第7話 オフ会に行こう!
イベントも終わりお盆期間も明けた残りの夏休み。
僕は宿題を片付け、二学期にむけての予習復習をしている合間にもゲームをプレイしたり趣味を楽しむ他にもちろんプラネットノースもプレイしていて、さらにイラストや漫画を作成していた。
そんな残りの夏休みを過ごしている夜だった。
光さんから再びダイレクトメッセージが来ていてチャットをしようということになり、また前のように話ができるのなら楽しそうだ、と思い僕は再びパソコンを起動した。
今日はどんな会話ができるかな、とワクワクしていたらこんな発言だった。
「ソウジロウさん、以前学校でもミココさんとゲーム好きの活動してるって言ってましたよね?」
そういえば前のチャットの時に少しだけそんな話をしたなあと思い出した。
イベント会場で僕は加奈と共に行動していて光さんには同じ学校だ、と言った気がする。
しかしそれで何の用事で声をかけてきたのだろうか?
そして出てきた光さんの話はこうだった。
「よかったら「プラネットノース」が好きな人同士が集まるオフ会に参加してみませんか?」
「オフ会……ですか?」
オフ会とはよく聞いたことがある。
オンラインゲーム、やSNS等のコミュニティなどインターネット上で知り合った人同士がリアルで会うということだ。
オンラインではなくオフライン、ネット上ではなく現実で会うからオフ会だ。
「私が去年から参加してる「プラネットノース」が好きな者同士の集まりがあるんです。つまり私の知り合いでのオフ会という感じですね。それを今年もやるみたいだからソウジロウさんとミココさんも一緒に参加してみやらどうかなーと思って声をかけさせていただきました」
その話にこれはまさに光さん以外のプラネットノースファンにリアルで実際に会うチャンス!と心がときめいた。
しかしその反面、思うところもあった
「お話は嬉しいんですけど……。そういうオフ会とかって高校生とか未成年は参加できないんじゃ……。よく未成年を入れてのトラブルとか聞きますし」
オフ会とはあくまでも共通のジャンルが好きな者同士での集まりということだがどんな人が来るかわからない。
ましてや未成年や高校生はよく交際関係や金銭関係でトラブルが起きると聞く。
夜九時までに未成年は家に帰さねばならない条例とかアルコールを提供してはいけないので居酒屋などに未成年を連れてのオフ会は行けないなど、オンラインで知り合った者同士が集まることでもめ事など色々なことを聞く。
僕は不安気にそういったことをチャットに打ち込んだ。
「大丈夫です!私が参加するオフ会はネット上での集合をかけた集まりではなく全員私のリアル繋がりの集まりなので! 私の大学の先輩……今は卒業したOBの主催者さんとかリアルで知り合った友達とか仲間内だけで構成されてるオフ会なんです。参加者はみんな私のリアルの友達なんです」
つまりネット上で知り合う仲間やオンラインでやりとりしていて初めてリアルで会う、といったものではなくその集まりの参加者はすでに光さんをリアルでよく知ってる人物達らしい。
「ソウジロウさんもミココさんも高校生なら年近い子もいますし二人とも私がここに紹介したっていえば歓迎されると思います! 何より一人でも多くのプラネットノースが好きな人を集めているところなので」そう光さんは続けて書き込んた。
僕はそれならば参加してみたい、と心が揺らいだ。
「よかったらそのオフ会参加者ののツイッターアカウント教えますよ。その方が当日話しやすいと思います。ミココさんも誘ってみてはいかがでしょう?」
そして光さんはそのオフ会に参加するという参加者達のアカウントを教えてくれた。
名前は「喜助さん」「モモさん」「モリタさん」という方々だ。
どの人もみんな「レトロゲームが好きです」とか「ゲーマーです」とか書いてる人達だった。
プロフィール欄にそういったことを書いていてどうやらプラネットノースが好きという人達で間違いないようだ。
僕はさっそくその人達をフォローすることにした。すぐにフォロー返しも来た。
その情報で信頼ができ、それなら大丈夫なのかな、と思い僕は気が緩んだ。
「何より新しい仲間が増えることを皆待ってます。オフ会に来るメンバーは私と、そこのアカウントに書いた主催者モリタさん、私のバイト友達のモモさん、友達の弟の喜助さん、みんなプラネットノースやゲームが大好きな良い人ですよ」
そういったことを話して今日のチャット会話は終わった。
オフ会か……と今まで行ったことがないものにどんなものか想像する。
もしもオンラインなどネット上ではなくリアルで会うことで自分の容姿を見られ、実際はトークもうまくないマイナスなイメージになったりしないかと心配だった。
やはりネット上で同じゲームをやりとりするのと実際に会うのは違う。
しかし光さんの同人誌を読んだことで新たな創作意欲が沸いたように、この新しいことへの挑戦は再びまた新たなインスピレーションを得ることができるかもしれないのだ。
どんな新しい挑戦でも失敗や犠牲はあるものだ。怖がらずに挑戦してみることで新たな道が開けるかもしれない。
