6.ひとつ屋根の下 (円)


 深夜になって今日撮った写真をもう一回見る。ニコがカメラに向かって、笑顔を浮かべている写真。

 

 めちゃくちゃ可愛い。

 誰にも見せずに、このままずっと保存しておこうか。いや、それはそれで勿体もったいないか。


 見せびらかしたい気持ちが勝った。グループトークにニコの写真を送った。


 マドカ:写真撮った。


 例のごとく、すぐに返信が来た。


 タケミツ:かわいい。それしか言えねぇ。


 シアン:女の子連れ込んで、無理やり撮った写真かな?


 マドカ:ちゃんと頼んで撮らせてもらいました。


 シアン:分かった。フォトショ。


 マドカ:フォトショじゃない。


 タケミツ:寝顔の写真は?


 マドカ:ねぇよ。


 しょぼん、とスタンプが飛んでくる。


 隣の寝室に目をやる。

 今日も遅くまで、2人の楽しそうな笑い声が聞こえていた。昨日よりかニコの声は、明るくなっているような気がした。


 明日からこっちで暮らす手続きを始める。ニコのおじさんとおばさんには、ニコから言って許可を取るということだった。

 

 シアン:じゃあ、これから円くんの家で暮らすんだ。


 マドカ:そうなると思います。親父は認知してたみたいだし、国籍もあるしこっちの高校も行けるって。


 タケミツ:金髪美少女と一つ屋根の下……だと……。


 シアン:どこの学校通うの。


 マドカ:分かりません。


 シアン:ぜひうちの学校に。そして我が映研えいけんに。

 

 マドカ:それは、どうだろ。やめた方が良い気がします。


 シアン:何で。


 マドカ:可愛い妹を停学にさせたくない。


 タケミツ:それは分かる。


 シアン:もうあんなことしないから。次の映画に出てもらえば、絶対に話題になるって。


 マドカ:絶対に嫌だ。


 シアン:くそったれ。


 色杏しあん先輩が何を言おうが絶対にダメだ。

 停学者が多発した部活動に、ニコを入れる訳にはいかない。可愛い妹の経歴に泥を塗りたくない。

 

 シアン:でも、円くんの話が本当だったとしてさ。本当に金髪美少女の妹ができたとして。

 

 少し間があった後、色杏先輩からメッセージが送られてきた。


 シアン:恋愛感情とか持っちゃったら大変そうだねー……。


 ポン、とクスクス笑う子豚のスタンプが貼り付けられてくる。からかわないでくださいと返して、トークの画面を閉じる。


 恋愛感情。

 色杏先輩の言ったことがモヤッと胸に残る。


 血の繋がった妹だと昼間は格好つけて言ったけれど、実感は薄い。まだ出会って数日しか経っていない。むしろ最初に出会った時の感情の方が強く残っている。


「いやいや」


 それは色々とダメだ。


 妹だ。妹。


 でもお兄ちゃんと呼ばれるのは、やっぱり何だか落ち着かない。その内慣れるのかもしれない。早く慣れたら良いけれど。


 もどかしい、としか言いようがない。

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