合流

 よし、追っ手とか追いかけて来てないな。人混みに紛れて逃走したのが功を奏した形だ。それにしても店の外やけに人がいたけど......頼むから大事になってくれるなよ......


 確か馬車はあの本通りから外れた場所にあのガドラが連れていたジュンティルと共にいるはずだ。


 ああ......マジで昨日のうちに馬車の待ち合わせの話し合いをしておいて本当によかった。一歩間違ってたら一行全滅とか行方不明者が出たままこの街を出発する羽目になってたかもしれないから。


 無事に馬車に到着したのはいいのだが、そこにいたのがジュンティルに話しかけている虚な目をしたマールの姿だった。


「夜しか寝れてないし1日3食しか食べれてな~い♪ 結局逃してさあバイバイ~♪ あの病気の特効肉も食べさせてあげれなかったし......」


 不協和音曲を呟いている。まるで特定の相手に呪いをかけようと勢いだ。


 昨日何があったのかは詳しくはわからないけどあの出来事で相当精神にきてるんだな。可哀想に......


 いやいやそんな同情を買ってる余裕は自分の中には無いだろ! そんなくだらないことにつっこんでる暇があったらさっさと馬車に乗ってこの街から脱出したい! なんか周辺が騒がしくなってきてるしさ。


「あっ! いつのまにか集まってたのですわね!」


 おっ! 都合が良いタイミングでよつば達とかち合った! これで気兼ねなく出発できるぜ。


「ん?」


 あの......? 今日はとくに雨降ってなかったのにどうして全身びしょ濡れの人がいるのだろうか? なんかほんのりお茶の匂いがするし。ガドラもなんか不幸な目にあった模様。


「......」


「ん?」


「皆さん集まりましたわね! それでは新たな場所に向かって出発しますわよ!」


 俺が馬車に乗り込んだこの瞬間マールがボソッと言った言葉を俺は聞き逃すことができなかった。


 まさか......察するにあのアリシア道中で戦ったオークと同じ思考みたいな。とにかく公には絶対公開できない感じの爆弾発言をしていた。


 エルフがMの道突っ走る......いやいや想像できないしたくない! いやだよ! だって今まで俺が抱いてきた想像上のエルフ像が粉々に崩れ去っちゃうもん! いやまだだ......まだ決まったわけじゃない。ここは俺1人の秘密として誰にも話さずしばらく静観しとこう。マールが本格的に表に表し出してきたらそれはそのときで。


「やっぱり今日何かあったのですの? 表情がいつにも増して暗いですし」


 今2つの意味で頭を抱えているのだがそれはいつ話すことができるのだろうか......

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る