僕は加奈にその件のことを伝えることにした。
「もしもプラネットノースが好きな人同士が集まるオフ会とかやるなら行きたい?」という文面を送る。
「そんなのあるの!?プラネットノースについて語れるチャンスじゃん!でもいきなりオフ会とか怖いな、どんな人が来るかわからないし」とあったので先ほど光さんに言われたことを一通り話す。参加者は全て光さんの知り合いだということだ。
「あの絵描きさんの知り合いならみんな濃いプラノスファンなんだろうな。
一人で行くなら絶対嫌だけど、同じ学校の宗助くんが一緒に行くなら考えてみる」と返事が返ってきた。
「プラネットノース」を好きな人達に実際に会えるという点が僕らにとっては行きたい理由だった。今までこのゲームを好きな人に会ったことがないのでリアルで会えるチャンスは滅多にないと思ったからだ。
何よりもあのクオリティの高いプラノス同人誌を作った光さんともっとお話しできるチャンスだ。加奈もやはりあのイベントの後、光さんの同人誌を読んで僕と同じように感激したと言っていた。
それだけ尊敬している人が誘ってくれたこのチャンス、乗るのもいいかもしれない。
こうして僕らのオフ会参加が決まった。
夏休み最後の日曜日。
お盆が過ぎてきて夏もひと段落してきたこの時期とはいえ外はまだ暑かった。
外では夏の終わりを告げるひぐらしの鳴き声が響き、お盆も終わって日常に戻りつつある街を日差しが照っていた。
オフ会の場所は都内のカラオケボックスに午後1時に集合、ということが光さんから組まれたオフ会参加者のグループDMで告げられていた。
僕と加奈はイベントの日と同じようにまたもや午前中から待ち合わせをしてオフ会の前に集まった。
ファミリーレストランの中は日曜日だからか人でいっぱいだった。
遊び帰りの学生の集団。休日だというのに仕事に出ていたサラリーマンなどがたくさんいる店内は外の暑い日差しの下と違って冷房が効いていてひんやりしている。
その雑踏の中に僕と加奈はいた。
初めてのオフ会ということもありファミリーレストランで今日はどんな感じでいけばいいかを事前に同じ学校の生徒同士で打ち合わせすることにした。
「うう、今日が光さん以外の「プラノス」ファンと集まる日……緊張するなあー」
加奈今日はいつもよりもメイクに気合を入れて年上の人と会うかもしれないから、と大人らしいデザインのワンピースを着ていた。
熱中症対策をしていたイベントの時とは違って今回はいかにも「人と会う」ことを大事にしたようなファッションだ。
気合を入れた加奈のファッションにいつも通りの外出用の服装で着てしまった僕は恥ずかしくなった。
「ねえ、みんなどんな人だと思う?オフ会に来るくらいだからやっぱりガッツリゲーマーな人ばっかかなあ?」
スマートフォンでオフ会のマナーというページを見ながら加奈はそわそわしていた
「でも、光さんに教えてもらったアカウントとか見た限り、みんな普通の人っぽいけどなあ。まあゲーム好きではあるみたいだけど」
「実際に会ってみるまでどんな人が来るかはわからんないね」
「でも、プラネットノースが好きな人ばっかりが集まるんだよね?これまで全然あのゲーム好きな人に会ったことなかったし、今年になって宗助くんと出会ってから一気に動き出したって感じだねえー。本当に私達のプラノスを広げよう、がなんだかちょっとずつ叶っている感じだし」
実質僕らの部活動で立てたプラノスファンを広げよう、の目標は今のところあくまでも僕ら以外のプラノスファンに会うチャンスが出来たくらいだが確かに動き出した感じはした。
実際は僕と加奈ではなく光さんというオンラインで知り合った人の手柄だが。
どんな話ができるだろう、など僕らはオフ会直前に盛り上がった。
昼食を終えるとオフ会の集合時間になり、ファミリーレストランを出て歩きながら集合場所に近づくにつれて加奈は緊張した様子で歩いていた。
オフ会会場は街角のカラオケボックスだ。割と人の多い繁華街で交通アクセスもよく確かにオフ会にはぴったりな場所だった。
ビル街から離れた場所で歩道の横の車道では車が絶えず走っていた。
その車の音がまたじわじわとこれから起きる出来事をさらに緊張させるように音が響いていた。
「もうすぐだね……」と加奈はつぶやいた
僕も「プラネットノース」が好きな人達に会えるということはどんな話ができるかな?とドキドキしていた。
今までこういった集まりは同じ学校の生徒同士とか同世代でしかやったことがない僕達は年上の人も来るというオフ会は初めての経験なのだ。
しかし十年も前から大好きなゲームで、しかもなかなか同士が見つからないマイナーゲームの集まりである、
思う存分そのゲームの話題ができると思うとちょっぴり期待もしていた。
しかしいくら好きなゲームの集まりとはいえリアルでは全く知らない人達の集まりだ。そういった点は注意して気を引き締めていかねばならない、とも思った。
集合場所のカラオケボックスが見えてくるとすでにカラオケボックスの前には数人が集まっていた。あそこがオフ会参加者の集まりだろうか?
