第2話 ようこそゲーム研究部へ
翌日の放課後、僕は三島さんとゲーム研究部の部室に来ていた。
「へえ、こんな部もあったんだねえー」
三島さんは部室に入るやいなやきょろきょろと辺りを見回していた
「いつもここで部活動してたんだね。」と言いながら三島さんは机の前にあった椅子に腰をかけた。
僕は今、ゲーム研究部の説明をするために三島さんを部室に呼んで解説をしている。
部室の隅にある本棚にはゲーム系の資料があって、パソコンなどデジタルな機材のあるこの部室に女子が来るだけで雰囲気は違って見えるものだ。
「でも、三島さんが本当にここへ来る気になったなんて意外。急に誘ったし」
「ううん、私こそ自分に合う部活探してたから、ちょうどよかったと思う」
僕は三島さんにゲーム研究会への入部はどうだろうか?と勧めたのである。
仲間が欲しい、好きなことで活動したい、もっと新しいことに挑戦をしたいという三島さんにはゲームについて活動できるこの部が今はぴったりだと思ったからだ(正直僕も廃部寸前なこの部に入部希望者が欲しかったからという想いもあったが)
そこでそれならばこの部活の時間を使ってプラネットノースについての活動をするのもいいのではないだろうか?
この部活はゲーム研究部とだけあって家庭用ゲームについての考察等も立派な活動になるのだ。
まずはこの部活を勧めるにあたってこの部活の説明をせねばならない。
そのために今日はまず部室を案内することにしたのだ。
「僕もこの部に入ってまだそんなに経ってないから詳しいこと部長の先輩か顧問の先生に聞いた方が早いけどね。まあでもざっとした説明は僕も入部の時に聞いてるから」
ざっとこの部活の説明を始めた。
このゲーム研究会の主な活動内容は市販されているコンピューターゲームのイラストや漫画を描いたり、考察もしくはコラムなどの作成。日々活動した記録をつけること。ここで書いたものを活動記録としてファイルに残す等である。
各自活動で得た知識を校内新聞に載せる場合も有り、などなどこの高校に入学してすぐこの部活を見学に来た際にいた部長と数人の在校生の先輩から聞いた。
とはいえこの部活は参加自由で部員は他の部活と兼部だったり幽霊部員だったりでなかなか部室に集まる機会はないのだが活動したい者がいれば部活動の時間にここへ来ていいのだ。
それなら今の僕たちのプラネットノースという家庭用ゲーム機について語ったりそれを活動の記録として残せるのであればちょうどいいと思ったからだ。
「それで、堀田くんの考えとしてはこの部でどんな活動をするのが目的なの?」
「それはね……」
僕はコホン、と咳払いをしてから宣言した。
「僕たちで『プラネットノース」へのファン活動をしよう!」
僕は堂々を言い放った。
今まではこの学校では僕だけでこの部活でゲーム研究会らしいことをしていたが
新しい仲間が増えてなおかつ同じゲームが好きとくれば活動らしいことができると踏んでの作戦だった。
「活動?そりゃあまた大胆な作戦だね。で、詳しい概要はなんなの?」
「では……ごほん」
僕は改めて説明する体制に入った
「「プラネットノース」こと「プラノス」をこの時代に好きな人が少ないなら僕たちでこのゲームの良さを広めるための活動しようという作戦です。今の世の中でこのゲームを知る人が少ないのなら、いっそならば数少ない僕達ができる行動、それがこの作戦です」
と、僕は説明した。
「すっごく面白そう!」と三島さんは表情を輝かせた。
しかしその反面、現実的なことを言った。
「でも、私達だけで無謀じゃない?元々、二十年も前のゲームだし、配信とかもないから今の時代にプレイするなんて難しいし……。ましてや大ヒットってほどじゃないし、今の時代にはマイナーな扱いのゲームを今から布教とかできるかなあ?同じ学校にすら他の同士がいないのならもう難しいんじゃ……。」
それは僕も今まで生きていて何度も思ったことだ。
「うん、まあだからそれを僕らで変えようって話ですよ」
僕は三島さんに向き合うような位置の席に座った。
「それで、その広大な計画として具体的な活動は何をするの?」
「それはとりあえず最初にすることを考えてることにする」
かっこよく言い切ったものの、僕もまだ深くは考えていなかったのだ。
「うーん、プラノス的に言えば最初のダンジョンでまず水晶の謎を解き明かす時並に最初の大一歩だねえ。まずは西の部屋にある水晶を持ってこい的な」
この状況を好きなゲームに例えるとはさすがは三島さん、あのゲームが好きなだけはあるなあ……等など関心しながらとりあえず僕は最初に思いついたことを言う。
