第3話 未知なる敵

「黒羽出雲ただいま到着しました!」


 出雲がそう先に到着をしていた騎士団員に言うと、男女三名ずつの騎士団員が出雲の方を向いた。男女三名ずつのその騎士団員は出雲よりも年上であるがまだ若手と言われる年齢であった。


「出雲君か。君も来るとは思わなかったよ」

「他の人たちは別の任務に向かっているのかな?」

「俺はここの防衛以外にも任務があるが、こちらに来る人が少ないらしいから応援にきた感じだよ」

「私もそんな感じです」


 出雲の姿を見た騎士団員は、他の任務よりこちらを選んだようである。しかし、出雲はこの一つの任務しか教えられていなかった。


「まだ一年目だからこの任務しか教えてくれなかったのかな?」


 出雲が悩んでいると、一人の男性騎士団員がまだ若いから悩まないように指示をしてくれたんだろうと言った。


「そうだといいんですけどね……」

「そうだよ。事務員の人もそう考えて指示をくれたんだろう」


 そう言ってくれた男性に出雲がありがとうございますと言うと、海の方から魔物が現れましたと女性騎士団員の一人が叫んでいた。


「来たか! 全員態勢を整えろ!」

「はい!」


 一人の男性騎士団員が整えろと言うと、出雲たちは武器を構えて態勢を整えた。すると、海岸に海から魔物が多数出現した。


「来たぞ! 巨大な蛇に鱗や羽が生えている蛾蛇にウミウシが変異した鱗魚が数十体と多いな。それに奥の方には見たことがない水棲の魔物がいるな」

「あの魔物は報告がないです。応援を呼んだほうがいい気がします」


 女性隊員が応援を呼びますと冷静に言うと、今はこれないだろうと無精髭が生えている男性が突然現れて言った。


「支部長!? どうしてここに!?」

「海中から不思議な反応を捉えたと聞いてな。急いで馬を飛ばしたんだ」

「それに、そこにいるのはまだ一年目の新米騎士だろ? たまには俺も良いところを見せないとなと思ってな」


 出雲のことを見ながら言った支部長と呼ばれた男性は、腰に差している長剣を抜いて構えると、目の前にいる海から現れた魔物に向かって行った。支部長と呼ばれた男性は精悍な顔つきで左頬に斜めに傷があり、白髪混じりの短髪であった。


 誰が見ても体格が良いその体は日頃から鍛錬をしているのだろうと思える。身長は出雲より十センチ以上高く、出雲が見上げる程である。


「俺が先陣を切る! 後からこい!」


 支部長は剣に自身の属性魔法である雷属性を付与すると、勢いよく目の間に振るった。


「雷撃一閃!」


 そう叫ぶと、剣から雷を帯びた斬撃が飛んだ。その斬撃は海から現れた魔物たちを一掃してしまった。その一掃された光景を見ていた出雲たちは目を見開いて驚いていた。あれだけいた魔物が支部長の一撃で一掃されたことや支部長クラスの強さを目の当たりにしたからであった。だが、支部長は緊張を緩めずに一体の魔物を見つめていた。


「ここからが本当の戦いだぞ。まだ見ぬ敵のお出ましだ」

「はい!」

「戦います!」


 そう言って出雲たちも剣を握った。次の瞬間遠くにいた未知なる魔物が勢いよく支部長に向かった。遠くにいた未知の魔物は人型の姿をしており、長い青色の髪色と全身に鱗のようなものが付着していた。また髪色と同じように体も青色であった。


 魔物の顔は女性と思えるほどに整っており、その顔には鱗が付着していた。女性型の魔物の顔についている二重の目が出雲たちを見据えていた。


「オまエはジャまだ! ニんげんハコろス!」

「ぬぅ!? お前は何者だ!」


 女性型の魔物は片言で喋りながら、海水を固めて作った長剣で支部長に攻撃をした。支部長はその攻撃を持っている長剣で防ぐと、女性型の魔物が海水で作った長剣に力を入れて支部長の剣を上空に弾こうとした。


「そんな攻撃が効くわけなかろう!」


 支部長は弾かれそうになった長剣を、振り下ろして女性型の魔物の体を両断しようとした。だが支部長の攻撃は女性型の魔物の体を斬ることはできなかった。なぜならその女性型の魔物の体がスライムのようになり、長剣がすり抜けてしまったのであった。


「ワタしを、たダのマの者だト思ワないコとだ!」

「そのようだな!だが、こちらには仲間がいるぞ!」


 その言葉を聞いた女性型の魔物は、支部長との距離を取ると指を鳴らした。すると、海中から勢いよく多数の種類の魔物が現れた。その魔物はワニの変異した姿である発達した顎が特徴的なグルーワニオンや海竜といわれる海の中で進化をした古代から存在が確認されているが、出現例が少ない魔物が現れた。


「海竜と一緒に人型の魔物がいるぞ!? 支部長と戦っている魔物と同型なのか!?」

「分からない! だが、人型の魔物には要注意だ!」


 騎士団員たちが警戒をしている人型のもう一体の魔物は、女性型の魔物と同じく青色の体をしており、髪はない。その代わりに硬い鱗で頭部に二本の角が形成され、右手に黒い槍を持っていた。服などは着ておらず、女性型の魔物と同じく鱗で体が覆われているようである。


「なんだあの魔物!? 槍を持っている!?」


 そう出雲より若干年上の若い男性騎士団が驚いた瞬間、その若い男性の腹部を槍が突然貫いた。その槍は黒い槍であり、海から現れた男性型の魔物が放った攻撃であった。


「ゴフッ……な……なんだと……」

「何で槍が!? 大丈夫ですか!?」


 倒れて腹部と口から大量の血が流れている若い男性騎士に出雲が駆け寄ると、倒れた若い男性騎士が逃げろと擦れ気味の声で出雲に言った。

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