束の間の休憩

 とりあえずもらった金で格安の宿を取り、すぐにクタクタの身体を休める。

 何で格安なんだと思うだろうけど、多分旅路は長くなるから。

 長期的に見るとあまり贅沢はできないんだ。


 俺の旅の目的は冷城ユウキと話がしたいとか、故郷にいる友人母さんに面目が立たないとか、魔物倒して平和な世界を作りたいとか、ついでに魔王四天王倒して有名人になりたいとか、あやよくば魔王倒せるなら倒したいとかいっぱいあるんだけど、問題なのは目的がわからないよつばのほうだ。


 正直、一人だったら目的を止めることだってできるし、気ままに一人旅やら故郷に帰ることができたんだ。

 だが、よつばが現れたことによって、これからの算段が瓦解してしまった。


 よつばの目的は魔法を極めたいとか言ってたが、多分建前だろう。あいつがそんな理由でわざわざ危険な道に......踏み出しかねないな! 否定できない!


 他に理由があるとしたら世界中を見てみたいとかかな? いくらアイツでも魔王討伐したいとか言わないよね?


 ちなみに旅資金の5万アースはよつばと半分ずつ分け合うことにした。お嬢様出身とはいえ金のありがたみという教育は受けているだろうし、少なくとも1日で2万5000アース使っちゃうことはないだろう。いや決闘場で日常的に賭け事やってるぐらいだし悪手だったか!?


 この時間では到底眠れもしないので少しばかり外に出向く。適当な場所で腹を満たし、そこらへんの草原でふらついていると......


「ぬああああ! 誰か助けてくれーー!」


 突然男の人らしき助け声が聞こえた。すぐに声の持ち主に駆け寄ろうとしたが、この草原無駄に馬鹿でかいのでどこにいるのかさっぱりわからん。


「どうしましたーー!」


 どうやら先に駆けつけてくれている人がいたようだ! 言うほど遠くなかったな。


「クッグッ......クソウ......」

「廉太郎しっかりしろ!」

「わからないのか。俺はもうだめだ......ンゴ」

「廉太郎! うそだ。おめえは本当にボロボロに」


 一応岩陰に隠れて様子を伺っているが、何やコイツら......助けを求めている人はあの二人組なんだろうけどなんか怪我してるようには見えないんだけど。


「魔物にでも襲われたんですか?」


 俺より先に駆けつけてきてた女の人が恐る恐る気味に話しかけている。すると2人組の1人が友人が重症だから助けてくれ的なことを言っているが、重症ってやばくない? 俺も助太刀したほうが良さそうかも!


「あっちにある魔物がいるだろ。その肉が薬になるんだ。だけどもオラはもう動けねえ。代わりに取ってきてくれないか? 今頼れるのはお前しかいねえ!」


 たしかに丘の上にイノシシ系の魔物がいる。確かにワイルドボアの肉は美味しくていろんな料理になって人々に好まれているけど、あの肉にそんな病気を治すような効能あったっけ?


「わかった! 今から狩ってくるよ!」


 なんかよく事情はわからんけど命の危機だってことはわかった。護身用の短剣で手伝えるかわからないけど、とにかく急ぐか!


        ◇


「来た時には全てが終わっていた......」


 魔物を素手で撲殺、そこから解体、そして今火起こししている最中だった。戦い方が脳筋すぎるけどかなりの手練れのようだ。いくら危険度の低いか弱い魔物とはいえ、動物を素手だけで倒すってヤバすぎるだろ。


 結局俺は話しかけることすら出来ずに岩裏でコソコソするだけの野次馬変質者になってしまったよ。


「持ってきましたよーー!」


 あれ? あの二人組がいない。


「よっしゃあ! 高そうな剣と金食料ゲットだぜ!」

「ゲッヘッヘッヘッヘ! 大漁大漁んご~!」

「あれれ......?」

「悪く思うなよ!」

「してやったりだぜ! アッハッハッハ!」


 これっていわゆる盗賊か? 女の子の持ち物が根こそぎ取られてる。


「ええええええ!? 待ってくださーーい!」


 凄い勢いで逃げている盗賊を必死に追いかけている女の子を見て哀れだなと思った。大丈夫かな? あの子......あっこの肉美味い。



       ◇



 後で人に聞いた話だけど、やっぱりあの二人組盗賊らしい。しかも少額の指名手配書がついてるくらいの。そういうことには疎いからこんな大物だとは思えんかったわ。それにしてもあの子が心配だ。あの時何で一言かけれなかったんだろう。また会う機会があれば一回話してみたい。会えればいいな......


◇◇◇◇◇◇◇

次回に続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る