「マイナーなゲームだけどきっと同じこの世界になら少なからずともこのゲームについて知ってる人はいるはずだし、まずはそのお仲間探しから始めることが重要かな」
「仲間探しって……ただでさえ今までこのゲーム好きな人に会ったことないのに?そんなことできるの?」
疑問が入った声で三島さんは言った
「そこでです」
僕は立ち上がった
「場所は同じ学校じゃなくてもこの日本の中、いや果てには世界中から探してもいい。
それならばてっとりはやくまずはこの日本国内の同士を探すのです」
「それはまた範囲が広いねえ。で、どうするの?」
「まず国内の同士を発見するにはここは現代の知恵を使う」
それはもちろん、今や全世界から共通の趣味を見つけることができるインターネット。ソーシャルメディアがてっとりはやい。
「というわけでまずは僕達がSNSを始めてそこからプラノス好きと繋がることです」
三島さんは頭上に「?」がつきそうな表情をした
「SNSってインスタグラムとかツイッターとか?テレビでよく「インスタ映え」とか聞くけど……つまりはネット上に日記を公開したり画像投稿とか?」
「その通りです」
さすがは女子高生。現代のツールについてはよく知っている
「でも私そういうのやったことないなー。そういうの始めたところで効果あるかなああ……。中学時代友達に誘われて興味はあったけど、結局アカウント作るのが面倒でやらなかったなあ」
「僕もこういう常に更新しなきゃいけない系のSNSって絶対更新しなくなると思ってたから昔は敬遠してたんだけど、高校に入学したのをきっかけに誘われたから始めたんだ」
本当のことを言うと高校入学をきっかけにまずはツイッターでお互いのリアルタイムを見ようぜ、と友人に言われて新しくできた学校の友達とお互いの状況を見る為に一般のインターネット上には非公開のいわゆるリアル友人同士をフォローしあって友人同士までに限定公開の鍵アカウントを作らされたのだが。
しかしそれが始まりとはいえツイッターというものを始めてネット公開はどんなものかとためににツイッター上で好きなゲームやアニメのタイトルやキャラ名で検索していくうちに同じゲームが好きな人のツイートを見つけ、これは趣味用の一般公開アカウントを作れば好きなゲームなどについて語れ、それに反応をもらえたり、同じく自分から返信を書くなどあらゆるサブカルチャー方面へと繋がれるコミュニケーションツールとして使えることがわかった。
(もちろんそっちの趣味用アカウントはリアルの友人達には秘密だが)
その一連の説明をすると三島さん興味を示したようだった。
「それなら確かにネット公開にすることで同じくプラネットノースが好きな人のツイートを見れるし、こっちの語りなんかも同じく好きな人に見てもらえるわけだね」
さすがは三島さん、飲み込みが早い。
「まずは初めの第一歩としてここから始めましょう」と
そして僕は私物であるタブレットを机の上に運び、スタンドで立てて三島さんにも見えるようにし、インターネットに繋いだら目的のページにアクセスして画面を三島さんに見せた。
「まずは初めの第一歩としてここから始めましょう」と
ツイッターのアカウント作成のやり方を書いた説明的なページを見せたのだった
「これでアカウントを作ってみて、まずは何でもいいからツイートしてみようよ。スマホでもできるから」
そして僕は自分のスマートフォンの画面を見せた。
「これが僕のアカウント。こんな風に作ってみて」
と僕は自分のアカウント画面を見せる。
「ソウジロウ」というユーザーネームですでにアカウントを作っていた。
「こうやってやるんだあ……。じゃあ私もやってみるね」
そう言うと三島さんはさっそく自分のスマートフォンを鞄から取り出し、ツイッターのアプリをインストールするとアカウントを作り始めた。
「名前は『ミココ』と……」
どうやら本名の三島加奈の入れ替えらしい。僕も本名のもじりなので即座に思いついたネーミングセンスとしていい。
アカウント作成が終わり、三島さんはプロフィール欄を入力してアカウントを作った。
「プロフィール画面のアイコンの画像は何がいいのかな?」
「なんでもいいよ。アイコン画像はその人のイメージ映像みたいなものだけど、リアルの知人にアカウントがばれたくないのなら自撮りとかは避けた方が無難かな」
「んー、じゃあこの画像つけておこうっと」
そう言うと三島さんは通学鞄についていたイルカのキーホルダーをスマートフォンで撮影し、そのイルカのキーホルダーの画像をアイコン画面に設定した。
