第52話 セカンドコンタクト ⑤

 こんな形で、新たな生存者と出会うとは。

 否応なしに気持ちがたかぶる。


「武器を持ってるプレイヤーの事です。自分も、ほら」


 恭平きょうへいが携帯をボウガンに変えると、彼は大きく目を見開いた。


「なんだそれ、手品マジックか!? そこの二人も出来るのか?」

「奥に居る春日かすがさんは出来ます。浜辺はまべさんは武器を持たない一般人です」

「そうなのか。この銃、俺も携帯に戻せるのか?」

「はい。ねんじれば」


 彼がきつく目をつぶると、拳銃けんじゅうはブルーのクリアケースに収められた携帯へと姿を変えた。


「おお、凄い! やったぁ、よかった!」

「目を瞑る必要はないですよ。武器に戻すときも」

「あーもう、早く連絡しないと殺される。というか、死ぬ」

「繋がらないと思いますけど」

「……圏外? 渋谷だぞここ!」


 やたらと声がでかい。これが体育会系という奴なのだろうか。

 ついさっきまでバケモノに追いかけられていたのに仕事の心配をするなんて、変な人だなと思う。


「終わった。完全に。クビは嫌だな」

「多分、世界中同じ状況なのでみんな仕事どころじゃないと思います」

「えっ、そうなの? 本当に? よかったー。いや良くないか」


 感情の起伏がやたらに激しい。

 こういう切り替えの早い人が案外生き残るのだろうか。

 りん美和子みわこは珍客に未だ警戒モードで、一歩も動かず成り行きをうかがっている。


「三人はどういう関係? 制服はバラバラに見えるけど」

「色々あって、今は一緒に逃げてます」

「この状況ならそうか。俺も仲間に入っていいかな。平均年齢上がっちゃうけど。俺も死にたくないし、君はなんだか詳しそうだし」


 緩いのか鋭いのか。

 彼は立ち上がって伸びをした後、右手を差し出してきた。


八木進一やぎ しんいち。21歳だ。よろしく」

鍬野恭平くわの きょうへい宝仙高校ほうせんこうこう一年です」

「へぇ、高校生! しっかりしてるね」

「私は、浜辺美和子はまべ みわこです」

「……春日凛かすが りんです」

「この状況を切り抜けるまで、よろしく頼む。俺だけ年上で取っつきにくいかもしれないけど、意外と子供に好かれるんだぜ。それで、この後どうするつもりなんだ?」


 恭平は後ろの美和子達に視線を向ける。

 正直、まだこの後の予定どころか状況説明も満足に終わっていない。

 だが、向かうべき場所は決まっている。


「国会議事堂を目指そうと思ってます」

「いいね。日本の中心だし頼れる人は沢山いそうだ」

「八木さんもスキルを持ってる筈なので、教えてもらえますか」

「スキル?」

「携帯で確認できます。俺のスキルは敵を足止めするショックアロー、燃やすファイアアロー、動きを止めるアイスアローです」

「へぇ、便利だな」

「スキルは一度使うとクールタイムがあります。連続使用はできません。種類に寄りますけど」

「良いスキルだといいんだけど。これか? 『貫通弾かんつうだん:銃弾は必ず敵を貫通する。貫通時、弾速の低下は起こらない』『跳弾ちょうだんたまが着弾した際、4メートル以内に他の敵がいれば自動で銃弾の軌道が変化し該当がいとうの敵に着弾する。この効果は着弾時に対象が居続ける限り重複ちょうふくする』」

「効果時間は?」

「効果時間? 何も書いてないけど」


 そんな筈はないと携帯を見せてもらうと、確かに効果時間の記載がない。


「パッシブスキル……かな」

「パッシブ?」

「常に効果が発動してる状態ってことです。効果を鵜呑うのみにするなら、敵が密集してればしているほど強い」


 この説明を見る限り、2体が4メートル以内に居るだけでも片方の敵が死ぬまで跳弾し続けるのではないだろうか。

 各個撃破には向かないが、れた敵には絶大な効果を発揮する。

 この能力があれば、大通りの攻略も可能かもしれない……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る