アリシアから離れて国を出る
こうして俺達は予定時刻より少し早くこの街から出発することになった。さすがに騒動を起こした一因になってるとか、そもそも王女を抱えているというのがみんなにバレた今、ここには居づらくなってるだろうしこれは仕方ないだろう。
「これは実質国外追放だな」
誰にも聞こえないように静かに馬車の後ろにある窓から呟き、また自己嫌悪に陥ってしまう。
短い間だったけど苦楽を共にした旧仲間達にも見放されユウキに煙たがれて逃げるように退散か......一国の王女乗せていて権力上では無敵のはずなのにこんなこって......ね。
てかなんであいつらは王女の権力に屈しないんだよ!? 創作の話ではさ権力者の仲間を痛めつけようとした時点でアウトなパターンが多いのに。まあ俺を殺そうとしてきた方達も変にでかい権力持ってるし、よつば本人が極力権力行使するのは嫌だと公言してるからなんとでもなると思ってるかもしれないのがまた......
はあ......それにしても俺はなんでこんな過酷な旅に出かけているんだろうか。魔物に襲われての過酷旅なら想像はできたけど、まさか事実上迫害されての過酷旅は予測できなかったわ。
ダメだ完全に思考がネガティブモードに支配されてしまってる。本当は良くないことだけどこの旅を通してくせみたいになってるのかなぁ。
「おーい! ハルト大丈夫か? あれ? 顔色が悪い......」
「もしかして乗り物酔いになったんじゃないですの? 最初に馬車に乗った際穏やかな顔しておりませんでしたし、それにこの馬車の速度的に乗り心地最悪ですし......」
ああ......何故だかわからんが身体中をグラグラされている感覚ですごく気持ち悪い......ヴぅッ!?
「うわぁぁぁぁぁぁ!? リバースしたぁぁぁ!?」
「中で出されなくて不幸中の幸いですわね......ねぇガドラさん一回馬車を止めて休みましょう?」
「そっすねぇ......」
どこからか声が聞こえてくるが正直何を言っているのかわからない。ていうか騒がないでほしい。
朦朧とする意識の中本来の旅の目的を強く思考に宿し意識が闇に吸い込まれていく......
『強くなるためなんじゃなかったのか......』
◇
ウーン......頭がクラクラする......
国境を渡る手前、そのあと軽く近道になるという山を登頂するその手前時点でギブアップしてしまったようだ。ウーン乗り物系って慣れんなぁ......
「ねぇハルト。今日は何かがおかしいよ。こういうダメな日はポジティブ思考になれば少しは落ち着くよ!」
どうやら介抱してくれてたようだ。心配かけてすまんと思ってる。ゴメンなぁ......
「ありがとうマールさん」
うん......いつまでもクドクドしてても仲間に心配されるし先に進めないよな。ポジティブ......ポジティブ......
この間終始よつばは俺を見つめたまま表情を曇らせていたのを俺は気には留めていたが、俺は自分のことで精一杯になっておりつい後回しにしてしまっていた。
◇
どうやらこの道はこの山を越えたら公共の道に戻りプルルンド帝国の通路としても道が分岐している途中まで機能を果たしているらしい。
国境を抜けたら無法地帯に......ウウウ......考えただけで頭が痛くなってきた。
ちなみになんでわざわざ遠回りになる道を使うのかというとそれはもう理由は一つしかない。それはユウキ達の存在だ。もしかしたらあいつら案外王様とかに繋がってたりして国家権力を振りかざしながら俺を追いかけて......いやこの可能性はほとんど無いかもしれないが万が一もあるだろ?
どっちみち本通りも険しい道のりだし交通の便も大した違いはない。ただモリヤミに行くには大分遠回りになるけどプルルンド帝国にもいけるよってだけで俺達はこの道でアンパイなのである。なんかプルルンド帝国という国を以前にも誰からか聞いた気がするがどうせ気のせいだろう。うん!
これから俺達がどうなるかは誰にも分からない。ていうか本来の目的と定めた魔王四天王の一体を討伐するというのを達成できるのかも正直分からない。
仕方ない......誠に不本意だが盾使いとしての技術を磨くだけじゃなく魔法とかも手を出してみるか。
勇者パーティーから追放されてしまった俺こと盾使いのハルトは半端無理矢理パレンラトス王国の第二王女に旅に連れてかれ、とある人間の闇の部分を垣間見たり魔物にボコボコにされたり嫌なことがいっぱいあったけど......アリシアに来る際に新たな仲間達と出会ったり疾風丸達とも出会えた。
アリシアまでの旅は全部が嫌なことではなかったな。いや......まだ旅のスタートラインにも立ってないか。
せっかく仲間になってくれたんだし早くガドラとの信頼関係を築きつつも、とりあえずこれから馬車に乗ってこの山を踏破しモリヤミに向かおう!
◇◇◇◇
第一章完
◇◇◇◇
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