[よ〜んっ] 部活といえば……お約束?




 今日は部活に参加する夕原さん。


だから、もちろん制服から体操着に着替えるわけで。


────更衣室だよ。


男子禁制の女子の園。


僕だって男の子。


健全なる男子高校生なのだよ。


ドキドキウキウキなのは仕方がないんだ。


そう、男はみんな狼なのだ。



 でもって眼鏡ぼくは運動の邪魔なので外され、棚の上に。


更衣室では、早めに教室を出てきた夕原さんと美咲が生着替え中である。


大事なことなので繰り返し。生着替えが生中継なのである。


男ならば誰だって、部屋の秘密の場所にお宝の一つや二つはあるだろう?


でもな、生はイカン……駄目だ! けしからんのだ!





 ぅぎゃぁーーッ!! お前ら幼気いたいけな男子高校生に、何っちゅうもんを見せるんじゃぁ!


注目──だめぇ〜刺激が……これダメなやつ。


ズームは……もっとアカン~!!


も、、、モザイクとかできないかな。


いや駄目だ。


なんか余計に卑猥ひわいな感じに……ヤバいのだ。


ダメ。


……これ、ダメなやつ


僕は、人知れずしばしの思考停止におちいった。






 ────はつ!!!


気がついたときには、無人の更衣室にただひとり。……いや、ひとつ?


棚の上に、動けないままで取り残されていた。


おそらく、数時間はこの状態なのだろう。


暗くなるまでのこの時間、無駄にするわけにはいかないな。


僕にできることを……やってやろうじゃないかということで。


ひそかに、女子更衣室で眼鏡の秘密特訓が開始されたのだ。







 薄暗くなった更衣室に灯りが灯る。


今回は、部活が終わった女子陸上部の面々が、総勢十数人で生着替え。


じつに開けっ広げで、豪快ごうかいにポロリとかハラリとかしてくれちゃっているのである。


しかーし!! もう僕は動じない!! そんなの関係ないもんね。


平常心、平常心。


平常心のコツは……フフフ、特訓したのだよ。血の汗と涙の結晶なのだよ。




 小柄な一年生部員が、夕原さんに話しかける。


「先輩? なんかその眼鏡、すごく曇ってないですか。それじゃ前が見えなさそう」

「あれ、ホントだ。どうして汚れちゃったんだろう。ゆりちゃん教えてくれてありがとう。

ちゃんとかなきゃ危ないや」


夕原さんにハンカチでゴシゴシこすられる。


僕の編み出したスモークは、汚れているわけじゃないんだよ。


そんな簡単には落ちないからね。


「あれ、なかなか落ちないなぁ」


夕原さんが力任せにギュイギュイ擦るので、降参して通常レンズの状態に。


傷になったら困るからね。


急に綺麗きれいになったレンズに、首をかしげる夕原さん。


ごめん、ちょっとした悪戯いたずらなのさ。


そう種明かしをすれば、もうっ春田君って意外と茶目っ気があるのねと、ふくれっつらになりながらも納得はしたようだ。


ふっふっふっ……じつは他にもあるけれど、お披露目ひろめはまた後で。






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