何やら不穏な感じ
よつば視点
◇
妙な予感が背筋をつたり朝早くに起きてしまった。普段は遅くまで寝てる人なのにこれはもしかして新たなスタートに身体がウズウズしているのかもしれない。
それにしても朝早くに起きれたの自分でも驚いている。昨日は遅くまで手紙書いていたり荷物の整理等で夜更かししていたからむしろ新たな旅に出る前に遅刻してしまいそうだなって思ってたのに。
そうだ旅路に出るまで1時間くらいありますし今のうちに手紙を預けておこうかな。
朝はまだ早いのが要因なのかまだ大通りに人気は無い。手紙を届けにいく当路ですれ違った人は2人しか居なかったと言われたら過疎具合がわかるでしょう。
でもなんだが街の雰囲気が違うことに気がつきました。だってチラホラ歓迎ムードみたいなポスターが貼られているし。
なんだろう? 今日は庶民にとって特別な日なのかな? それなら皆さんに申し訳ないですわね。だって今日は私がこの街を去る悲劇的な日になるのですから!
この数日お泊まりした宿主には大変良くしてくれたし、庶民の生活を自らの肌で感じることができてとても濃厚な日々でした。またくる機会が来れば是非とも寄ってみたいですわね。
そんなわけで用も済んだことですし皆を叩き起こしにいきますか!
◇
宿の人によるとどうやらハルトは私を差し置いて早く起きどっかに向かっていってしまったらしい。いったいこの早朝にどこで油を売っているのか......
皆さんを起こしにいく気が消え去ってしまったので一旦ギルドに行って昨日やっていた荷物確認でも再度しましょうかしらね。面倒ですけどどうせ暇ですし。忘れ物でもした日にはたまったもんじゃないですから。
そうしてギルドに来たわけですけど暇そうにしている警備員1人だけとやっぱり人気がありませんの。しかも受付嬢すらも居ないのはどうなんでしょうかね? お仕事放棄して大丈夫なのかしら? もしかして休みの日なのかもしれないですけど、街中の荒れ暮れ者が集う場所を開けていて果たしていいのでしょうか?
そんな心配をしつつ唯一ギルドに居て欠伸をしていた警備員にお茶を注がせるという仕事を与えていたら、何やらまた暇そうにしていて口笛を吹きながらギルドに入っていく男がブラブラと入って来ましたの。
そういえば昨日ハルトが紹介していた竜の血が入っているリザードマン......呼び名は竜男が良さそうですわね!
「あっ! おはようこれからよろしくかわいいね胸揉ませてくれよ!」
ホゲェ......私に気がついてから話にくるのが早いこと早いこと。急に私との距離を縮めようとしているのか捲し立てるように話してきますわね......てっ今最後に何て言いました? いつでも対抗できるように片手に杖を握っておこおっと。
そんな言葉で感情を乱すような人ではありませんわよ。なんてったって王女の威厳がありますからね。私は暖かいお茶を飲んで王族の余裕を見せながら竜男に対して毅然に振る舞い『オホホホホ......』と静かに笑うことでこの場をひとまず乗り切った。
結果的にはぐらかされた形になった竜男はというと、私の事はもういいのか目もくれず何やらキョロキョロ周りを見て何かを探しているようだ。
一連の会話を見ていた唯一の第三者暇人警備員は無駄に気を利かせてしまったのかそそくさと持ち場に帰ってしまい、この場には私含めた2人だけのほぼほぼ初対面同士の男女空間になってしまう。
この数分どっちも喋らずものすごく気まずく感じになり、さらにお茶も無くなってしまったので仕方なく私自身が注ぎにいくことに......
さすがに人が少ないのは何かがおかしいと感じたので竜男にそれとなく聞いてみることにした。それと同時に注ぎ終えたお茶をまた口に持っていく。ふう......何故かわかりませんが疲れますわ。
するとお茶を含んだタイミングで竜男が私にとって衝撃的で最悪なことを言い始めたのです。
「ああ、やっぱりあっちに人取られている感じなんすね。いやあ、今日エリート様と勇者ユウキ様がこの街にいらっしゃるようで歓迎会みたいなものがおこなわれているんっすよ!」
ブヴヴヴヴヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!? 反射的に口に含んでいたお茶を竜男の顔に吹き出してしまった。まさかもうここまで来ているなんて......
「今からこの街を出る準備を済ませてさっさと出ましょう! ほら何ボサッとしていますの!」
鉢合わないようにさっさとこの街を出てモリヤミに旅に出よう!
「なんか俺お茶をぶっかけられるようなこと言ったかなぁ......いや何も言ってないっすね」
◇◇◇◇◇
次回に続く
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