第5話 Lose Yourself 2

G#m E B F#


G#m E B F#


G#m E B F#




G#m E


花壇いっぱい並べすぎて


B F#


ジョウロの水を奪い合い


G#m E


心に傘をさしてくれたから


B F#


僕は君に応えよう




G#m E


君の好きな花を見つけて


B F#


「ほら見て」って振り返っても居ない


G#m E


あなたは私を捨てたの?


B F#


じゃあなんで泣いてるのさ?




G#m E


止まらない涙は進む道の


B F#


風が拭ってくれるから


G#m E


恐れずに走っていけば良い


B F#


転びそうになった時は手を繋ごう




「私はこれから先どんな事があっても今の私を貫くよ」


「きっとフォルテもそんなものが見つかるよ」




「良く...分からないよ...」


泣きながら答えるフォルテ




「でも....分からないけど良かったよ...ユヅルの歌...」




「それは良かった」


「じゃあ私はお店に戻るね、そろそら仕事の時間なんだ」




そう言って立とうとした時、フォルテは私の袖を掴んだ




「ボクも行く」




「えっ!?」




「ボクも行く」




「私はこれからお仕事なんだ、ごめんね」


「フォルテと一緒にいられるのはお仕事が終わった後だよ?」




「ボクもお仕事する」




「ええっ!?」




折角懐いてくれたのは有難いが...


とりあえずラルゴさんに断ってもらうか...




「多分...無理だと思うけど...行くだけ行こっか」




フォルテと手を繋ぎながら店へと向かう




「ユヅルは王立交響楽団の試験を受けるの?」




「受けるつもりはないかなぁ、人数は揃ってないけど自分の音楽団を作ったからね」


「王立交響楽団は私が必要とする場所じゃないかな」




「自分だけの!?そんな事できるの!?」




「うん、自身で宣言したらそれはもう自分達の音楽団なんだよ、誰かに認められなかったとしてもね」




「認めてもらえないのにやるの?」




「そうだね〜最初はそんなものだと思うよ、努力した結果認められれば良いけど必ずしも努力が報われるわけじゃない、でもやるの」




「ユヅルの考えはやっぱり良く分からないよ」




「あはは、よく言われるよ、私は自分のやりたい事が出来れば、それでいいのかも知れないね」




店に着くとヴィヴァーチェと知らない子がいる


姉のドルチェだろうか?


