第36話 Must Die ⑧
『10、9、8……』
次のカウントダウンが始まる。
この状況は最悪だ。
逃げようにも死ぬのが早すぎて、人混みから脱出する時間が稼げない。
とにかく長く生き残らなければならない。
延々と死に続ける羽目になる。
そうなれば体は巻き戻って回復し続けたとしても精神が持たない。
待っているのは一秒毎に死に続ける無限地獄だ。
この状況から一度で逃げ切れないのは分かっている。
少しずつでいい。生き延びる時間を増やして脱出する。
大通りの横断はひとまず
時間のからくりは分かったので、まずは
そうすれば、次に巻き戻った際に余裕を持って安全な大通りを横切る事が出来るはずだ。
今の位置からどう動けば、生存時間が増えるのか。
ここからは
逃げきれる時間を
下手に動いて取り返しのつかない状況になるのを避ける為、スタート位置は変えない。
ゲーム開始から3秒、頭を
ぐちゃり……
―
2秒多く生き残ったが意味がない。
今度はスタートと同時に左へ5歩、6歩、7歩。
ぎちゅ……
―
位置が不味かった。
7歩目を踏み出した瞬間、バケモノの投げた死体と正面衝突してしまった。
だが、進む方向は悪くなかった。
タイミングが悪かっただけだ。
――次。
『終末に備えよ』
開始と同時に左へ5歩、ここで2拍、目の前を
血飛沫が掛かっても動じず、更に歩を進める。
6歩、7歩、8歩……いける。
ようやく周囲の人混みがばらけ、体の動きに少しゆとりが出来る。
目の前、二時、三時の方角直近に案山子が二体、奥には緑のデカブツ。
左手10時の方角には少し離れた場所に青い手のバケモノ。
まだ他の人々に気を取られている。あえて動かず、その場で敵の動きを確認する。
青いバケモノは此方に背を向けて進んでいるが、視界の中央方向へ徐々に寄っている。
対して
自分が一番近くなれば
緑のバケモノは三つの目の内、二つの目が見えているので丁度右の横顔を見ている状況だ。
背を向けてくれているのがベストだったが仕方ない。
武器を構えて一番近い案山子を狙う。
いま、敵はランダムな目標を襲っている。
ここで自分が敵を攻撃した場合、果たして周囲のバケモノはどう動くのか。
撃たれた奴は当然、恭平に襲い掛かってくるだろう。
問題は他だ。
気にせず目の前の
自殺とほぼ
矢は正確に案山子の頭部に突き刺さった。
「あ˝あ˝あ˝ァァァ!」
攻撃した案山子が、明らかに敵意を
さぁ、
確認する間もなく、視界が十一時の方角から飛来する青い無数の手で埋まり、そのまま頭部が
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