第5話 力の差
出雲は陥没している地面や、破壊をされている建物などを避けながら木製の漁船に倒れている支部長のもとに向かった。支部長は腹部を手刀で貫かれているようで、大量の血を流していた。
「支部長!? 大丈夫ですか!?」
「君か……倒されちまったよ……」
支部長が腹部に手を当てながら出雲に消え入りそうな声で話していく。出雲はすぐに支援を呼びますというが、支部長は既に呼んであると返した。
「俺が倒された時にこの札に魔力を通して危険を知らせてある……もうすぐ支援部隊が来るだろうから、俺以外の団員を助けてやってくれ……」
「分かりました! 支部長?」
出雲に助けてやってくれと言った支部長は、そのまま気絶をしてしまった。出雲は言われた通りに倒れている騎士団員たちを介抱していく。出雲は倒れている騎士団員たちに意識の確認をし、動ける人は海岸の側にある砂場に移動をさせた。
「大丈夫ですか!?」
「君か……君は無事みたいでよかったよ……」
出雲が話しかけた若い男性騎士は、頭部から血を出して苦しそうにしている。出雲はその若い男性騎士を砂場に移動をさせると、村に応援の騎士団が到着した。出雲はその応援の騎士団を見ると遅いですと叫んだ。
「一体何があったんだ!?」
「君以外全員倒れているし、あの支部長が腹部から出血をして倒れている!?」
応援に来た十名の騎士団員たちは驚いていた。支部長と呼ばれていた男性は、騎士団の騎士団長には劣るものの、騎士団内で五本の指に数えられる程に強いと言われていたからである。その支部長が倒れされている光景を見て、絶句をするしかなかった。支部長のレベルであっても敵わない敵とはどういうことなのか。どのような戦闘を繰り広げていたのか、想像ができなかった。その絶句をして固まっている応援部隊に出雲は早く助けないとと声を荒げながら言った。
「今は早く助けましょうよ! みんな助からなくなります!」
「そ、そうだな! 全員で全力で助けるぞ!」
「分かりました!」
応援部隊の隊長がそう声を上げると、部下たちが動き出した。出雲は救護の邪魔にならないように落ちている武器を拾い集めていた。自身の壊された武器を見ると見事に真っ二つに折られていたので、手刀の威力を改めて感じていた。
「こんな攻撃をする敵と俺は戦えるのか……この攻撃をしてくる敵と支部長は戦っていたのか……」
出雲は改めて二人の魔族の強さを実感していた。魔族という言葉は聞いたことがなく、新種の魔物なのかと考えていた。だが、出雲は魔族は言葉を話していましたと応援部隊の隊長と思われる男性に伝えた。
「それは本当か!? だとしたらかなりの脅威になるな……王と騎士団長とお伝えをしなければ。ありがとう!」
「君は馬車に倒れている団員たちを入れる手伝いをしてくれ! 私は避難した村民たちに説明をしてくる!」
「分かりました!」
出雲は指示された通りに応援部隊の人たとと共に動き出した。出雲は自身の力のなさに悔しいと思いつつ、あんな敵と戦えるのかと頭の中でシミュレートをしていた。
「何回も考えても俺が勝てる未来が見えない……俺は弱すぎる……この騎士団で何をしていたんだ……」
出雲は馬車に倒れた騎士団員たちを運びながら、そんなことを考えて呟いていた。
「よし! これで運び終わりですね! 隊長が戻って来るまで待ちましょう」
「了解です!」
応援部隊の騎士団員たちは副隊長と思われる女性騎士団の言葉を聞いて、地面に座ったり砂場で隊長を待つ人が多かった。出雲は自身の折れた長剣を見てどうすればいいのかと悩んでいた。
「俺にもっと戦える力があれば……もっと強くならないと!」
落ち込んでいても仕方ないと思い、出雲は守るために強くなり続けると改めて考えた。そして、海に向かって俺はお前らになんて負けないと叫ぶ。
「お前らがどれだけ強くても、俺は必ず守り通す! そして! 俺はお前たちより強くなる!」
そう叫んでいる出雲を応援部隊の騎士団員たちは笑顔で見ていた。出雲が落ち込んでいると一目で分かったので、どう声をかけていいか分からなかったが、落ち込むのを止めて強くなると海に向けて宣言をしているのを見て安堵をしていた。
「そろそろ隊長が戻ってくるから変える準備をしましょう。治療の方は進んでる?」
「はい! 治癒魔法はし続けているので、全員無事です!」
馬車の中で若い女性の騎士団員が懸命に治癒魔法をかけていた。治癒魔法は、かけられている人の治癒力を活性化させて治療をする魔法である。治癒魔法を使える人は少なく、治癒魔法を使える人はかなり重宝される程である。治癒魔法をかけ続けていることを副隊長の女性が確認をすると、説明が終わったのか隊長が戻ってきた。
「準備は終わったか?」
「はい! 馬車に乗せて治癒魔法をかけている最中です!」
「よし。なら戻ろう。説明もしなければいけないしな」
隊長がそう言うと、出雲にも馬車に乗って戻るぞと言う。すると出雲は来た時に乗った馬がいるはずなんですけどと言った。
「来た時に馬は見なかったぞ? 戦闘音を聞いて逃げたんじゃないのか?」
「そうですか……なら一緒に帰ります」
「うむ」
出雲はそう言われ、馬車の荷台に乗って王都に戻っていく。思い掛けない戦慄する程の戦闘だったが、魔族の存在やその強さを思い知り、出雲は成長をし続けたいと思うことができた。それに危機が身近に迫っていることを知れたので、出雲はこのままではいられないとの心構えもすることができた。
「俺はあの魔族を必ず倒す! 絶対に!」
出雲は馬車の荷台に座りながら、絶対に倒すと何度も空に向かって言った。その言葉を聞いていた応援部隊の騎士団員たちは、負けないようにしないとと考えながら聞いていた。
壮絶な戦いを経験した出雲を可哀そうと思う反面、良い経験をしたんだなと思う騎士団員もいた。支部長が倒される程の敵を見て、その戦いを見た出雲は、そのレベルの高さや戦闘を見たはずと思っている。壮絶な戦闘を見た出雲はこれから伸びるだろうと応援部隊の騎士団員たちは考えていた。
「王都に到着をしたら少しゆっくりとすると言い。君の体も酷い傷を負っているだろう? 今のうちに治癒魔法をかけてもらうといい、次は君の番だ」
「ありがとうございます……」
出雲は同じ荷台に乗っている治癒魔法を使える女性騎士団員に、お願いしますと言った。その言葉を聞いた女性騎士団員は、任されましたと笑顔で返した。
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