自分達よりも一回り年上くらいの男性と、光さんと同世代ほどの大人の女性に、もう一人は僕らとそんなに年の変わらないくらいの少年だ。
知らない人ばかりの中、に近づくとその中には光さんの姿が見えた。
「あ、二人とも来ました!こんにちはー」
光さんは僕達を見つけるとさっそく挨拶をしてきた。
もしもオフ会の集団を見つけたらこちらからどう声をかけて混じればいいか悩んでいたので光さんは僕達が来ると反応してくれたおかげで助かった。
イベントで会った時と同じ顔で、すでに会ったことのある顔がいるだけで安心する。
知らない人ばかりの中にすでに面識がある人がいるのは全く知らない集団ではないと感じれて安心だ。
光さんの服装は大学生らしい大人びたブラウスにロングスカート。メイクもばっちりしていてそれにハンドバックやアクセサリーをつけ、バッチリとメイクも完備でマスカラをつけた睫毛が色っぽいまさに大人の服装だ。前の動きやすさ重視のイベントの時とは大違いである。
イベントの際のラフな格好ではなく今回はバッチリおしゃれを決めた女子大生らしいファッションなのだ。イベントの際は熱中症対策をしている服装なのであのラフスタイルだったのだろう。
光さんは僕らをそのメンバーに紹介した
「いきなり誘ったのに今日は来てくれてありがとうございます」というと
すぐにその待ち合わせメンバーに僕らを紹介した
「こちら、私がお誘いしたソウジロウさんとミココさんです」とハンドルネームを言うと
「二人とも熱心なプラノスファンで創作活動をしてらっしゃって最近知り合ったんです」とメンバーに紹介したのだ。
光さん以外のオフ会参加者は坊主頭に黒いTシャツにジーパン姿の少年と、眼鏡をかけた背の高い男性といかにも休日のOLファッションというワンピースを身に着けた髪の長い大人の女性だった。
そのうちのオフ会参加者メンバーの一人は
「熱心なプラノスファンと聞いて本日どんなトークができるか楽しみにしてます」と笑顔で僕らにあいさつした。とは言え僕と加奈にとっては光さん以外は初めて会う人ばかりだ。一応事前にオンラインでアカウントをフォローしたとはいえ初対面の人に失礼があってはいけない。
僕と加奈は初対面のオフ会参加メンバーに挨拶をした。
「お誘いありがとうございます。今日はよろしくお願いします」と僕が言うと加奈も「よろしくお願いします」と負った
光さんもだが他にも年上のような人達がいたので緊張したが初対面の挨拶は大切だ!と打ち合わせでやったように僕たちは挨拶をした。
集まったメンバーは僕と加奈と光さん以外は男性が二人と女性が一人の合わせて七人だった。
僕達が挨拶を済ますと、このメンバーの中では一番年上らしき人が
「ではメンバーもそろったことですし、部屋に行きましょうか!」と仕切った。
主催者らしき男性が取り仕切り、僕らはその主催者とオフ会参加者メンバーについていきカラオケルームの受付をした。
フロントに主催者と思われる男性は慣れた口調で受付をしていた。
「人数は七人で。大部屋でお願いします。ドリンクは飲み放題プランで……」
その口調からしてオフ会自体が初めてな僕と違い、他の参加者はすでにこのカラオケボックスの常連とわかる。
今までリアルでプラネットノースが好きな人達に会ったことはなかったがやはり日本にも探せば同士はいるものだ、とぼんやり考えながらぞろぞろと指定された部屋に入ることになった。
部屋に案内されればカラオケルームはいつも友人と来るような個室ではなく、多人数用の大きな部屋だった。ソファーがあり、中央に大きめのテーブル、そして前にはカラオケの機材。モニターの横にはミラーボールが輝き、まさに大人数で楽しむには適した部屋である。
参加者は部屋に入ると荷物を下ろし、各自好きな席に着く。
僕はとりあえずすでに顔を知っている光さんの右隣に座った。それにつられるように加奈は僕の横に座る。同じ高校の仲間としてよく知っているので加奈は僕の横を選んだのだろう。
確かに知らない人だらけの場所ならば同じ学校の人の隣に座る方が安心だ。
光さんと加奈の中央に挟まれるように座る形になった僕だが今は女子に囲まれてるとかハーレムとかそんなことを考えている余裕もなくオフ会できちんと話せるかの緊張ばかりでそれどころではなかった。
(いよいよ始まる……)
そんな僕の緊張とは裏腹に、初参加の僕と加奈以外のメンバーはすでに打ち解けているのか
微塵もそういった緊張の雰囲気はなく、すでにワイワイとやりとりをしながらドリンクを注文していた。
初対面の人ばかりだがみんな同じゲームが好きな人ならすぐにしゃべれるだろうか?もしも初対面で緊張で上がったばかりで何も話せなかったらどうしよう、加奈の前で恥をかくかもしれない、という不安がよぎった。
まずは注文した飲み物が部屋に運ばれると、オフ会は始まった。
「みなさん飲み物はいきましたか?では恒例のプラノスファンの会始まりまーす!」
主催者と思われる男性は立ち上がり、仕切ってオフ会は最初によくあるという自己紹介タイムが始まった。
「まずは今回から初参加のお二人から自己紹介してもらおうかな?」
と言われ最初の自己紹介は僕と加奈からだった。
僕はあらかじめ考えておいた自己紹介の台詞を言った。
「ソウジロウです。「プラネットノース」は子供の頃から大好きで今もよくプレイします。ちまちまとオンラインにプラノスの絵とか作品をアップしてます。「プラネットノース」は僕にとって神ゲーです」
オフ会では本名じゃなくてオンラインで使っているハンドルネームを言うし題材のゲームへの情熱を言う、という点もバッチリだ。
「じゃあ次はそっちの方どーぞ」
次は加奈が指名された。
加奈は席から立ち上がり、自己紹介をした。
「ミココです。「プラネットノース」大好きでよく趣味のピアノでゲームの音楽を演奏したりしてます。最近はオンラインにプラノスの小説をアップしたりなどもしてます。このゲームについていろいろ語りたいです!」
