第13話 共同戦線 ⑧

 いメンバーがそろっている中、恭平きょうへいは自分だけ普通で言いづらいなと思ってしまう。


鍬野恭平くわの きょうへい宝仙高校一年ほうせんこうこういちねん。部活はしてない。帰宅部」


 実際はゲーム研究部に所属しているが、どうせ部員七名で活動も週に二日。

 部活というより遊びの延長なので帰宅部と言って差し支えないだろう。


「武器はボウガンで六連射可能。スキルはバケモノの動きを止めるショックアロー、凍らせるアイスアロー、燃やすファイアアロー。其々それぞれクールタイムが違うけど、大体40~50秒」

「スキルを三つも持ってるのか。いいな。クールタイムも短い」

「逆に一つ一つの威力は低い。ショックアローの足止めは三秒ぐらいしかできないから、春日かすがさんの閃光弾の方が断然使だんぜんつかえる。アイスアローは凍らせても当たり所が悪いと無理やりってくるし、ファイアアローも多分、燃えながら迫ってくる」

「それは確かに危ないかもな」

「手数や応用力は一番な気がするけどね。色んな状況に対応してくれそう。さっきの足止めも完ぺきだったし。よく当てれたよね」


 ポジティブな意見を述べたのは美和子みわこだった。

 恭平は少し照れながら、こくりと頷く。


「VRのシューティングゲームが役に立ったかもしれない」

「意外と、自分の得意な事に関連した武器になるのかもね。私とかほら、剣道やってるからなのかな、剣だし。皆はどう?」

「俺は分からないな。銃を撃ったこともないし、ゲームもあんまりやらないんだけど。体がデカいからか? 衝撃がすごい銃だけど問題なく撃ててる」

「私はわかんない。ゲームとかしないし」


 肩をすくめるゆう。そして、りんも同意するように頷く。


「私も。爆弾なんて興味全然なくて、四角いシルエットだから危なくないかなと思って選んだら爆弾だったんです。ゲームもパズルゲームを少しするだけで」


 美和子の推測はどうやら外れたようだが、仮に正しかったとしても現状が何か変わる訳ではない。

 彼女は特段気を落とすでもなく続ける。


「外れちゃったかな。この状況がいつまで続くのか分からないけど、出来る限り早く慣れるように頑張ろう?」

「そうね。今みたいに敵が強い奴にどんどん変わってくなら、私達も強くならないと」


 皆で頷きあう。すると、美和子が武器を携帯に戻して画面をタップし始めた。


「強くなる、でいうと私達、倒した敵の数や種類でレベルアップするみたい」


 彼女の説明する操作手順の通りにすると、そこには現在のレベルと経験値、レベルアップに必要な数値に加えて各種実績かくしゅじっせき項目こうもくがあった。

 皆が時計回りに、自身の現在のレベルを申告する。

 恭平の現在のレベルは3。美和子が6、健吾けんごが3、優が4、凜が5という塩梅あんばいだ。

 順当なレベル推移すいいと言える。

 ここまで複数の案山子を切り殺してきた美和子が一番なのは当然として、大量のバケモノを爆殺した凜が二番手に来るのも頷ける。

 撃破数の少ない優が次に来たのは意外だが、先程の赤玉の連続撃破で大量の経験値を得たのかもしれない。


「レベルが上がると何が変わるの?」

「私の場合は武器の威力が上がったり。ある程度レベルが上がると、新しいスキルを覚えるみたい。私の場合はレベル10で習得になってる。内容は習得してからのみたい」


 調べてみると、なるほど彼女の言う通りだった。

 恭平達もレベル10到達で新しいスキルを取得すると書かれている。

 それ以上のレベル解放条件や内容に関しては、黒塗りで伏せられた状態だ。

 レベルに応じて段階的に解放されていくのだろう。

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