「できたー!意外とすぐにできるね」
アイコン画像も付き、正真正銘三島さんのアカウントは完成した。
「で、これからどうすればいいのかな?」
「まずは手っ取り速く同じゲームを好きな人をフォローするのがいいね」
と僕はスマトーフォンで自分のアカウントのプロフィール画面を見せた
「ソウジロウ」というアカウントはすでに『プラネットノース』を好きな人を結構フォローしてるのでそこそこのフォロー数にはなっていた。
「プラネットノース」を好きな人をフォローするために、検索をして該当のツイートをつぶやいたアカウントをフォローしたり、もしくは「プラノス」と発売日が近いゲームが好きな人をフォローしていったのだ。もう『プラネットノース』が好きな人だけで70人ほどいる。
元々は友人から誘われて始めたツイッターだったが今はこうして趣味用のアカウントを作成してこっち方面は充実していた。
「へー。結構探してみれば同じゲーム好きな人っているもんなんだねえ」
「こういう同じ趣味の人をたくさんフォローしておけば毎日タイムラインを眺めていれば現在進行形で好きなゲームのツイートが見れるし、好きにそれにリプもつけられる、自分も語れるでまさにうってつけなんだ」
「始めたばかりで何をツイートすればいいかわかんないけど……」
三島さんはこれから始まることの最初の一歩に踏み出せずにいた。
「とりあえず他に好きなゲームのことでも趣味のことでもツイートすれば何か反応はもらえると思うよ。あ、でも身バレの心配のあるからあんまりプライベートなことはかかない方がいいかな。一応ネットだし」
「わかった。じゃあとりあえず今日から何か発言してみるね」
その後も一通りのツイッターの機能の使い方を説明して今日の部活は終わった。
その夜、僕はいつも通りに自室でスマホをいじり、ツイッターのタイムラインがを見ていた
「お、三島さん、さっそくツイートしてる」
タイムラインを眺めていれば三島さんは色々ツイートしていた。
「『プラネットノース」のイベントは終盤のミミアとお別れのシーンが泣ける」
「このゲームが大好きでこのゲームのテーマ曲をよくピアノで弾いてる」
といったツイートをしていた。
それに対して本日フォローしたばかりのフォロワーからもリプライがついてるようだ。
リプを見てみると「わかります、あのイベント泣けますよね」や「ピアノがひけるなんてすごいですね!なんの曲をひけるんですか?」等同じゲームを好きな方々のリプライが僕のタイムラインにも流れていた。
「そういや結局三島さんのプロフィール画面の説明文はどんなプロフィールになったんだ?」
部室でアカウント作成した際には「今日家に帰ったらじっくりプロフィール画面を編集したい」と言って帰っていったので知らない。
三島さんのアカウント画面のツイート一覧を見ると
「今日からツイッターを始めました。よろしくお願いします」
という挨拶ツイートやプロフィール画面には趣味に「『プラネットノース」というゲームが好きです。同士の方と繋がれると嬉しいです」とかかれていた。
「リプライにもちゃんと返信してるし、順調にツイッターに馴染んでるなあ」
三島さんは自分宛に来たリプライには全て律儀に返信していた。
「ピアノがひけるなんてすごいですね!ゲームの音楽ってつい自分で演奏したくなりますよね」といったリプライには
「下手の横好きですが昔からよくプラネットノースの曲を弾いてました」といった具合に丁寧に返していた。
三島さんは学校でもクラス内では誰とでも打ち解ける純粋さだがネット上でもそれを発揮している。
「これなら僕が無理にツイッター上で絡むこともないかあ」と思っていた矢先、三島さんからラインでメッセージが届いた。
同じ部活の部員になったことで連絡手段として連絡先の交換をしていたのだ。
「私のツイッター見てくれた?こんな感じでいいかな?」と来ていたので
「すっごくいいよ!こんな感じでどんどん仲間が作れるといいと思う」と返信をした。
なんだかんだこのやり取りは楽しかった。
そしてラインに返信が来た
「せっかく仲良くなれたんだから、私のこと、苗字で呼ぶんじゃなくて友達みたいに名前で呼んで欲しいな」というものだった。
ただでさえ今まで女子と話す時は苗字にさん付けだったのにいきなり名前で呼んでくれ、というのは恥ずかしかった
しかし三島さんにとっては友達からは名前で呼ばれた方が気が楽、とのことだった。
「そのかわり私も「宗助くん」って呼ばせてもらうからね」との返信がついた。
