第10話 Bad 2
何かスキャンダルは無いものか
そういえば身近に情報を持ってそうな人が居るじゃないか
情報が無くても何かヒントが得られるかもしれない
幸い今は練習出禁になってるし街に行ってくるか
脱走したと思われないように一応メモを残しておこう
数日振りの街に赴いたが正直こちらの暮らしの方が
性に合っていると感じている
王宮はギスギスしてて息が詰まる
カランカラン
俺の事を裏切り者と思って無いだろうか?
あれ以来一度も会ってないからすこし不安がよぎった
「こんにちは〜」
恐る恐る入っていく
「ユヅルさん!会いたかったです!」
そう言ってヴィヴァーチェが駆け寄ってくれた
「久しぶり!数日しか経ってないのに随分月日が経ったみたいだね」
「本当に...会えて嬉しいです」
冗談半分で言ったつもりだったんだけど...
真面目な所は相変わらずだな
「もしもーし、お二人さん私の事見えてますか〜?」
決して無視してた訳じゃないんだが最初に目に入ったのが
ヴィヴァーチェだったので話しかけるタイミングを逃していた
「ごめんごめん、ドルチェも元気そうで何よりだよ」
「元気...とは言えなそうね、私達の為に...ありがとう」
普段こんな事言わないタイプだから意外と言ったら失礼だろが...
少し新鮮に感じてしまった
「フォルテの姿が見えないけど?」
「フォルテは買い出しのお手伝いに行ってますよ」
ドラムの練習はしてくれている様だ、楽器の手入れも
されているし、スティックはボロボロだ
新しいスティックがあるが見様見真似で作ったんだろう
早くこの日常に戻らなくちゃ
「ラルゴさんは居るかな?」
「部屋に居るわよ」
状況があまり良くないのを察したのか
今どうしているか、特に何も聞かれなかった
彼女達なりに気を遣ってくれているんだ
「ユヅルです、入ります」
「久しぶり、では無いな、何か行き詰まったんだろ?何か力になれればいいが」
「察しが良くて助かります、実は陛下より楽団を変えるよう指示がありました、手っ取り早く風通しをよくする為、クーデターを起こし楽団長を変えたいのですが...」
「マリシャスが厄介なのだろう?」
何から何までお見通しだな
「俺が楽団にいた頃、同じような事をしようとしてな」
「何かとあいつに邪魔されてな、楽団長を変える事がとうとう出来なかった」
「クーデターも起こせず、この有様だ」
「あまり参加になる事はないかと思うが、何が聞きたい?」
「彼等に何か不正を働くような動きはありませんでしたか?それが見つかればすぐにでも更迭出来るんです」
「楽器を作らせる所から金を貰ったり、なんて話は聞いたことがあるんだが正直なところクーデターを起こすには弱すぎてな、詳しく調べていない」
まぁ、権力者なら良くある話だよなぁ
「力になれなくてすまないな」
「いえ、ありがとうございます」
「そう言えば楽団の人はこの国以外の音楽は知らないんですか?私の音楽は特殊すぎますがもう少し色々知ってる人間も居て良いのでは?」
「そう思うのが自然だな、音楽に限らず他国の調査をして良いものがあれば導入する、当たり前の話だが楽団にはそれがない、というかマリシャスと楽団長が認めていない」
「他国の偵察をですか?」
「そうだ」
おかしな話だな、人間のほとんどは知的好奇心があるはずだ
ましてや芸術の分野だぞ?
世界がどんなものか知りたい、取り入れたいと思わないのか?
全く意味が分からん
何がそうさせるんだ?
「その事についても王宮内外で調べたんだが分からず仕舞いだ」
「そうですか...ありがとうございました」
「大した事は出来ないがまた店に来てくれ、みんなも心配している」
「はい、それじゃあまた」
部屋を出てヴィヴァーチェとドルチェに挨拶する
「早くみんなとの日常を取り戻すね、待っててね」
そう言うと2人は涙ぐんで頷いた
もう俺だけの世界ではなくなったんだ
早く帰りたい
王宮の部屋に戻ると残しておいたメモに何か書いてある
「楽団長より明日からまた練習に参加する様に指示があったわ、アンダンテ より」
そうか、とりあえず復帰出来るのか
何もしない奴を養う訳にはいかないもんな
翌日から練習に参加した
文句1つ言わず、指示通りに演奏を行う
相変わらず嫌味を言われながらの練習で苦痛だった
何かヒントは無いものか...
練習が終わり部屋に戻ろうとするとアンダンテから何やらメモを渡された
20時私の部屋に来て、クーデターの話
何の話だろうか?