加奈の自己紹介も問題なく最初のハードルはクリアだ。
そして他の参加者メンバーの自己紹介が始まった。
僕より一回り年上の主催者と思われる男性が自己紹介を始めた。
「主催者のモリタです。今は会社員です。「プラネットノース」は発売当時に買って子供の頃から大好きでした」
アカウントですでに知っていたが主催者のモリタさんはこのゲームの発売当時からのファンなのだ。これは今まで僕は従兄弟以外には会ったことのないタイプだ。
発売当時からあのゲームのファンという人自体が僕の世代的には貴重である。
そこに光さんが僕と加奈に言った。
「主催のモリタさんは私の大学のOBで今は卒業して社会人だけど、よくゲームのイベントとか参加しててこういうオフ会の主催も慣れてるんだ」
なるほど。そういったゲームのイベント参加に慣れているからオフ会の主催も得意なのか、と納得した。
その次は参加者の一人の女性が自己紹介を始めた。
「モモです!『プラノス』は二年前にプレイしたばかりでみなさんよりまだまだファン歴としては浅い方かもしれませんがこのゲームへの愛を語りたくてオフ会に参加させていただいてます。よろしくお願いします」
光さんに続いて大人の女性と話をする機会はあんまりないので年上の女性にどう接したらいいかがわからなかったが事前に見ていたアカウントと自己紹介を聞く限りモモさんというこの方も明るい方で話すことができそうだ、と安心した。
その次は参加者メンバーでは若い方の僕らと年が変わらなさそうな少年が自己紹介を始める。
「喜助です。高校2年生です。プラシンは中学時代にプレイして好きになったのでファン歴4年目です。このゲームの情報を少しでも集めたくてオフ会に参加しました」
喜助さんは僕と年が近い。同じく高校生のプラノスファンとなれば話は合うのではないかとどことなく安心感があった。やはり年上ばかりの中ではなく同じく高校生という年齢が近い人がいるだけでそこは違う。
そして光さんが僕と加奈に喜助さんのことを話した。
「喜助くんは私の友達の弟でソウジロウさんとミココさんと同じく高校生なんだけど、若いのに古いゲームにすっごく詳しいんだよ!」
僕としても年上ばかりのオフ会だと緊張するので同じく高校生という年の近い人がいることはどことなく安心だ。
「今日光さんが連れてくる2人も高校生ってことで年が近いお仲間と会えるってことで楽しみにしてました。年も近いしお二人とは仲良くしたいです」
そういわれ、「よろしく」と相槌をうった。
そんな感じで自己紹介は終わり、トークタイムになった。
内容はもちろん「プラネットノース」についての話題だ。
まずは主催者のモリタさんから参加者へのプラネットノースの話題をふった。
「みなさんこのゲームって何週くらいプレイしましたか?僕は子供の頃から二十年間やってるんでもう十六周くらいプレイました」
主催者といわれるだけあってこのゲームへの熱意は凄く、そのプレイ回数に僕は驚いた。
さすがはこういう集まりの主催をするだけはある。
「僕は八周ですね」
僕は素直にプレイ周回数を言った。
「おお、ソウジロウさんも結構やってるじゃないですか」
ガチ勢の方にそう言われてると自分の熱意を認められたようでなんだか照れ臭い。
「光さんから聞いたんだけどソーヤさんとミココさんは同じ高校のなんですって?」と聞いて来たのはモモさんだ。
「そうなんですか!?同じ学校で同じ趣味の仲間がいるっていいなー。俺の高校にはプラシン知ってる人いなくて。いつもこのゲーム語れる仲間とか同じ年代にいないんですよー」
同じ年代の高校生である喜助さんが言う。その気持ちはよくわかる。僕も加奈とプラネットノースが好きという同士として知り合う前はそうだった。
年が近いだけあって、喜助さんは加奈と会う前の僕と同じような経験をしていたと知る。
「いいなー。羨ましいー!同じ学校に趣味の合う仲間とか。やっぱ身近にお仲間がいて楽しいですか?」
モモさんに言われて加奈は答えた。
「はい。元々ソウジロウさんが「プラネットノース」についての活動しよう!って誘ってくれて、それでSNSとかオンラインでの小説投稿とか始めることにしたんです」
加奈が僕のことを言うのでなんだか心の中でちょぴり照れ臭い。
「でも高校生とか今の若い子ってスマホゲームとかパソコンのブラウザゲームとか無料でできるゲームがメインじゃない?」
年長のモリタさんが言う
「そうですね。僕の友達は結構今でもコンシューマーソフト好きな子いっぱいいますが……。やっぱりお金のかからない無料でできるお手軽なスマホゲームは人気ですね」
僕は今でもゲームはコンシューマー派だが学校の同世代の友人達にはやはりスマホなどでお手軽にできるソーシャルゲームが好きな人も多い。
「ゲームはやっぱコンシューマーがいいよね。最近の新作ゲームはソシャゲばっかりでコンシューム少ないのはやっぱりコンシューマーがメインだった時代を育った俺としては寂しいなあ」
「わかります。私もスマホよりやっぱりコントローラー握ってる方が「ゲームしてます!」って感じで好きですね」
「その中でもプラネットノースはやっぱり別格だよね!あのストーリーも凄いし」
そしてやはりこのオフ会のメインであるプラネットノースの話題に繋がる。
そんな感じで会話が途切れることもなくオフ会は順調に進んだ。
カラオケルームの照明は薄暗い部屋を照らし、その雰囲気はカラオケルームだというのに歌ではなく会話がメインでも楽しいものだった。
自己紹介と雑談で打ち解けたことで僕も少しずつ自分を出していた。
「ソウジロウさんとミココさんは高校生ってことはまだこのゲーム発売した時は生まれてないですよね。どこでこのゲームを知ったんですか?ぜひそのきっかけを教えてほしいです」
そんな話題が下りた。若い世代が自分が生まれる前の古いゲームを知っていればそんな話題になるのも当然だ。ただでさえメジャーではない学校で話題にあがることもないであろう名ナーなゲームをどうやって知ったのだろうかということだ。
