第35話 Must Die ⑦
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『2022年6月17日 9時51分』
敵を倒すと得られる通貨が建物の開錠に必要だという事実を失念していた。
嫌な死に方が多すぎる。
全身が一気に潰される感触が引くのを待たず、よろよろと走り出す。
ゲームが始まってからでは大通りを抜けることは出来ない。
なら、開始前にそこを越えるしかない。マップで彼女が逃げるルートは確認済み。
行動が変わらなければ先回りも可能な筈だ。
「もう少し、
また開始直前の時間だ。そして、大通りに近づこうとしてまた絶望する。
カウントダウンに集まった人々で通りが埋まっていた。
どう見ても時間内に通り抜けられる状況ではない。
とはいえ
そもそも、どこまで行けば迂回できるのかもわからないほどの人混みだ。
「すいっ、ません! 通してください!」
最短ルートへ体を
苛立ちの視線と、露骨に押し出そうと体を
だが、無情にもカウントダウンがスタート。
「不味い、身動きできない」
この状況では、何らかの攻撃を受けても対応できない。
完全な失策だ。無理に割って入った手前、もう引き返す事は出来ない。
『3、2、1……』
また、悲鳴と共に悪夢が始まる。
悲鳴とほぼ同時に顔面に
不思議な光景だった。
カウントダウン終了と同時に、集まっていた人混みの半分ほどが消え、代わりにバケモノが現れる。
まるで、そこにポップアップするのに邪魔なので、強制的に場所を移動させられたようだった。
周囲に余裕が出来た為、わざと体を地面に投げ出しながら顔を
ただ、その判断も正しくなかった。
そして、立ち上がる間も反撃する間もなく、
―
『2022年6月17日 9時59分』
「何だよ、糞ッ!」
自分の頭が溶ける感触を
しかも、自分が立っているのは先程の人混みの真っただ中だ。
『5、4,3――』
最悪のカウントダウンを聞きながら、今更になってこの死に戻りのルールに気づく。
信じたくないが、もしも仮定が正しいとするなら……。
『2,1……』
血飛沫が顔面を襲う。今度は地面を転がらない。
「いち……、に……、さん……」
ただ目を
自分の予想が間違っている事を祈りながら。
「じゅうじょん……、じゅ」
ゲーム開始から15秒、
―
『2022年6月17日 9時59分 45秒』
「はっ……はは」
乾いた笑みがこぼれた。予想が正しかった事を時計が示している。
死んだらランダムな時間で戻されていた訳ではなかった。
ゲーム開始から、自分が生存出来た時間の分だけ正確に巻き戻るのだ。
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