第30話 Must Die ②
道路に出たところで、本当に渋谷に向かうべきなのか迷っている自分に気づく。
「でも、本当にただの夢だったらなぁ……」
そう、本来はその可能性の方が高い。
ただの夢に
そんなことは出来る筈がない。
迷ったのは三十秒足らず。意を決して駅に向かい、電車に乗って渋谷へ。
夢の中では周りを気にしていなかったので、乗客も似通っているのかどうかは分からなかった。意識的に考えないように
仮にそれまで似ていたとしたら、電車の中で吐いていたかもしれない。
渋谷につくと夢の通りに歩いている自分が居て、気が付けば最初に隠れた路地に立っていた。
「……うわ、あるのかよ」
自分が身を隠そうとしたゴミ用の大バケツも確かにそこにあった。
この路地は夢の中で
他の大きな通りならともかく、事前の下見では絶対に通っていない。
全身が震える。やっぱり、あれは夢なんかじゃない。
「落ち着け。落ち着け俺」
もうすぐ始まる。
なら、夢の内容をなぞればいい。正確に。
そうすれば最初の間は乗り切れる。
路地に
9時45分。数字が七色に光り始めた。
『手にした希望は武器となる。希望を自ら捨てた者は
知らないはずなのに知っている文面。
……いや、少し違うか?
正確には思い出せない。
更に5分後、次の一文が出現。
『手にする希望は己の魂に刻まれた後悔と追憶』
もう、確定的だ。
続けてボウガンのシルエットが浮かび上がる。
『身に宿る力は
胸の鼓動がうるさい。ただ、頭は嫌に
カウントダウンに合わせて携帯が更に強く振動する。
心臓の鼓動がリンクしていく感覚。これも知っている。
残り15秒、10秒、……5秒、4、3、2、1
『
手に握られたボウガンと、遠くで巻き起こる悲鳴。
「やるか。やるしかないよな」
もっと動揺するかと思っていたが、意外と冷静だ。
自分の知る通りなら、暫くすると一体目の
武器の
念じると、ボウガンはスマートフォンに戻った。これも同じだ。
視界の端にはスキルの表示がしっかりと三つ点灯している。
「さぁ、来るならいつでも来い」
流石にスキルを無駄に使ったりはしない。
夢に見た通りなら、接近されるまで打ち続けてもダメージが足りず、スキルを使ってようやく倒せる相手だ。
姿勢を低く片膝立ちの姿勢でボウガンを通りに向けて真っすぐ構える。
射撃精度を上げる事で無駄打ちを減らす作戦だ。
グチャ……。
赤黒い飛沫が通りに飛び散る。嫌な臭い。
アレの現れる合図だ。呼吸を乱さず姿を見せるのを静かに待つ。
やがて案山子がおどろおどろしく現れた。
素早く6連射、リロード、6連射。
「あ˝あ˝あ˝ァァァ!」
矢が突き刺さった瞬間、バケモノが路地に飛び込んでくる。
案山子の行動パターンは既に熟知している。
矢を撃ち込むこと4セット目。
「……あれ?」
自分に到達するより前に案山子が倒れた。
何かに
来るのが分かっていたので、撃ち始めは確かに早かった。
だが、前はもっと数を撃ち込んだ上にスキルを使ってギリギリだった。
立ち位置がもっと前だっただろうか?
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