「僕は年の離れた従兄弟がいるんですけど、その人がよく自分がクリアしたゲームソフトをゆずってくれたんです、ハードごと。それを昔プレイして好きになりまして」
「私も昔ゲームショップで見つけて買いました。兄がハードを持ってたので。それでプレイしてみたら好きになって……」
その答えに「へー」や「まさにそれが運命ですね!」といった声が上がった。
「ちなみに俺は四年前、ネットで評価サイトみてたらこのゲームのレビューみつけて興味持って。それで面白そうだからソフト探して買ってはまったんすよ。中古ショップとか何件も回って探しまくったなあ。その苦労もあってプレイできた時は嬉しくて。以来どっぷりなんすけどね」と喜助さんが言った。
「僕は発売当時小学生なんだけど、発売当時に雑誌の特集見てなんですよ。だから発売日に買ったんですけど、周りの友達はあんまりこのソフトに注目してなくてあの頃買ったのは僕だけでしたね」
主催者のモリタさんが言う。
二十年前に発売のゲームでその当時もう小学生ということはやはりモリタさんは一回り年上だった。まさにこのゲームの発売当時のリアルタイム世代だ。
このゲームを知ったのはそんな昔からだけあって愛が深いのも納得である。
「私はツイッターでフォロワーさんにオススメされてですね。だから大人になってからプレイしたんでみんなのように子供の頃からの思い出とかないから昔から好きだったってのが羨ましいです」
モモさんが言った。
こうして同じゲームが好きでありながら、知った時期もはまったキッカケも違うとなるとみんな好きになったきっかけはそれぞれバラバラなんだなあと僕は思った。
最初は初対面の人ばかりで全然話せなかったらどうしよう、と思ったが共通のジャンルが好きということはその話題が中心になるのでネタは尽きることなくポンポンと話せた。
共通のテーマで集まるオフ会というものはこんなにも楽しいものなのかと思った。
その共通のジャンルが好きな者同士の集まりだからこそ、百パーセントそのジャンルの話題だけができる。
オフ会は一向に盛り上がり、あっという間に開始から一時間が経過した。
飲み物以外に注文したフードもテーブルに来て、あっという間にパーティ状態だ。
テーブルの上にはピザやフライドポテトにナゲットといったつまみやすいメニューが並んだ。これもオフ会参加費から支払われてるらしい。会計の時に割り勘だ。
それぞれがフードをつまみながらドリンクをおかわりしたり胃が満たされていくとモリタさんが言った。
「今日は「プラノス」集会ということで今日は俺のコレクションを持ってきました」
主催者のモリタさんは自分の鞄から何やら物を取り出し、机の上に置いた。CDケース、書籍に何年か前のゲーム雑誌などが色々机に出した。
数々のそのコレクションはどれも表紙やパッケージがプラネットノースの絵である。ゲームソフトのパッケージと同じ絵のCD。初めて見るデザインのプラノスのキャラクター集合絵の書籍などだ。
これは今までネット上でのみ見たが実物を見たことはなかった『プラネットノース』の公式攻略本だった。さらにサウンドトラックCD,設定資料集、ゲームの発売当時のゲーム雑誌などを持ってきたようだ。
それらは僕が今までネット上で存在を知り、欲しいとずっと憧れていたプラネットノースの公式から販売された書籍などである。
それが今、目の前にあるのだ。
「すごい、攻略本や設定資料集なんて初めて見ます!」
僕は興奮のあまり声を上げた。こういう発売当時の関連物は今まで見たことがなかったのだ。
僕が「プラネットノース」を知った時期はすでに発売から十年も経っていてこの手の関連物はもう店では手に入らなかった。
攻略本やサウンドトラックはすでに絶版しており、一般の書店やCDショップで見かけたことはなかった。
中古書籍を取り扱う古本屋チェーン店などを何件も回っても一度も攻略本を見かけることはなかった。
今の時代なら攻略情報はネットで検索すればすぐ出てくるし、説明書だけで十分だと思っていたがそれでも攻略本に記載されている文章は気になっていたし、そこでしか見られないイラストやアイテム絵などもずっと見てみたかった。
その攻略本を実際にこうして目の前にするとやはりすごいと感じる。
「こういうの、今までは実物見たことなかったです。きっとこの世のどこかにはあるんだろうと思ってましたけど……」
僕は長年憧れていた書籍を目の前にした感動でつい言葉をもらした
「これ、今じゃすっごくレアなんだよね。ぜひ今からでも一人でも多くのプラノスファンに見せたくてもってきました」
持主のモリタさんは自慢げに言う。
「さっそく読んでみてもいいですか?」
僕は興奮しながら目をキラキラさせて言った。
「どうぞどうそ」と言われ僕は攻略本を手に取って中身を見る。
今までずっと大好きだったゲームの攻略本を読む興奮に手が震えた。中身は最初はストーリー紹介に登場人物紹介が始まり、説明書とはまた違う細かいプロフィールや公式イラストが載っている。これだけですでにネット上にある攻略サイトとは違う感覚だ。何せ公式で発売された攻略本なのだから。後半の攻略本こページはダンジョンマップやアイテムデータに攻略チャート。
散々プレイした僕にはすでに知ってる情報ばかりだが、それでも公式から発売されたリアルタイムの書籍を見ることには感動した。
「すごい!まさにプラネットノースの情報満載だ!ああー!この本が昔あればこのイベントも見てたのに!」
攻略本に掲載されているサブイベントの発生の仕方は四週目ほどしてからネットで得た情報でようやく見ることができた。
できればこのゲームを知った当初にこう言った攻略本があればよかったのに、と惜しむ。
あんまりにも攻略本に夢中になる僕に「ソウジロウさん、ぜひこっちも読むといいですよ」とモリタさんはさらに「プラネットノース公式設定資料集」とかかれた本を僕に差し出す。
