを突き刺そうと隙を伺う。


 夥しい出血をほどばしらせる傷穴を【ヒール】で塞ぐと、フロントリラックス(※1)で構えて、一角兎にプレッシャーをかける。


 僕の恵体から発せられる圧に、一角兎は後ずさりながらタイミングを探る。

 奴は髭をひくつかせながら……僕は胸筋をさりげなく上下させながら……しばしの時が過ぎた。




 刹那。



 一角兎がツノを再び僕に突き刺そうと跳躍した。




「フロントレッグランジ」



 僕は表48手……じゃなかった……表48種目のワークアウトのうちの一つを繰り出し、右脚を大きく前に踏み出した。



 飛びかかってきた一角兎の頭部を、僕の右脛がとらえた。

 ボールを芯で蹴ったときのように、衝撃が抜けた。



 グチャッ。



 嫌な音をたてて頭部が鮮血とともに飛び散り、近くの樹木に一角兎の身体がぶつかった。

 まるで巨大なトマトを壁に投げつけたときのようだった。

 あたり一面は血で覆われた。


 そして、僕の足には脳漿がまとわりつき、血なまぐさい異臭を強烈に発している。




「おぇっ……」

 そのあまりのグロテスクさに、僕は吐いた。

 








■■補足■■

※1

 フロントリラックスとは、ボディビルのポーズのうちの一つ。

 横に構えた両腕、固めた足と腹筋が特徴的な基本姿勢であり、主に挨拶などで使われる。


 



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