今日から復帰だもんな




「ヴィヴァーチェ今日も頑張ろうね、その人がお姉さん?」




「はい、今日からまた一緒に働けるんです」


「あれ?、フォルテと一緒なんですね」




「ちょっとラルゴさんに用が出来てね、いるかな?」




「部屋にいると思いますよ」




「ちょっと行ってくるね」


「ドルチェさん、私はユヅルって言います、ちょっと前からここで働かせてもらってます、宜しくお願いしますね」




一応初対面だし丁寧に挨拶しておいた


だが彼女からは想定外のリアクションだった


今にも襲いかかりそうな目つきで


「私は、あなたを認めません」




そう言って開店準備を始めた




「ユヅルさん、あまり気にしないでくださいね」


すかさずヴィヴァーチェがフォローしたがショックは抜けないままだった




「うん、ありがとう」




そうしてラルゴさんの所へ行きフォルテの話をした




「と、いうことなんですけど、どうでしょうか?」




はぁーっとため息をつきながら


「あのなぁー、ここは夢見る若者の修行場じゃねーんだぞ、」




「そうですよね、やっぱりダメですよね?」


「フォルテ、教会に帰ろ?」




「これ以上、増やすなよ」




「えっ?」




「これ以上増やすなよと言ったんだ、シスターには俺から説明しておく、そいつはキッチンに入ってもらう、当面はひたすら皿洗いだけどな」




やっぱり聖人としか言いようがない


俺といい、フォルテといい、音楽の事といい




「あ、ありがとうございます」


「あ、ありがとうございます」




フォルテと同時にお礼をいいその場を後にした




「良かったね、これからよろしくね」




「うん!ボク頑張るね」




そうして俺達はそれぞれの持ち場で仕事をこなした


けど、ドルチェとは全く会話が出来ていなかった


その日は夜から雨が降ったせいか客足は伸びず、


最後の客が帰ると閉店となった


俺は片付けをしながらドルチェにあの事を聞いた




「ドルチェ、私を認めないってどういう意味?」




「......」




「私、何か怒らせるような事したかな?だったら謝りたい」




「......音楽はもういいの」




「えっ?」




「音楽団を作るですって?一体何を考えてるの!?試験に落ちた私達へのあてつけ?同情なんかされたくない!!音楽がしたいならあなたも試験を受ければ良い!!」




ごもっともな話だ


俺はまだ一回きりの試験を受けることが出来る


受かれば正式に音楽家として認められ活動ができる


音楽だけでメシが食える


彼女達はもう二度と試験を受けることが出来ない


音楽家を自称以外で名乗る事はない




俺のやり方は間違っているが......




「私のやり方で怒らせたならごめんなさい、けどあなた達に同情なんかしてない、本当に音楽を愛してる人と一緒に何か出来ないかと思っ」




「もういい!!聞きたくない!!」




その場の空気はかなり凍りついた


ヴィヴァーチェも間に入れず萎縮してしまった


これ以上は店の空気を悪くするだけだな


今日はもうやめとこう




「分かった...」




時間をかけて分かってもらうしかないな




仕事を片付けて部屋に戻るとフォルテがいた




「部屋がないからユヅルの部屋で寝ろってオーナーが、狭いけどここで我慢するよ」




急に距離が近くなったな...


まぁ、懐いてくれてるなら全然良いけどさ


でも俺はいま女なんだよな、男の子と寝て問題ないだろうか


貞操とか...諸々...




「そ、そうなんだ、改めてよろしくね」




「ユヅル、ボクも音楽やりたい!」


「楽器!楽器!楽器!楽器!」




手をバンバンやりながら駄々をこねる




「うーん、そうだね〜いま欲しいのはドラムなんだよね〜、あ、ステージにあった太鼓がいっぱいあるやつね?」


「フォルテは男の子だもんね〜出来る様になったら迫力があって良いかもね〜」




「ユヅルやっぱ変、ボクは女の子だよ?」


突然の告白だった




「え!?だって自分のことボクって....!?え、あれ」


「みんな知ってる事なの?」




こくっと軽く頷いた




「女の子がボクって変?みんなは特に何も言わないよ?」




そうだよな、固定観念に囚われてるのは俺の方だよな


俺だって女の身体で俺って言うもんな


いや俺で合ってるんだけどさ




「そっか....じゃあ貞操とか色々大丈夫だね」




「何のこと?」




「あ、いやなんでもないよ!?」


「えっと、何だっけ、そうだ!ドラムね!」




「うん!やりたい!」




「今日はもう遅いし明日にしよう、でもあれは音が大きいからラルゴさんにやっていい時間を聞いてからね」


「とりあえず、2ビートと8ビートを覚えてもらおうかなやり方はね」




基本のリズムパターンを教えてスティックを渡した




「とりあえず、布団とかでこれを叩いて出来るようになったらドラムを叩いてみよう」




「うん、分かった!!練習する!!」




フォルテは無垢だな


こっちまでやる気が出てくる


好きになればあっという間に上達しそうだ、あとは...


頭によぎったのはドルチェの事だ


フォルテがドラムを叩けるようになれば


最低人数のバンドとして成立する


けど、それで良いのだろうか?


ドルチェもヴィヴァーチェと同じように音楽を愛しているんじゃないだろうか?




今日話した感じからしてヴィヴァーチェとは真逆の性格だろう


言いたい事はハッキリ言う、そんな感じだった


俺もどちらかと言うとそうだから相性が悪そうだ




話が通じないなら音楽を見て貰えばいいが、


流石にワンパターンか?同じように通じるか?


彼女がやってきた事を聞いた上で、作戦を考えよう




ひたむきにピアノをやっていたドルチェ


彼女なりに貫きたい考えや音楽観があるだろう




なに、俺だって音楽は続けてきたさ


それで一回は死んだりしてるんだぜ?


分かり合えなかったって構わない


好きをぶつけ合って、共有して、




久しぶりだな、こういう風に揉めるの


でも人間らしくていいじゃんな


顔がニヤけてしまう




さあ、討ち入りと行こうじゃないか








Lose Yourself 2


Fin

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