第132話 温故知新 ⑥
「
スキル再使用可能までおよそ3分。何とか
灯籠本体は倒したが、背中の髑髏は其々独立して個体だ。それは、通常戦闘時に灯籠が体から枝を引き抜くたびにライフが減る事から推測出来た。
通常では、本体が先に倒される事は無い。だが、それが倒された場合にどうなるのか。
雑魚を媒介にするように灯籠の死体を使って、各々の獣に分裂するだろう、――というのが
ボスを倒せば他の敵が一斉に死んだり、大人しくなるような都合のいい話は、ここでは無い。
「全員後退しながら撃ちまくれ!
恭平を戻らせまいと立ち塞がる手前で動きを止められた複数の案山子をボウガンで殴りつけ、そのまま矢を射出して退路を開き、皆の元へと駆ける。
フラッシュボムの効果範囲外に居た案山子達が追い
「
「まだ再使用に8分以上かかる」
皆の所まではあと20メートル。
恭平は思わず舌打ちする。灯籠が現れると分かった時点で、使用を止めさせるべきだった。
「『アヒーセブクラッカー』の方は?」
「あと40秒」
「春日さん、爆弾は?」
「ごめんなさい、フラッシュボムの生成は4分以上かかります!」
「普通の爆弾はある?」
「あり――」
「
美和子の悲鳴にも似た叫びで振り向くと、灰色の毛並みの
枝から生み出された怪物であるのは
グギ、グギギギギギギギリュル。
口には汚い緑色の
振り返ってようやく気付く。
フラッシュボム使用後に誕生した
八木が必死に銃撃を加えているが、元より耐久度のある敵だ。周囲の案山子達はバタバタと倒れて行くが、猛獣達は致命傷に
更に悪いことに、誕生した獣たちは残りの枝を口や手を使って案山子の死体の方へとばら撒き、新たな獣を増やしていた。
「灯籠が居なくても増やせるのかよ」
恭平は飛びかかって来る狼にボウガンの矢を浴びせる。
6発中4発が命中。狼は苦しげな呻き声を上げながら、頭を地面に叩き付けるように倒れた。
大人1人より大きな巨体だ。倒れただけで勢いは止まらず、転がる巨体の背中にぶつかった恭平は3メートルほど弾き飛ばされる。
鋭い爪や牙に接触しなかったのは
「鍬野君!」
「鍬野さん!」
皆が駆け寄ってこようとするのが分かった。
ああ、ダメだ。このままじゃまた失敗する。
視界よ早く元に戻れと、何度も何度も瞬きするも視界は
それでも上下の感覚だけは取り戻して自力で体を起こすと、すぐさま誰かに体を抱き起された。
「大丈夫か?」
恭平を抱き起したのは大山だった。血流がさっと重力に引かれて下がって行く感覚と共に、視界が急激に回復していく。
視力の回復とは裏腹に、眼前に広がる光景は最悪だった。
八木の
しかし視界に入る限り11頭の猫や猿、イタチ等を模した巨大な化け物が生き残り、ぐるりと恭平達から一定の距離を置いて、
各々が跳弾の有効範囲を分かっているかのように、絶妙な距離を取っていた。
他の化け物とは違う、知性を感じさせる動きだ。
「……どうする?」
「倒すしか……ない。大山さんのランチャーは着弾までのラグを考えると直接は当てられない。直線で狙える範囲、飛び込んで来る敵の手間の地面を狙って撃ってください」
「わかった」
「八木さんは撃ち続けて」
「やってる。けど、きりがねぇな」
「春日さんはフラッシュボムが出来たら」
「すぐ知らせます」
「最悪、自分の判断で使って」
それ以上の会話は許さないとばかりに、まず3体が一斉に飛び出してきた。
見るからに八木の跳弾を多く受けた手負いで、これを
だからと言って、迎撃しないという選択肢もなく、恭平はボウガンを2発ずつ正確に獣達の眉間に突き立てた。
……スキル再使用まで、あと1分42秒。どう考えても間に合わない。
予想通り、第2陣の
そこに
「大山さん、狙いを付けなくていいから足元に手あたり次第ばら撒いて! 八木さんは
出来る限りの指示をしながら、
矢が左肩に当たったのが
動きが止まったところに大山がすかさずグレネードを叩き込む。
「ナイス!」
賞賛しながらも次の敵、猿へボウガンを再装填しながら狙いをつける。
……ッ、飛んだ。
狙った瞬間、猿は両手両足のバネを最大まで使って
「皆、避けて!」
飛びかかって来る猿のがら空きの胴体に六本の矢を叩き込む。
猿は空中で絶命するも、その巨体は減速することなく恭平達の元へ。
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