まぁ何も進展が無いんだ、言っても損はないだろう
約束の時間にアンダンテの部屋に行く
「ユヅルだよ、入るね」
ゆっくりドアを開けるとプレスコも部屋に居た
「いらっしゃい、座って」
用意された椅子に座る
「変な呼び出し方をしてごめんなさい、最近は真面目に練習してるみたいだけど、諦めた訳じゃないわよね?」
アンダンテが主導で話を切り出す
正直に言っていいか、罠で追い出される羽目になったら次の手を考えれば良い
「昔楽団に居た人の所に行ってね、まぁ私と同じ事をして失敗して、あまり収穫は無かったんだけどね」
「具体的にどんな話を?」
やけに食いついてくるな
「話しても良いけど、協力してくれないんじゃ話す必要もないかな」
ちょっと突き放すような言い方をした
「力になれてなくてごめんなさい、私達はあなたの味方になりたい」
「その言葉だけでは信用に値しないかな」
「当然そうよね、だから私達も探りを入れる事にしたの」
「探り?どんな?」
「楽団長はノートをいつも持ち歩いているのだけれど、それはただの楽団のメモだと思っていたわ、あなたが外出した日に落としたから拾おうとしたんだけど、凄い剣幕で触るな!って、何かあると思うのよ」
ノート...か
他人に拾わせないほど大事な物か、何が書いてあるんだ
「それは確かに気になるね、私も知りたいな」
「今日私が話してきたのは何か不正とか知らないかって聞いたんだけど、ちょっとした賄賂の受け取りとかはあったんだけどあまり大事では無さそうだったから詳しくは調べなかったみたい」
「後は楽団での他国の調査をしない事かな、普通は知りたいけど禁止されてるでしょ?気になったのはそこかなぁ」
包み隠さず話すことにした
「他国の件は多くの団員が疑問に思っているわね、それを質問した人が必要以上に叱責されたり、何かおかしいとは感じていたけど...ノートと関係があるかは分からないわね」
続けてプレスコ提案をする
「明日は全体練習がないでしょ?楽団長が1日留守なのよ、その隙に部屋に忍び込んで見ようと思うんだけど、どうかしら?」
常に持ち歩いてるノートはないだろうが...
少しでもヒントを見つけたい
「いいよ、やろう!」
プレスコが王宮入り口の監視役、アンダンテが部屋の前の監視役、俺が部屋の物色と役割を決めた
やるからには何か見つけておきたいが...
翌日、レガートが外出したのを確認して作戦を決行した
合鍵なんて持ってないから俺が部屋のドアノブを壊して中に入る
部屋は机、本棚、ベッドとシンプルな部屋だった
本棚には楽譜、小説、地図や他国の本と幅広くあった
まずは本棚からやるか
100冊近くはある本棚を隅々まで物色するが
おかしな物は見つからない
本も1ページ1ページめくって何か挟まれてないか確認した
地図に載っている国に○が付いてるところと付いてないところがあった、意味は分からないがメモしておくか
本棚をずらしてみても何も見つからない
ベッドの下は...ある訳ないか
後は机の引き出し
鍵のかかった引き出しがある、見るなと言ってるようなものだ
強引に机の引き出しを壊して開ける
あるのは...楽譜と...メモか?
ムシク 組曲3番 エレボス
パルテナ 組曲2番 ニュクス
インストラ 組曲5番 タナトス
プルーハング 組曲8番 ヒュプノス
同じ様に単語、組曲の番号、単語の
メモが沢山書かれている
3つ目は恐らくタイトルだよな、最初の単語だけ分からない
楽譜は...タナトスの楽譜もあるな...
特におかしい所は...ん?
楽譜の左端がペンで黒く塗りつぶされた箇所がある
五線譜の外だから演奏に影響は無いが...
部屋の鍵も、引き出しの鍵も壊したんだ
すぐにバレるからメモと一緒に持っていくか
「アンダンテ 、引き上げよう、不正の証拠か分からないけどヒントになりそうな物があった」
「分かったわ、すぐにプレスコと合流しましょう」
プレスコと合流してアンダンテの部屋に集まった
「部屋の隅々まで探して見たかったのはこのメモと楽譜、後は地図に○がつけてあったよ」
そうして奪ってきたメモと楽譜を広げた
「これは...国名と曲のタイトルね、何の関連があるのかしら?」
「国名?左に書いてあるやつ?」
「周辺国ね」
「後は黒く塗り潰された箇所のある楽譜、一緒に入ってたから関連があるのかな?」
「塗り潰されたところはなんて書いてあったのかしら?」
透かしじゃ無いが光に照らしながら見れば
うっすら書いてある事が分からないだろうか?
「うーん、組曲3番の楽譜は...エリナに...捧ぐ?何だこれ?どういう意味だ?」
「消されている箇所からして曲名を記載する事が多いわよ」
「それだと違う曲名になってしまうわね」
違う曲名、他国の名前、地図の○
「まさかとは思うけど...他国の曲を盗作してるんじゃ...?」
冷や汗が出た
曲のタイトルやワンフレーズ、コード進行を利用して
曲を作る事はあり得るが丸パクリだと?
「他国の曲を国家の曲として利用してるなんて知られたら大問題になるわ!」
「早く陛下に知らせないと!!」
その時だった、廊下からレガートの声が聞こえる
「ユヅル!お前の仕業だろ!出てこい!!これは犯罪だ!」
「まずい!!私が囮になるから2人は早く陛下を探してきて!!」
バンッ!と勢いよく部屋を出て
「お前の探してるのはこれだろ!捕まえてみろ!」
と煽りながら走り出した
レガートは血相を変えて追いかけてくる隙に2人は反対方向へと走り出した
この楽譜とメモを突きつけてもどうせ言い訳するだろう
だが陛下が見て何と思うか、元々不穏な動きがあったに
違いない、だからこのタイミングで俺を差し向けたんだ
さぁ、審判の時だ
Bad
To be continued
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