その後、何度かラインのやり取りをしたのち、僕は就寝についた。
加奈がツイッターを始めて1週間が経過した。
相変わらず加奈は順調でツイッターのフォロワーとのやりとりでも楽しそうだった。
そして今日も部活の時間がやってきた。
「ツイッターって楽しいね!結構今の時代に『プラネットノース」好きな人が多いこともわかったし、毎日そんなフォロワーさんとやり取りできてすっごく楽しい!」
目を輝かせてそう言ってきたのだ。
聞けば『プラネットノース』を好きな人達をフォローしたら毎日のようにタイムラインで「プラネットノース』に関するツイートが流れてくるのがたまらなく嬉しいらしい。
「宗助くんと会うまでずっとプラノス好きな人と語ったことなかったし、今は宗助くんやツイッターのフォロワーさんと毎日プラシンの話ができて楽しい!」
「加奈がツイッターを楽しめてるようでなにより」
「今までこのゲーム好きなのはもう自分だけだと思ってたからネットに繋がって同士を見つけて世界が広がった気がする!これを教えてくれてありがとうね!」
そういいながら加奈は部室の椅子に座った。
「それで……これで終わりなのかな?他の作戦とかないの」
加奈はこれでもう目的は達成なのかと思ったようだ。確かに現時点でも十分楽しいには楽しいようだが。
しかし僕はこれで終わりにするつもりはなかった。
「うん、次の作戦を考えてきたよ」
僕は立ち上がり、次の作戦の説明を始めた。
「では次はこの部活動の本格的な活動もかねてこの作戦に突入です」
僕はスウ、と息を吸い込み発言した。
「ファンとしての創作活動をしてみよう! という作戦に出たいと思います!」
そう言い切ると、加奈は「ファンとしての活動?活動って私達が何かするの?」とキョトンとした表情で言った。
「まあ、ツイッターでプラノスについてのツイートするのも立派な活動なんだけどさ。例えば……加奈は二次創作とかファンアートってわかる?」
「うん、ツイッターでもよくアップしてる人いるよね。好きなゲームとかアニメのイラストを描いたりすることでしょ。今やってる人たくさんいるよね」
「そこではまずはこれを見てください」
と僕はまたもや私物のタブレットをいじって目的のページを見せる。
「これはイラストコミュニケーションサイトです」
とイラスト投稿SNSについて説明を見せる僕はスマホでイラスト投稿の為に必要なアカウント作成画面を見せた。
「ここで、ファンとしてのプラネットノースについての作品をアップロードする作戦です!」と言い放つ
「私達が? でも私、イラストとか描いたことないよ?」
「大丈夫、そこは作戦を考えてます」
スマホをいじってイラスト投稿SNSの解説を見せる。
「ここはイラスト・マンガとかの絵以外にも文字投稿も可能で、長い考察や小説とかをアップすることも可能なんだ」
「そうなんだ。それなら私にもできそう。文章書くのは得意だし。小説も昔たまに書いてたなあ」
ここで、小説を書いたことがない、と来ればそこから説明するのが大変だが加奈はそこはすでに経験済みだというのはありがたかった。
「宗助くんはイラストとか漫画とか描けるの?」
「昔からよく好きなゲームのイラストとか描いてたよ。自宅にもペンタブとかデジタル環境で絵を描く道具もそろってるから何度かかいてるし」
「そんな特技が!すごい!絵を描ける人って尊敬する!」
加奈は目を輝かせならが僕を尊敬の眼差しで見つめた。
ああ、さすがクラス一の美少女。そういうとこが可愛いんです。
「まあ、結局この特技を生かそうとしたけどこの通り今までそういった活動が活発的じゃなかったわけだけどね」
僕は子供の頃からイラストや漫画を描くのは好きだった。
小学生の頃はよく学校の休み時間に友達と絵を描いて楽しんだりもしていたが中学生頃から次第に自分の趣味に偏るイラストを一人で描き上げることが多くなったうえにいつも描くのが同級生が知らないような昔のゲームの絵ばかりなので友達がみんな知らない作品の絵を描いてるというのも恥ずかしくてあんまり人に見せなくなりここ最近は部活動としてスケッチブックにアナログらしくペンで絵を描くかそれをスマホで写真におさめSNS上でアップするくらいにしていた。
イラストが描けるからこそ中学時代はそうやってひそかな趣味になりつつあった特技が高校では部活で発揮でできるかと思ったがそのあては外れた。
この高校にも漫画やイラストが描ける漫画研究会という部活があると知って見学したがそこはどうしてもアニメや漫画が好きな部員で構成されていたので僕はどうしてもゲームに関する活動ができる部活に入りたかったからだ。だからゲーム研究会を選んだ。