「この公式設定資料集はもうプレミアついてるやつですね!すごく読みたかったんです!」と僕は再び感激の声を漏らした。
こういったゲームの設定資料集といった本は発売が昔のものだとネット上では高額な金額で販売されたりマニアの間でレア品扱いでプレミアム価値がつくことがある。
元の値段は千五百円ほどの書籍でもプレミア価格がつけば一万円を超えるなんてことはザラだ。
そもそも中古で見つけること自体がない。ネットオークションなどで見つけることができても高額なのだ。
このプラネットノースの設定資料集もそれにあたり、とてもだが高校生の僕の手に届くものではなかった。
「はい、ありがたく読ませていただきます」
僕は一礼すると、攻略本の次は机の上に置かれた設定資料集に手を伸ばした。
攻略本が一般的な書物であるコミック本ほどの大きなで設定資料集はA4サイズの大判書籍だった。
それでいて厚さは百五十ページとそこそこある。
この中身も百パーセントプラネットノースだけの内容で構築されているというとまさに夢の本のようだ。
攻略本だけでもすごいのに設定資料集までがこの日にまさか実物が見れるとは思っていなかった。
設定資料集のページを開くと脳に衝撃が走った。今までゲーム上のグラフィックと説明書でしか見たことがなかったキャラクターイラストが攻略本以上にたくさんあり、説明書にはのってないサブキャラクターイラストまでが掲載している、キャラクタープロフィールは攻略本以上に細かく掲載されており、ゲーム本編内では出てこない秘密設定も載っていた。
さらに開発者インタビューでの制作秘話にあの世界を細かく紹介する背景画などがびっしり掲載していてまさに理想の公式本である。
これがあればイラストや二次創作に役に立つ……と僕は改めてこういった公式書籍を持っていないことを羨んだ。
今まではファンアートは説明書やゲーム画面上でわかる範囲のキャラクターしか書けなかったからだ。
このゲームを僕に教えてくれた輝兄ですらこういった公式書籍は所持していなかったのだ。
オフ会に来たらプラネットノースについてのトークができるだけではなく関連書籍まで見れるとはまさに夢の時間だ、と僕は幸福に包まれている気分だった。
僕が書籍に夢中になっている間、加奈は女性参加者同士で同士でトークを盛り上げていた。
ふと加奈の方を見ると、加奈もトークが終わると机の上のコレクションに目を向けた。
「サントラっていいですね! これがあったらいつでもプラネットノースの音楽が聞けるなんて素敵です……!!」
加奈が机に置かれたコレクションの一つであるCDケースを見て言った。
攻略本などの書籍に夢中になっていた僕とのように、加奈は音楽方面のサウンドトラックCCDに心奪われていたのだ。
加奈はCDに虜になっていたのだ。加奈は音楽が得意なだけあってピアノでよく「プラノス」の曲をひくほどこのゲームの音楽が大好きだ。
しかし僕と同じく今までプラネットノースのゲームソフト以外の公式関連の物は何一つサウンドトラックはもっていないと以前聞いた。
なのでいつもゲーム内で流れるBGMから耳コピで音楽を再現していたのだ。
「これがあればきっとプラネットノースの音楽聞き放題なんですよね……!いいなあ……。もっと音楽聞いてピアノで演奏したい……」と加奈は目をギラギラさせていた。
「そっか、ミココさんプラネットノースのBGMが好きでよくピアノ弾いてるってさっき言ってましたもんね」
光さんが口を挟んだ。
「ピアノひけるってすごいですね!プラノスではなんの曲が一番好きですか?」と参加者が聞くと
「私はタイトル画面のメインテーマが一番好きですね。まさにあのゲームの世界観を表現した曲って感じで」
タイトル画面のテーマとはまさに僕が加奈と話すきっかけになったあの日、音楽室のピアノで弾いていた曲である。
「わかります! やっぱりゲームの代表するテーマ曲でSFチックでいい曲ですよね!」
参加者全員がその意見には賛同した。
「僕たちが知り合ったキッカケも元はミココさんが音楽室でプラノスのメインテーマを曲を演奏してたのを聞いたからでした」
僕は思わず加奈との出会いを口にした。
「そうそう、それでソウジロウさんがプラノスの曲だよね? って言ってきたことが始まりなんです」
「すごーい! それって運命みたいですね!」
「まさに青春って感じで感動的な出会いじゃないですかー!」
参加者のモモさんと光さんの女子組が僕達がそんな出会いだったとキャーキャーと女子学生のような黄色い声で言った。
ある意味ドラマのようなロマンチックな出会いではあったのかもしれない。とはいえそういった期待を寄せるような感じではなかったが。
「よりによって同じ学校でしかもクラスメイトでそんな出会いってありですかね!?すっごい偶然じゃないですか!? ただでさえマイナーなゲームなのに同じ年度に同じ学年でコアなファン同士がひかれるって。まさにプラノスが仲間を引き寄せてくれたって感じですね」
僕らの話題に場が盛り上がった。
確かにそういわれれば自分が生まれるよりも前のゲームを推してる者同士が同じ学校、同じ学年・同じクラスで出会ったとは偶然だとしても凄いことなのかもしれない。
僕と加奈はお互いの出会いについてのその盛り上がりにお互い照れて顔を赤らめた。
そしてさらにプラノストークは盛り上がり様々な考察が生まれたり、どのイベントがどう思うなどオフ会は順調だった。
ここにいるのはやはりプラネットノースを心から愛する者達なのだと、ここに来てよかったと思うのであった。
トークタイムにあっという間に数時間は経過していた。
途中、光さんは持参のスケッチブックと画材にあとでオンラインにアップするであろうオフ会開催記念のイラストを描いていた。。
それを見て僕も何か書きたくなった。
「ソウジロウさんもなんか描きます?いつも絵描くのすっごくお上手ですよね。生イラスト見てみたいです」と
