第2章(前)
草だな、草だね
モリヤミに行く前に恥ずかしいくらいの抱負を自分の心の中で持ったけど、ぶっちゃけ自分って流されているとも言えるのよね。でも自分は四天王討伐を手土産に一回故郷に戻り事情を話したいのは今も昔も変わらないし、コテンパンに自分を否定された今ここに居場所はあるのかなって今日改めて思ってたり......
やっぱりこんなことを打ち明けでもしたら怒られるかな......?
◇ハルト、当面の目標は魔王四天王討伐
◇
俺の体調を気にしてくれたのか道が広くなっている所で馬車を止め休憩を取ることになった。たびたび申し訳なくなるなぁ。
そう思ってたら本格的に幻覚とか見えてきているというか体調がヤバイ。具体的には馬車の乗り物酔いで目の前の草が動いているように見えてきたのだ。いや待って実際にうごいてね!?
「ホゲェェェェェ!? なんですのこの気色悪い草もどきは!?」
花自体は綺麗な黄色の花なんだけど、これが生き物みたいに根が足のようにウネウネと動きながら目の前まで近づいてきた。
たまらず俺はこの奇妙な草を手に取り、手の平でジタバタもがいている草をマジマジと観察していると、マールが簡単に解説してくれた。
「これは標高が高い山に根付いている元取り草だね。けどここはまだ標高高くないのに珍しい」
「元取り草......言われてみれば標本に描いてあった絵と似ていますわね。別名踊り草とか煽り草とも呼ばれていますの」
はぇ~......煽り草? まあなんだ、ここで生えてる(?)のは珍しい植物なんだな。
「ならさちょっと気になることがあるんだけど」
気になること、それは単純にこの草って美味しくいただけるのかなという俺の好奇心。
だってフレア等の魔法を使って火を作って草を炙ったりしたらいい感じにパリパリの食感になって案外美味しそうじゃないか? ......草だし食べる前に炭になってそうだけど。
しかし、俺は草全般の知識なんて到底持ち合わせてなんかいない。ていうかもうこの際だし、暇そうにしているガドラにもこの草について何かしら知っているのかを聞いてみることにした。
これにはさすがに俺ことハルトの頭がおかしいと思われたのかもしれん。目を丸くしたガドラに『どういう神経してるんすか(ですの)』と驚きの感情が混じったツッコミを聞いてないのによつばにも言われる始末。
ただ聞いてみただけなのになんで......その疑問はすぐに消え去ることになる。
「まさか毒を自ら喰らおうという......その心意気しかと受け止めたよ! さあ僕に続け! 決して毒に伴う痛みを感じたいわけではないよ!」
マールのM属性(自暴自棄)がここにきて開花しただと!? その後3人がかりでなんとか阻止した。
生きのいい草しているからてっきり食べれる食材かと思っていたのに実際は、頭痛と腹痛稀にしびれを伴うという神経毒が含まれていたというね......
ちなみに煽り草の名前の由来はまるで食べて欲しいかのように近づき、実際に食した人々を苦しめたからだそうた。
そして草は俺の手によって焼却処分した。フレアでは外す可能性があった為念には念を入れてフレイムで炭にした。
焼却処分はみんな(1人除く)納得した上で行った。よつばは一応薬の材料にはなるけど生きたのは要らないし危険植物だから消してと叫んでいて、ガドラはジュンティルが間違って食べてしまったら困ると言っていて、この草はそれはもう嫌われていた。
なんか......嫌われる奴って人間も魔物も植物もおんなじなんだなって思ったのでした。
◇◇◇◇◇
次回に続く
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