でも新たな部員が増え、今ゲーム研究会として活動を広げたい今なら使える特技かもしれない。
「というわけで、まずはぼちぼちとイラストSNSにアカウントを作って何かとりあえず一つ投稿してみようと思う」
「もう何かアップできる作品があるの?」
「とりあえずまずはツイッターにアップしていた「プラネットノース」やゲーム系ののまとめ絵をアップしてみようかな」
僕にはツイッターを作ってからちまちまとそちらにアップしていたこまごまとした絵は何枚かあったがそれをまとめて公開する場所もなく、とりあえず自宅のパソコンで絵を描いていたペンタブなどのデジタル機材はお年玉で購入したので環境は揃っていた。
今まで描いた作品はまとめてデータにはしていた。
「僕はまず今までの作品をここにアップしてようかな」
僕はスマホ画面をいじり加奈に今まで描いて来た数枚のイラストを見せた。
「すっごく上手!宗助くん、プロの漫画家になれるんじゃない!?」
僕の描いた絵は素人レベルだが加奈は褒めたたえる。しかし生で絵の感想を言われるというのは嬉しいものだ。ましてやクラス一の美少女にそういわれたらもうなんて奇跡だろう。
「いつかはストーリー要素のある漫画も描けたらなあとは思ってるんだけど、どうにも一枚絵で完結するイラストと何コマも描いてストーリーを表現する漫画は媒体が違うからなかなか書くことができないんだよなあ」と今の悩みを素直に話した。
「宗助くんが絵を描けるのはわかったけど、私は何をすればいいのかな?文章投稿もできるから小説投稿をするの?」
「その通り。二次創作であればなんでもOKだよ」
加奈は自分がやるべきことを説明する前にちゃんと理解していた。
「プラノスの世界の小説かあ。自分の好きなゲームをさらに自分で考えたお話を書くのも楽しそうだね」
そういう加奈の目はすでにやる気に満ちていた。
「そう、二次創作は自分の好きな作品を自分好みのシチュエーションで書きたいお話を書いていいんだ」
「それだったら、昔からこういうイベントあったらいいなあ、って想像とかいっぱいしてたから形にできそう!」
加奈の目は新しいことを始める前のやる気に満ちた輝きを放っていた。
「とりあえずいきなりストーリーを考えるのは難しいけど、最初はショートストーリーとか小話とかならできるんじゃないかなと。加奈はツイッターでの文章とかツイートがすごくうまいから」
僕はここ数日加奈のツイッターをみていてプラノス関連ツイートにいいねやリツイートがたくさんつくことが多かったのを見てそう思ったのだ。
ツイッターで日頃から考えた感想等を短文ツイートしていけばツイッター上のプラノスファンと交流できるし、さらに二次創作を投稿すればもしかしたらより多くのファンと繋がれるのではないかと思ったのが僕の考えだった。
その一件を説明し終わると僕たちは作成したアカウントをお互いのスマートフォンで作成して来週までに、1つ作品を投稿することにした
加奈ははプラノスの小話をアップロードする、ということになった。
あとはそれにタグ検索などで引っかかって同じくプラノスファンに閲覧してもらえばいい。
部活も終わり自宅に帰った後、僕は今後の為にまた1つ新しい絵を描き上げることにして、前から描きかけだった絵の仕上げをしてイラストSNSに投稿した。
「よし、今回の出来もいいぞ。この通知をツイッターにも流して、と」
パソコンのキーボードをカタカタと鳴らしながらツイッターにはイラストSNSにも投稿したことを通知するツイートを流した。
するとツイッター画面で誰か知らないアカウントからフォロー通知とリプライがついたことを知らせる通知アイコンのマークがついた。
「僕のイラストに反応が……!?」
今までツイートに「いいね」をもらうことはイラストに対してのリプライがついたことはなかった。
イラストへのリプは初めてで僕はドキドキしながら画面を開いた。
「光(ヒカル)」さんという名前の方からだった。
「初めまして。ソウジロウさんは「プラネットノース」の熱心なファンということをツイッターから見てフォローさせていただきました。アップされたイラストを拝見させていただいたところとても世界観を生かしてキャラクターの魅力を引き出した絵を描くんだなあと伝わってきました。私も同じゲームで創作活動をしてますのでこれからもよろしくお願いします」