光さんの厚意でスケッチブックのページの紙を一枚おすそ分けされたのでさらに画材も貸していただき僕もプラネットノースのイラストを描きあげることにした。
いつもは部室や部屋で描くことが多いイラストをこういった濃い空間で描くのは初めてだが逆にプラノス好きだけの空間ということもあり、スラスラと描くことができた。
最初はどのキャラを書こうか迷ったがせっかくなのでパーティキャラ全員をラフスケッチで描くことにしたのだ。
それを「できました」とすぐに周囲に見せる。
「ソウジロウさんも絵が上手ですね!」
「こんなスラスラ短時間で描けるなんてすごいです!」
僕の絵はまさにべた褒めの嵐だった。
絵を描き上げてすぐにその場で直接言われた台詞はネット上でもらう時間差コメントよりもリアルタイムで何倍も嬉しかった。
オンラインならばイラストをアップロードしたとしても感想のコメントが付くのには時間がかかるがこういったリアルタイムの場だと描き上げて数秒で反応が来るのだ。
これはオンラインでは味わえない経験である。
オフ会は盛り上がってその他にも好きなイベント、好きなダンジョン、好きな敵などゲームの雑談からリアルタイム世代のモリタさんの貴重な当時の背景に、ネットで拾った制作スタッフのインタビューの話題に、ネットで有名な噂などだ。
「プラネットノース」でこういう会話をしたかったんだなあ、と感じた。
各自話したいことを言い合い、そしてトークに熱が上がる
一通り話終えると時刻は夕方の五時に近くなり、閉会の時間が近づいてくる。トーク内容も次第とまとめに入っていき、最後にみんなで今日の感想を言い合った。
僕は今日のオフ会は今の時代では絶対に見ることはできないと思っていた攻略本や設定資料集の類が見れたことが感激であった。
ネット上にある中古通販サイトではどれもプレミアム価値がついておりとても値段が高くて手が届くものではなかったからだ。
「僕、今日は「プラネットノース」の関連書籍が見れたことが感動です。見ることはできないと思ってたので……」とつぶやいた。
するとそれを聞いたモリタさんは「こういうのってたまにネットとかで買える場合あるけどそういうのはチェックしてないの?」と聞いてきた。
「ネットオークションとかフリマアプリとかでごく稀に出品されるの見るには見るんですけど、ああいうのってクレジットカード支払いが必須だったりで」
今はこういった絶版書籍はもはや中古のフリマアプリなどが頼りになる。
「そういったツールは未成年での取引NGの場合が多くて高校生だと利用できないものが多くて……」
僕はネット上でのレア品の入手が自分にはハードルが高い理由を言った。
値段がプレミアム価格だから、というのも理由の一つではあるが、ネットオークションやフリマアプリといった個人取引の売買はクレジットカード払いでクレジットカードを持つことができないと支払い手段がなかったり、元々そういった取引は未成年、つまり高校生は取引自体ができなかったりすることが少なくないのである。
そういう時、いつも大人はいいなあと自分の年齢を呪いたくなる。
「オレも高校生だからそういう壁にぶつかるしコレクション集めとかホント苦労するんでその気持ちよくわかります」と喜助さんが言う。
まさにそれが未成年にとっては大きな壁なのだ。
「もし利用できたとしてもプレミア価格だとさすがに手が出せませんね…。ゲームの廃盤になったサウンドトラックなんて数万円の価値になるし。設定資料集も攻略本も定価よりずっと高いプレミア価値ついてますし」
加奈が気になっていたサウンドトラックCDも今ではプレミア商品だ。
ゲーム市場ではサウンドトラックCDなどは廃盤になれば中古価格がプレミアム価値になることがある。もう新しく発売されておらず、発売当時に販売されたCDの残りの数だけが希少価値になるのだ。
今や音楽はCDよりもデータ配信がメインの時代とはいえゲームのサウンドトラック等は版権的な理由でなかなか配信もされないのである。
僕にはやはりこういう昔のゲームの公式商品を手にすることはこれからもないだろう、と改めて思った。
諦め気味でそう伝えると、モリタさんがある提案を出した。
「それならさ、レトロゲームの専門店とかはどうかな?」
その言葉に僕は「レトロゲームの専門店?」と頭にクエスチョンマークがついた。
今では個人商店のゲームショップすらも少なくなり、ゲームの取り扱い店舗が大型チェーン店がメインの時代だとそういった専門店があることすら見たことないのだ。
「秋葉原によくそういう店あるんだけど。つまり古いゲームソフトや攻略本なんかを取り扱ってる店。レトロゲームの商品を中心に扱ってる店舗がいくつかあるんだ。そこなら年齢関係なく買えると思うよ! 店頭販売なら傷や痛みありとかの条件にはなるけど値段も少し安かったりするから」
今までゲーム関連の商品を買う場所といえば自転車で行ける範囲の地元の町とその周辺のゲームショップや大型中古チェーン店くらいだ。
わざわざ電車を使わなくてはいけない場所にイベント以外で足をのばしたことはない。
一応過去に秋葉原自体は友人の付き合いで何度か行ったことはあるがレトロゲーム系のショップには寄らなかったのだ。秋葉原にそういった店があると知らなかった。
「あるんですか? そんな店!」。
今までネットショッピングでもダメだと思っていたら実際に店で取り扱いをしてる場所はないと思っていたがその秋葉原にあるというレトロゲーム専門店ならそういったネット上では高額取引されている昔のレア商品もあるかもしれないというのだ。
「せっかくだから今度行ってみたら?オススメの店の名前と場所、教えてあげるよ」
そう言われモリタさんは詳しい話を教えてくれた。
秋葉原に存在するという数件のレトロゲームショップの店の名前を教えてくれたのだ。
あとは店名で検索すれば所在地のマップも出てくるらしい。
