カクヨム小説の真実~215,590作品のデータから本性を暴き出す

草薙 健(タケル)

研究ノート

私は真に驚くべきカクヨムの真実を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる。

プロローグ(※必ずお読みください)

 2021年1月、コロナ渦が収まるどころか2度目の緊急事態宣言が発令される異常な状況の中、とある小説好きの富豪が設立した私設研究所である『カクヨム総合研究所』に、俺――研究所主任研究員マッドサイエンティスト草薙くさなぎタケルはいた。


「ついに……ついに手に入れたぞ。我が長年追い求めし究極の秘宝を――あらゆるものを凌駕する究極のアイテムを! 歓喜のあまり、封印されし俺の左目が今にも暴れ出しそうだ!!」


 厨二病全開のセリフを吐きながら、俺はパソコンのモニターに映し出された数字の羅列を満足げに眺めていた。


「相変わらずの精神年齢ね」


 そこへやって来たのは、研究助手アシスタントとう景子けいこだ。彼女は俺の幼馴染みで、本が大好きな女の子。カクヨムにもユーザー登録しているが、彼女自身は小説を書いていない。所謂いわゆる『読み専』である。


「久しぶりにカクヨム活動を再開したと思ったら、小説も書かずに一体何をしているの?」

「所長命令で、カクヨム小説のデータを集めているんだ」

「え? 所長?」

「ケイコちゃんは会ったことないんだっけ」

「うん。この研究所に入り浸っているのに、顔すら見たこと無いわ。そんなデータを集めて所長は一体何をしてるのかしら」

「このランキングを更新するためさ」


 俺はそう言って、ケイコちゃんに所長の某氏が更新しているカクヨム小説のページを開いた。


『本家ではないけど情報特盛りな第6回カクヨムWeb小説コンテスト+短編賞速報』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354055253900094


「え、これってタケル君がデータを集めてたの?」

「そうだよ。所長がこんなこと出来るわけないじゃん」

「そうだったのかぁ」

「最初は色々トラブったけど、今は結構安定してデータを集められるようになったんだ。そこで俺は思った。この手法を応用すれば、カクヨムのデータを集められるんじゃね? と」

「発想の飛び方が明後日の方向過ぎてついて行けない」

「そんなぁ」

「まぁいいわ。それで、結局何作品分のデータを集めたの?」


「215,590作品だ」


「……えーっと、聞き間違いかしら。もう一度言ってもらっていい?」


「215,590作品。ちなみに今も増え続けている」


「言わせてもらっていい?」

「何?」

「暇人かよっ!!」

「待て待て。まさか俺が20万作品以上を目視で確認したと思ってないだろうな」

「え、違うの」

「ケイコちゃんは本当にアナログだなぁ……」

「どうやってこれだけのデータを集めたのかしら――あ、待って。言わないで。ほら、前にも同じような研究ノートを書いたときにチラッと言ってのを思い出したわ。カクヨムのユーザーを分析してたアレよ、アレ」


 そう言いながら、ケイコちゃんは俺が作成した昔の研究ノートを本棚から引っ張り出してきた。


『カクヨムユーザーの生態~111,402人分のデータを分析してみた』

 https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054894358323


「そう、これこれ。えーっと、水スクレイティング……? なんだかもの凄いフェティシズムを感じるわ」

Webウェブスクレイピングな……。しょうがない、改めて説明するよ。

 Webスクレイピングって言うのは、Web上のデータを自動的に集めるための手法のことだ。まぁ、人の手の代わりにプログラムがブラウジングしていると思ってくれたらいいよ」

「なるほど。今回はどんなデータを集めたのかしら」

「個々のカクヨム小説トップページからアクセスできる情報全てだ」

「ん? 全部?」

「そうだ。小説に付けられた星の数はもちろん、ハートの数やコメント、果ては小説の本文まで、ブラウザでアクセス出来る全ての範囲を調べ尽くした」

「……21万作品分?」

「215,590作品。これは2021年1月20日時点におけるカクヨムに公開されている小説全てだ。データを集めるのに時間がかかっている分、多少の誤差はあるだろうが」

「本当に全部集めたんだ。正直、今ドン引きしてる」

「当然ながら、カクヨムに投稿された小説は著作権法によって保護されている。それを侵害するような行為は絶対にしないとここで約束しよう」

「頼むから変なマネはしないでね。これ、本気のお願いだから」

「あぁ、当然だ」

「今回はどんな分析をするのかしら」

「星、pv、ハートやコメントなどの統計を紹介する他、近年発展著しい自然言語処理――主に深層学習の技術を使って、カクヨム小説における言葉の使われ方がどうなっているのかを分析する予定だ」

「なんだかよく分からないけど面白そうね」

「なお、結果が得られたものから随時データを更新し、後でエピソードの順番を並べ替えようと思っている。読者の皆様に多少混乱を与えるかも知れないが、どうかご理解頂きたい」

「まぁ、ちゃんと作品が読めるなら大丈夫よ、多分」

「データは2021年1月19日から20日にかけて収集したぞ。しかし、カクヨムの小説は生き物だ。データを集めている最中に作品が突然非公開になることなんてよくあること。だから、読者の皆さんが読んでいる時点では確実に情報が異なっていることに注意して欲しい」

「え、よくあるの?」

「他にもエピソードの順番が突然入れ替わったり、ユーザーが退会して星やハートがごっそり消えたりする」

「なるほど、本当に生きてるようだわ」

「また、あくまで個人的に集めたデータのため、公式発表の数字と異なる場合があるかもしれない。あくまで参考値として見て欲しい」

「了解よ」

「それじゃぁ、早速分析結果を見ていこう」


 そう言うと、俺は表紙に『カクヨム小説の真実~215,590作品のデータから本性を暴き出す』と書かれた研究ノートのページを開いた。


 ――――――――――――――――


 <注意事項>

 本作は、カクヨムの公式ホームページから個人的に集めたデータを元に執筆されています。データは2021年1月19日午前10時10分から2021年1月20日午後14時53分にかけて収集しました。従って、現在の情報とは異なる場合があると言うか、異なってます。確実に。


 また、本作による直接的、間接的な損害について、筆者は一切の責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。


 本作では図を使用することがあります。しかし、カクヨムは図をアップロードすることが出来ないため、Twitterを利用します。その都度URLは掲載しますが、よろしければ下記アカウントのフォローをよろしくお願いします。


 https://twitter.com/t_kusanagi


 登場人物

 ・草薙くさなぎタケル

  本作の語り部。永遠の中二病。


 ・とう景子けいこ

  本作の聞き手。タケルの幼馴染。


 それでは、分析結果をお楽しみください。

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