同じゲームが好きということでどんな人なのかをチェックするためにその人のアカウントを覗いてみたところ、プロフィール画面には「プラネットノース」を始めとしたゲームが好きという文章に画像ツイートを開けば数多くのゲームイラストが多数アップされていた。
試しにそのうちの一つの絵をパソコンの画面で大きく見たところその画力は僕と比べ物にならないほどのうまさであり、僕は驚いた。
「な、なんだこりゃ……!こんなに絵がうまい人がゲームの絵を描いたりしているのか!」
メインキャラクター達の集合絵にプラネットノースの舞台になる広大な宇宙と惑星を背景にした絵でその画力はまるでプロのイラストレーターか漫画家といわんばかりに一枚絵で物語が語られている絵だった。
そのカラーイラストの色の塗り方は背景がもはやゲーム画面忠実でそれでいてキャラクターの絵は原作の公式イラストの良さは残しつつも、等身の高い美しいイラストだった。
他にもキャラクターの設定を生かした二次創作漫画、世界観をよく表現したイラスト。
例えば「プラネットノース」の最重要キャラ『ノース』という人物がメインの漫画を描くならば、設定を生かして「貴族の生まれだから上品な私生活をしている」というシーンを出すのだがその本編に出てきていない私生活の部分をきっちり漫画という形で絵で表しているのだ。
それはまさに僕が理想としていた『プラネットノース』の世界そのものを人に見せても高評価がもらえる内容だった。
そして何より光さんの絵柄はゲームとマッチしている。
「プラネットノース」はまだ2Dからようやく3Dのグラフィックになるくらいの時期に発売されたゲームなのでゲーム内のキャラクターの等身は低く、ゲーム内でのイベントやバトルの動きはあくまでもデフォルメされたものだ。
しかし光さんの描く「プラネットノース」のキャラ達は等身も高く公式イラストとはまた違うオリジナリティな絵柄で描かれていた。それがまたいい。
その「光さん」という方の作品も多くのフォロワーに高く評価されているのか「光さん」の絵や作品のツイートはたくさんのいいねやRTがあった。
中にはプラネットノースというゲームはよく知らないがこの光さんの画風に惹かれてフォローしたというフォロワーも多いのかこの人はたくさんのゲーム好きというカテゴリーのユーザーにフォローされていた。
僕たちはその夜「光さん」の描く「プラネットノース」の二次創作やイラストにどっぷりはまって夢中でログを読み漁り、アップロードされてる分の光さんの作品を全て見た。
「プラノス好きな人にこんな人もいたんだなあ……」
今まで検索をしていた中ではどうやら見つけられなかった人のようだ。
これまでも「プラネットノース」のタグ検索などで同じゲームが好きな人をフォローしてきたのだがここまで自分と同じようにイラストを描いている人を見つけたのは初めてである。
今までに見たことのないタイプの人を見つけることができて、僕はまたこのゲームが好きな人にはいろんな人がいると世界の広さを感じた。
「さっそく新しいフォロワーがつくなんて! しかもこんなに絵がうまい人と!」と僕は嬉しくなった。
こうしてまたもや同じゲームが好きな人と繋がっていくことができることはまた新たな進歩である。
そういえば加奈はちゃんと何かアップできたのだろうか?と気になり加奈が今日部活で作っていたイラストSNSの加奈のアカウント画面を見てみることにした。
僕と加奈は一応イラストSNSでもお互いをフォローし合ったので画面を開くと一件の通知アイコンがついていた。
加奈はショートストーリー(SS)つまり短い小説をアップロードしていた。
短時間で書いた感じの文字数の少ない内容だが中身はしっかりしていた。
「プラネットノース」はストーリー進行が章立てになっているゲームだ。
ゲーム本編内では4章と3章の間の中である、ゲーム内では見られない空白の部分を小説にしたものだった。
仲間達と次の惑星へ行くまでの間に宇宙船の中でパーティをする、といった内容だ。
ショートストーリーとして読めるコメディもので、楽し気な雰囲気を感じられる話だった。
小説の概要を見てみると「初めて書いたプラノスSSです。まだまだプラノスについては書きたいお話もたくさんあるのでこれから色々アップしていきます!」
というやる気に満ちた内容が書いてあり、すでに数件の「いいね」がついていた。
「加奈、なかなかやるなあ。もう話が作れたんだ」
加奈の功績を見て、僕もますますこれからいっぱい絵を描いたり活動を頑張らねばと思った
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