どうやらどこの店も駅前周辺ではなく市街地から少し離れた場所にあるようで僕が知らない店ばかりだった。秋葉原といえば電気街でアニメショップが多い町、と認識していたからそういったレトロゲームの店があることを知らなかった。
「ありがとうございます。この店、気が向いたら行ってみますね」
「うん。こういう店ってゲーム好きにはレアなものとかもあったりするからきっといいもの見つかると思うよ」
今日が初対面の人間にこんな情報を教えてくれるなんていい人だなあと思った。
オフ会は最後の締めに差し掛かると、最後はカラオケルームらしく参加者がそれぞれ一曲ずつ持ち歌を唄って盛り上がった。ゲームのオフ会らしく有名RPGの主題歌が唄われることが多いのも普段友達と行くカラオケとまた違って面白い。
オフ会の終了時刻になりカラオケルームを出ることになった。
その後は二次会として安いチェーン店のレストランでみんなで食事をすることになり、そこでも引き続きゲームについての熱いトークをしながらの食事は楽しかった。
一次会ではできなかったスケッチブックのイラスト交換もして趣味が合う者同士での食事は楽しかった。
時刻は夜七時になるとそろそろ解散だ。
参加者には未成年もいるからという理由で終わる時間も早めなのだ。夏も終わりに差し掛かった夜はまだ少しだけ明るくそして涼しかった。
うっすら暗くなった空に一番星が輝いていた。
うす暗い夕方の道を車のライトが道路を走っていくのが見えてその光景に「もう終わりか」と僕は少しだけ終わるが寂しい気持ちだった。
ファミリーレストランを出て、皆まだまだ話したらないとばかりに名残惜しそうに終わりを迎えた。
加奈はすっかり光さんとモモさんの女子組とも打ち解け、僕も色々話すことができた。
普段あまり接点がない家族や親戚以外の年上の方々とも共通の趣味があるとなれば話すことは尽きることもなく最後まで楽しめた。
参加者の前で主催者のモリタさんが解散の挨拶をした。
「ではみなさん家に帰るまでがオフ会です。気を付けて帰ってくださいね!」
解散の挨拶が終わると
「またSNSとかオンラインでもみなさんそれぞれ絡んだり楽しくやってください」
明るい締めでオフ会は終了し、それぞれの帰宅へついた。
僕と加奈は途中まで同じ電車なので解散後も一緒に帰った。
電車の中は日曜日のお出かけからの帰りの家族連れで混雑していた。
電車の座席には疲れ切ってうとうとしている子供、これから帰る為にスマホを見てる者色々な乗客が乗っていた。
僕と加奈は座席に並んで座り、帰路の途中小さな声で今日の感想を言い合った。
「今日のオフ会、すっごく楽しかったね!」
行く前は不安がっていた加奈は無事にオフ会が終わった今はすっかり上機嫌だ。
「やっぱり生で会う「プラノス」好きは違うね。みなさん本気であのゲーム好きなんだなあってわかったし、熱気が違うね」
帰りの電車の中でツイッターにオフ会レポートをツイッターに書き込みながら加奈の話を聞いていた。
「ねえ、来週さっそく宗助くんがモリタさんに教えてもらった秋葉原のお店、行ってみない?」
すると加奈は今日のオフ会で教えてもらった店の話題を出してきた。
「え?さっそく行くの? 僕と?」
オフ会の直後にすぐそれとは気が早い。しかも僕と加奈の二人で行く方向になっている。
「だって「プラネットノース」の商品が直に買えるチャンスなら一刻も早く見つけて手に入れたくない? そのお店に置いてある商品はその場限りなら早くいかないと他のお客さんが買うかもしれないから早い者勝ちっていうし。私達の活動としてそういう場所に直接足を運んで実際に見てみるってのも経験の一つじゃないかな?宗助くんもイラストの為にゲームの資料欲しいなら、もしそこで買えたら役に立つと思うよ」
なるほど。それも一理あった。
中古商品は現在販売されている商品と違ってそういった店では現品限りなのだ。それならば一日でも早くその店に行きたいという理由もわかる。
「私、秋葉原って行ったことなくて。一人で行くのはちょっと不安だから…宗助くんは秋葉原に行ったことある?」
「ぼくは友達と何回か行ったことあるけど」
僕はアニメ好きの友人に誘われて秋葉原には過去に何度か行っていたがそれは友人の誘いで駅前周辺のアニメ系のショップに行っていただけである。
そうなると今回教えてもらったようなレトロゲーム系のお店には行ったことがなかった。
秋葉原は大人が多いのでなんとなく学生の自分一人で行きたいという気持ちがなくて友人としか行ったことがない。
それだと自分好みのゲームの店にはなかなか行けず、どうしても友人の趣味に合わせた店しか行ったことがないのだ。
「でも今日教えてもらったようなレトロゲーム系の店には行ったことないよ」
「でも秋葉原には行ったことあるんだよね?じゃあ行ってみようよ。これもゲーム研究会としての活動だと思って」
加奈にお願いされてこの機会に今まで一人では行くことがなかったレトロゲーム系のお店に行ってみるのもいい機会じゃないかと思った。
ゲーム研究部の活動というのならゲーム関連の店へ行ってみることも立派な課外活動だと思えたからだ。
なによりこれも「プラネットノース」の為の活動という免罪符もあると思えばいいと思えたからだ。
そうしているうちに電車は加奈の最寄り駅まであと少しだった。
「わかった。じゃあ店の位置とか調べておくから、また詳しいことはラインで知らせるよ」
僕は了承することにした。
「やった! 楽しみだなあ」
加奈の笑顔が見れるなら、それもいいかなと思った。
電車が駅に着くと、加奈は降りる準備をして座席を立った
「じゃあ、またね!」
別れの挨拶をして加奈は電車から降りて行った。降りる乗客に紛れて加奈の姿は見えなくなっていく。
オフ会のついでに新しい目的もできて僕も楽しみではあった。
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